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第168話 総合武術部スタートに弾みはついたか

「さあさあ、みなさん、お菓子どうぞ。これ、昨日ザックさまと買って来たんです。美味しいですよぅ」

「昨日、ふたりだけで商業街に行ったのか? 護衛の声が掛からなかったから、気が付かなかったぞ」


「いやジェルさん、僕がエステルちゃんの護衛だから。それにティモさんが、影護衛で付いていてくれてたし」

「はい。気づかれずにと頑張りましたが、直ぐにバレました」

「仕方ないです、ティモさん。でもザカリー様が護衛なら、最強ですよジェル先輩」

「それは、そうなんだがな」



「ところで、みんなは静かねー」

「ザックとエステルちゃんがあまりにも仲いいから、当てられちゃったのよ、ライナ姉さん」

「ふふふ、あんなに激しく動かれちゃうとねー」

「いつもはもっと長いんでしょ」

「そうそう、今日は意外と早めだったわよねー」


 アビー姉ちゃんとライナさんは、ナニ言ってるですかね。

 それにしても静かだよね、学院生のキミたちは。お菓子美味しいから食べなさい。カァカァ。あ、クロウちゃんは食べ過ぎないように。



「どうだったでやすか? うちの模範訓練は」

「あ、あの、グリフィン子爵家って、凄いんですね。僕は隣領だから、強いという噂は聞いてましたけど」

「ああ、確かにうちの騎士団は強いと思いやすが、ザカリー様が率いるこのレイヴンは、別格でやすよ」

「そ、そうなんですか。そうですよね」


「さっきの、ザックくんとエステルさんの戦闘訓練。ホントにホントに吃驚しました。それから、見てたけど分からなかったことが、いっぱいあるわ」

「ヴィオちゃん、分からなかったのって何ですか? 言える範囲ならお教えしますよ」


「ありがとうございます、エステルさん。えーと、たくさんあるけど、まず、あの霧、もや? ザックくんがなんか変な魔法を空中から撃って、それが当たったら、エステルさんがいなくなってた」


 変な魔法って何ですか、空気の圧縮弾ですよ。あれだって威力を高めればバカに出来ないんだよ。

 それにしても、さすが大人のブルーノさんが話しかけて、皆の口が開き出した。



もや魔法ですね。水と風の複合です。凄っごく小さな水玉をたくさん出して、風魔法でわたしの周りにいったん拡げて、直ぐに拡散しないよう抑えるの」

「でも、エステルさん、あそこにいなかったですよね」


「ええ、同時に姿隠しの魔法で消えて、高速移動ね。姿隠しの魔法は、ちょっと秘密ですね。高速移動は体術よ。ザックさまが得意の縮地も体術だけど、わたしはまだそこまでは」


 姿隠しはブラックドラゴンのアルさんに教わった魔法だから、これは秘密だね。言えなくて申し訳ない。



「と言うことは、そんな複雑な複合魔法と、その秘密の魔法と、凄い体術を、瞬時に順番に行ったってことですか?」

「そうなりますね」


「あの、あの、わたし、わたしも風と水に適性があるんです。氷魔法はできます。わたしにもそのもや魔法、できますか?」

「ええ、頑張れば出来るわ。教えてあげますよ」


「あ、ヴィオちゃんずるい、エステルさんは、わたしの師匠、ですよ」

「いいじゃない、カロちゃん。わたしも弟子になりたい」

「カロちゃんも、ヴィオちゃんも、いいですよ。いいですよね? ザックさま」

「うん、いいんじゃない」



「あと、あと、あの竜巻魔法」

「ダガーを同時に何本も撃って、それが変な飛び方して、ザックくんの背中にあちこちから向かってたのも凄かったよ」

「あのダガー撃ちは、エステル嬢さんの得意技ですね」


「どちらも風魔法ね。ダガー撃ちの方は、ダガーを撃つ技と風魔法を組み合せてるから、そういう意味では、ザックさまの言う総合武術ということになるのかしら」

「そうだね。あれは小さい時から、僕はよく撃たれてるよなー。昔のは、あちこちから飛んで来る目くらましだったけど、今は誘導弾だからねー」


「え? どういうこと?」

「あれは、基本的には同時に撃った何本かのダガーを、風魔法で軌道を変えて、ひとりなのに何人かで撃ったように見せる技なんだけど、今のエステルちゃんのは、多少躱したり逃げても、追いかけて来るんだよ」


 はい、じつはあのダガー、遠隔魔法のキ素力ラインが付いてるんですよ。つまり有線誘導のダガーって訳です。



「まあ、ザックさまは縮地で逃げちゃいますから、追いかけるのは無理ですけどね」

「風魔法を使ってるって聞いても、どうしてそんなことが出来るのか、まったく分かりません。それにあの竜巻魔法。それだけでも凄いのに、走りながら発動させて、それも自分から離れた場所に」


「あれらって、うちの母さんが開発した遠隔魔法の応用よね、エステルちゃん」

「はい、アビーさま。奥さまとお稽古して、出来るようになりました。でも遠隔魔法は、ザックさまの方が凄いですよ」


「この子は別よ。それ出来るの、母さんとエステルちゃんとザックだけなのよね?」

「うん、たぶんそうだと思うよ。学院の先生方からは教えてくれって頼まれてるけど、母さんとかの許可がないとね」

「そりゃそうよね」



「ザックくんは、あの変なのを空中から撃っただけで、あとはほとんど魔法を使わなかったわよね。どうして?」

「変なのって、あれは空気弾だよ。空気を圧縮して撃ち出すんだ」

「空気を圧縮??」


 ああ、この世界だと圧縮空気は分からないか。前々世でも、コンプレッサーが発明されたのは20世紀の初めだそうだしな。


「風って、空気が流れて起きるってのは分かるでしょ。その空気を押し固めて撃ち出すんだ」

「ふーん」

「さっきのぐらいでも、マトモに当たれば気絶するし、もっと強くすれば岩ぐらい砕けるんだよ」



「あと、それ以外にほとんど魔法を使わなかったのは、いちおう今日は魔法有りで模擬戦闘をしたんだけど、エステルちゃんが直ぐ死ぬのと火魔法は禁止だって言うからさ」

「あー、ザカリー様の魔法は、だいたい相手が直ぐ死ぬやつですからねー」

「火魔法は周囲の迷惑になるしな」


「直ぐ死ぬやつが、万が一当たっちゃうと、私の回復魔法ぐらいじゃ手に負えないし、強力な回復魔法が使えるのは、対戦相手のエステルさんだからねー」

「あの、その直ぐ死ぬやつ、って言うのは?」

「ヴィオちゃん、言葉通りよー。当たっちゃったら、たぶん確実に死んじゃう魔法。避けられないと首が落ちるとか、身体が粉々になるとか。その点、私の魔法は穏便よねー」

「…………」


 まあ、俺とエステルちゃんは、昔にアン母さんからお揃いで貰った身代わりの首飾りを、ふたりとも肌身離さず身につけてるから、1回は死なないで済むんだけどね。

 それから、穴に落ちた敵を瞬時で埋めて窒息死させる魔法は、穏便とは言いませんよ、ライナさん。


「竜巻魔法は、剣で斬って消せるものなんですか?」

「あれができるのは、ザカリー様だけだな」

「魔法を斬って消せるなら、剣術が最強になっちゃいます。誰でも出来るものではないです」

「ザカリー様の剣術は、私が思うに最強だがな」



 それからも、俺とエステルちゃんの模擬戦闘について、次々に説明をせがまれた。

 まあこうやって、闘いの技術をワイワイ話すのは、皆好きなんだよな。

 美人のお姉さん方と少年少女が歓談する内容として、それが良いのかどうかは分からないけど。

 この世界だから、良しとしましょう。カァカァ。クロウちゃんもそう思う?


 今日、うちに総合武術部をこれから始める皆が遊びに来て、どうだったのだろうか。

 うちの連中と仲良くして貰って、それから今後の課外部活動にあらためてやる気を出してくれるといいよね。


 それにしても、とりわけエステルちゃんは人気者になったみたいだ。

 エステルちゃんは優しいしね。

 女子たちは、強くて美人のこのお姉さんに憧れを感じたのかな。

 一方、12歳の多感な男子ふたりは、お姉さんたちに囲まれてどうなんだろ。


 さて、明日からはまた学院生活だ。勉強も課外部も頑張りましょうか。

 まあ俺のペースは、いつでもどこでも変わらないけどね。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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