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第154話 ザック、初等魔法学の先生になる??

「ザックって、やっぱり学院生会からも目を付けられてたんだな」

「学院生会と言うより、会長ね」

「あの人、初めからザックさまをちらちら見ていた、です」


 2時限目も終わって、学院生食堂でお昼のテーブルを4人で囲む。

 ヴィオちゃんの言う通りなんだけど、カロちゃんとか良く見てるよね。女子って怖い。


「まあ、仕方ないかな。首席はその通りだし、少なくともクラス委員になるのは長年、恒例らしいから」

「ザックって、大変なんだな」

「そう思うか」

「そう思う」



「それより、ライとヴィオちゃんは、次はフィロメナ先生の剣術学初級なんだろ? 剣術訓練場だよね。ちゃんと着替えは持って来てる?」

「お、おう。不安だがな」


「なに言ってるの、あなたは仮にも男爵家次男なんでしょ? しっかりしなさい」

「仮じゃないし。でも、剣術は、ときどきしか稽古してないからよ」

「それはわたしも同じ。でも、決めたからにはやってやるわ。いろいろ負けたくないし」

「そうだな」


「なあザック、なにかアドバイスとか貰えるか?」

「あ、それ、わたしもほしいかも」

「わたしも、聞きたい、です」


「アドバイスね。まずは素振りから入ると思うから、余計なことを頭から捨てて、無心に木剣を振れ、かな。剣術は、とにかく集中力だよ」

「余計なことを頭から捨てる、かぁ」

「あなた、余計なことだらけっぽいものね」

「僕、そうかも」



 3時限目、ライくんとヴィオちゃんはフィロメナ先生の剣術学初級の講義へ。

 そして俺とカロちゃんは、ジュディス先生の初等魔法学の講義へと向かう。


 選択科目の本格的な講義開始の最初、オリエンテーション講義では50人近くはいたが、結局は俺を含め18人だった。

 それでも別の日に、クリスティアン先生の同じ初等魔法学があるから、初歩の魔法を学びたい1年生の数は結構多いのだろうね。


 なんだか成り行きっぽいけど、俺は先生のアシスタントになってしまったので、そういう点ではこの講義は気楽なものだ。

 今日も受講生がキ素力循環の準備運動をするのを、その間を廻って助けたりアドバイスをしたりする。

 正規にこの講義を選択した皆は、何とか攻撃魔法が発動出来るくらいのキ素力を循環出来るようだね。


 その中でカロちゃんは、贔屓目ではなく、なかなかの力を発揮できそうだ。

 もしかして鍛え甲斐があるかもだよ。



 受講生の全員がいちおう四大元素適性を自覚しているので、今日はジュディス先生の指導でそれぞれに火、風、水を出してみる予定だ。

 やっぱり土はいないんだ。こういうところでも、土魔法というのが貴重なのが分かる。

 ところで、カロちゃんは水適正なんだね。


「ねえ、ザカリー君、君は火魔法が得意だと思うけど、風や水も行ける?」

「ええ、どれでも」

「そ、そうよね。それじゃ、あの風特性の5人を見てくれるかな」


「初めは、どの程度の魔法ですか?」

「そうね、目標はウィンドカッターね」

「了解です」

「あの、分かってるわよね」

「え? 分かってますよ」


 要するに分担して指導しろってことですか。まあいいでしょう。

 魔法訓練場の壁や柱をウィンドカッターで斬って壊すな、ということですよね。分かってますよ。



「えーと、風特性のみんなの魔法を見てくれと、先生から頼まれました。よろしくね」


 男子ふたりに女子3人だね。俺と同じクラスの子はいないな。

 女子はわりと素直に聞いてくれそうだけど、男子は俺を値踏みしているような表情だ。

 12歳くらいって難しいよね。俺も今年12歳だけど。


「ザカリー様、よろしくお願いします」

「お願いします」

「おいおい、同じ1年生に教えて貰うのか? いいのか、これ」

「いくら、魔法学特待生だからってさ」

「そうだよな、実力も知らないしよ」

「あんたたち、ザカリー様に失礼よ」

「学院に入ったら、貴族とか子爵とか関係ねーよ」


 お、この1週間でいろいろあり過ぎて忘れていましたが、やっと来ましたテンプレパターン。

 さて、どうしましょうかね。爺さんとかおじさんは慣れてるけど、少年相手は慣れてないんだよな。


「まず君の言う通り、学院内では貴族は関係ないから、呼び名もザックでいいよ。それから実力か。そうだなぁ」

「よく分かってるじゃん。まずは実力を見せろよ」

「はいザック様、そう呼ばせていただきます。わたしたちも見たいです」



「風魔法グループということで、先生にはウィンドカッターから始めるよう言われてるんだ。ウィンドカッターは知ってるよね?」

「風を飛ばして切るやつだろ。風って目に見えないし、なんだか地味だよな」

「俺たち風特性だけど、ふだん何も使いようがないし。せめて攻撃魔法が出来ればと思ったけど、地味過ぎ」


 男子もそれから女子も、ちょっとしょぼんとしている。

 風魔法は地味で使いようが無いと思ってるんだね。うちのエステルちゃんの魔法を見せてあげたい。


「いやいや、決して地味じゃないよ。風魔法は怖い魔法だよ。では、何か見たいと言うリクエストもあったことだし、みんながこれから学ぶウィンドカッターが、じつはどんなに凄い魔法なのか見せてあげましょう」


 まだ火魔法グループも水魔法グループも、的に向けて撃つ段階には行ってないので、的は空いている。

 昨日、俺が粉々にした7つの的は、ちゃんと新しいものが立てられているな。


「それじゃ、ちょっとこの位置にみんな来て。あそこに、人の形をした的が7つ立って並んでいるよね」

「そうだな。入試の特技試験でもあれ使ってたし。あの時よりはだいぶ遠いけどよ」

「あれに向けてウィンドカッターを放つんですか?」


「うん、だいたいここからだと、入試の時の倍の距離かな。あの的が敵の姿だと思ってね。では」


 俺はそこそこのキ素力を素早く練り込むと、人差し指と中指の2本の指だけ伸ばして、軽く右から左へと振った。

 別にこの動作は必要ないんだけど、風魔法が目に見えなくて地味だって言うから分かりやすくね。


 シュルルルーンと鋭く風が刃となって超高速で飛び、それは的の立つ右方向から大きくカーブを描いて、右から順番に人の形の的の首をドサッドサッと落として行った。

 そしてウィンドカッターは、最後の7つ目の首を落として霧散する。


「おおー」「ひぇー」「あわわわ」「7人の首が一瞬で落ちましたー」「ですぅ」


 そんな声が、俺の後ろで見ていた5人から聞こえて来る。

 7人じゃなくて、的だから7つね。



「ザカリーくぅーん」


 ジュディス先生が慌ててバタバタ走って来る。慌てると転びますよ。

 その後ろから、火と水の2グループの受講生も来た。


「何してるんですかー」

「え? ウィンドカッターが見たいというリクエストがあったので、見本として」

「あんなの、初等魔法学の見本じゃないでしょー。ふつう、ウィンドカッターで7つも首は落とせませーん」


 そうかな。うまく方向が合えば、10人ぐらいの首はいちどに斬れると思うけど。

 問題は、真横からうまく首のある位置に、風の刃を当てられるかどうかなんだよな


「あの、ジュディス先生。実力を見せろって、僕たちがザック先生に言ったもんだから」

「すみません、ザック先生に生意気な口を聞きました」

「ザック先生、凄いです」「です」「です」


 風魔法グループの5人が口々にそんなことを言う。


 ところで俺、先生じゃないんだけど。いつそうなったかな??


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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