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第166話 総合武術部部員、屋敷に遊びに来る

 昨日はジェルさんたちと久しぶりに戦闘訓練をして、お昼の後は警備の非番時間で代わる代わる俺のところに来る皆と話をしたり、エステルちゃんが商業街にお買い物に行くと言うので一緒に行ったりして過ごした。


 レイヴンの皆には、何か不足しているものや問題点などがあればと聞いたけど、やはり口を揃えて言うのは屋敷の警備についてだな。

 王都にそれほど伝手の無い俺としては、カロちゃんの家のソルディーニ商会とかに相談するのがいいだろうか。

 ときどき王都を訪れるというグエルリーノさんが来た時に、相談してみよう。



 翌日の休日2日目。

 午前中、クラスメイトたちが来そうな頃合いにクロウちゃんを空に飛ばしていると、5人の少年少女が歩いて近づいて来るのを発見、という通信が来た。

 貴族の子たちだから馬車で来るだろうと思ってたけど、揃って歩きなんだな。

 俺はエステルちゃんに声を掛け、ふたりで屋敷の玄関前まで出て行く。


 門の方を眺めていると、彼らが外から屋敷を覗き込んでキョロキョロ見ている。

 ここでいいんだよな、門番とかいないけど、みたいな会話が聞こえて来そうだ。

 面白いから暫くこのまま見ていよう。


「迎えに行かなくて、いいんですか?」

「いいのいいの、面白いから」


 すると、ひえっ、ひやっ、という声がこちらまで聞こえた。

 あー、彼らの前に、いきなりティモさんが現れたんだね。驚くよねー。

 ティモさんが話しかけ、屋敷の敷地内に案内して来るようだ。



「ザカリー様、ご友人方がお見えになりました」

「ティモさん、案内ありがとう」


 俺とエステルちゃんが玄関前に立っているのを見つけて、5人がパラパラと小走りでやって来た。


「ザック、来たよ」「ザックくん、お邪魔します」

「あ、エステルさーん、こんにちは、ですー」


 カロちゃんがエステルちゃんに走り寄って、パッと抱きつく。

 彼女はエステルちゃんのことをお姉さんみたいに思って、大好きなんだよね。

 お父さんがグリフィニアに帰っちゃったから、王都の家に戻っても使用人さん以外は誰もいなくなって、寂しかったのかな。



「あら、カロちゃん、甘えん坊さんですね」

「ふひゅー。恥ずかしい、です」


 カロちゃんが落ち着いたので、皆にエステルちゃんを紹介する。


「エステルです。みなさんのことはお聞きしましたよ。ザックさまのお友だちになっていただいて、ありがとうございますね」


「ヴィオレーヌ・セリュジエです。お噂はかねがね」

「あたしは、ルアーナ・アマディです」

「ライムンド・モンタネールです。は、はじめまして」

「ブルクハルト・オーレンドルフです。こ、こんにちは」


「はい、ようこそいらっしゃいました。さあ、中にお入りくださいな」



 エステルちゃんと手を繋ぐカロちゃんと、ヴィオちゃん、ルアちゃんを連れて、屋敷の中に入って行く。

 男子はその後ろだ。


「おい、ザックよ。凄い美人さんだな。それに、大きな……」

「こらライくん、失礼だよ。でも、ホントにお奇麗でスタイルが……」


 キミたち何? エステルちゃんを見て緊張してるの? 確かにお胸やお尻は、俺も自慢だけどさ。

「(後ろで何話してるですか?)」「(え、いや何でもないです)」

 早速、念話が来ますからね。キミたち、発言には気をつけるようにね。



「カロちゃんやアビゲイル様から聞いてましたけど、エステルさんて、ホントにお若いのですね。学院の上級生と変わりません」

「え? エステルさんて、アビゲイル様より年上なの?」

「ザックさまが5歳の時から、お世話してますからね。アビーさまよりずっと年上ですよ。でも、ホントの歳はナイショです」


 その時、バサバサバサとクロウちゃんが飛んで来る音がする。

 戻るの遅かったね。いちおうタイミングを見てたって? エステルちゃんの次って順番があるのか。


「あ、クロウちゃん、です」

「カァ」


 クロウちゃんがラウンジ内に飛んで来て、俺の頭の上に止まろうかどうしようか一瞬考えて、結局、座っているエステルちゃんの膝上に納まった。

 なるほど、初めてだと少し皆を吃驚させるよね。


「そのカラスが……」「カァ」

「クロウのクロウちゃんは、クロウちゃんて呼ばないと、怒られる、です」

「カァカァ」


 え? なに? ああ、アビー姉ちゃんが走って来てるのか。


「姉ちゃんが、もう直ぐ来るってさ」

「そのようですね。エディットちゃん、アビーさまのお紅茶も用意してくださいね」

「はい、エステルさま」


「なあザック、そのカラス、じゃなかったクロウちゃんと話が出来るって、ホントなんだな」

「カァ、カァ」

「うん、エステルちゃんと、あとはライナさんも少し出来るかな。それと、みんなの言ってることは理解出来てるからね」

「そうなのか」「カァ」「お、おう」



「遅くなったわー」

「出たな、姉ちゃん」

「出たってなによ。ただいま、エステルちゃん。みんな、いらっしゃい」


「アビーさま、お帰りなさいませ。スカートなのに走って来たんですか? はい、お紅茶が来ましたよ」

「あ、クロウちゃんに見つかってたか。遅刻だから、学院から走って来たわ」

「やっぱり姉弟なんですね」

「ザックも走って帰って来たとか?」

「はい、おとといの夜」


「えー、ザックくん、あのあと夜に帰ったの?」

「寮に戻ったと思ってました、です」

「うん、いったん寮に戻って、そのあと帰った」

「夜で門が閉まってたから、塀を跳び越えて入ったんですよ。そしたら見つかって」


「うわー、ザックくんらしい」

「夜中に、自分の屋敷に塀を越えて侵入ねぇ」

「うちでは、誰も驚きませんけどね」

「まあ、この子なら、だいたいそうするって、皆知ってるから」

「カァカァ」


 姉ちゃんが加わると、一挙に賑やかになるんだよね。

 まあ、幾つになっても無邪気な野生児だし。



 ラウンジで賑やかに歓談していると、そろそろお昼時になったようだ。

 うちのレイヴンのメンバーがやって来たので、皆に紹介する。


「ティモさんはさっき会ったよね。それからこの人がブルーノさんね。そしてこちらが、ジェルメールさん、オネルヴァさん、ライナさん」

「こんにちは、お邪魔してます」


「諸君たちが、ザカリー様のお友だちで、その、総合武術部の部員さんですね。聞いていますぞ。今後ともよろしくお願いします」

「まあー、可愛い子たちねー。よろしくねー」

「ほらライナさん、ざっくばらん過ぎ。よろしくお願いします」


 今日のランチはいつもの倍の人数になっちゃったけど、アデーレさんが張り切って美味しい手料理を用意してくれている。

 食堂のテーブルでは席が足らないので、ジェルさんたちは別室で食べて、食後にまたラウンジに集まることにした。



「剣術と魔法と、それぞれ得意な子たちが集まったとザカリー様から聞いたが、するとこちらのおふたりが剣術で、こちらが魔法ということですな」

「うん、それでカロちゃんも剣術と魔法と両方を訓練するけど、昨日話したようにエステルちゃんが、回復魔法を教えてあげてほしいんだ」

「エステルさん、お願い、です」


「もちろんいいですよ。カロちゃんは水適正ですね。でも、風も覚えると回復魔法にはいいわね」

「えと、わたしに出来ます、ですか?」

「できますよ。ザックさまみたいに、何でもできるようにする訳じゃないから、簡単よ」

「そこを簡単て言っちゃうのが、エステルさんよねー。カロちゃん、このふたりはマトモじゃないのよー」


「あの、エステルさんは風魔法で、ライナさんは土魔法の達人って聞きましたけど」

「あはは、達人なんかじゃないわよー。ただ、敵を穴に落として埋めるのが得意なだけよー」

「穴に落として、埋めるのが得意、ですか」

「エステルさんなんか、竜巻で敵を吹き飛ばすのが得意だけどねー」

「はあ」



「なあ、ザックよ。お宅のお姉さん方は全員美人だけど、怖いお姉さんなんだな」

「なんか、ゴメン」

「ふだんは、わりと普通のお姉さん方でやすよ。闘いではひと欠片かけらも容赦しませんがね」

「そうですかー」


 ブルーノさん、いちおうのフォローをありがとうございます。

 あっちでアビー姉ちゃんを加えた剣術組の5人は、盛り上がってるな。頑張れブルクくん。


 なんとなく成り行きで、このあとうちの模範訓練を皆に見せることになった。


「ザカリー様とエステルさんも訓練装備に着替えて、みなさんを訓練場にご案内ください。用意をしておきますから」

「え、そうなの?」「ジェルさん、了解です」


 えーと、俺とエステルちゃんも模範訓練に参加する訳ですね。

 そうですか。分かりました。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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