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第143話 選択科目オリエンテーション講義に行くよ

 クリスティアン先生の魔法学概論初日の講義は、なかなか面白かった。

 俺は幼児の頃から、この世界に当たり前にある魔法を研究していて、8歳からはアン母さんに教わって来たが、それは主に実用的なことばかりだった。

 だから、あらためてこの世界で研究され、理解されている魔法というものが興味深い。


 今日は、魔法の基となるキ素、それをエネルギー化させたキ素力、そしてそのキ素力による魔法の発動という一連のプロセスの解説と、火、水、風、土の四大元素との関係性についてだった。


 四大元素による魔法は、生活魔法も攻撃魔法も基本的には同じ範疇はんちゅうの中にあり、この世界でも一般的にはここまでの理解で充分なんだよね。

 つまりざっくり言うと、魔法の発動さえできれば誰でも、火を出したり水を出したりの生活魔法は可能で、それが凄く強力に発動できると攻撃魔法となる。



 ただ、そのような攻撃魔法発動のできる人はきわめて限られているし、主にキ素力や発動能力に起因する強弱の差や、四大元素に対する適性、相性もある。


 魔法には、言ってみればベーシックの四大元素に加えて、回復魔法に代表される聖魔法系統や空間魔法系統といったより高度な系統があり、更に知られているのかどうか分からないが、ブラックドラゴンのアルさんの黒魔法などもある。

 あるいは、俺が以前に闘った妖魔族の剣士が使った、闇系統と言うのか奇妙な魔法もあった。


 魔法には、分からないことがまだまだ多いんだよね。

 だからこの魔法学概論の講義で、どこまで解明されているのかを知るのも楽しみだ。



 2時限目は神話と歴史学概論。

 担当教授はイラリ先生で、見た目は若々しい男性だが、この人エルフさんじゃないかな。

 男性のエルフは会ったことがないから、そうだとしたら初エルフ男性だよね。


 講義は春学期が主に神話、そして秋学期が神話から続く歴史となるそうだ。

 この世界は『言葉が分かたれなかった世界』という、俺をここに転生させたダメ女神サクヤから幼少期に聞いた言葉を思い出す。

 つまり、全世界の言葉を話す存在すべてが、方言とかはあるにしても同じ言語を使う世界なんだよね。


 俺が前世にいた世界は、言葉が分かたれてしまった世界だ。

 だから似たような神話があったとしても、異なる言語を話す人たちの間で神話も分かたれてしまったのかも知れない。



 しかしこの世界では、共通の神様、共通の言語、そして共通の神話があるんだよね。

 もちろん、人族以外にも様々な人種や、人以外にも言葉を話す存在がいるので、それぞれに固有の伝承が伝えられていたりするけどね。


 以前に、俺が流転人るてんびととファータ人に伝えられている転生者だと知っているエステルちゃんに、前の世界では色んな違う言葉が使われてるんだよ、と話したことがある。

 エステルちゃんは、「なんですか、それ。住む場所で言葉が違うんじゃ、話もできなくて、なかなか仲良くなれませんよね」とか言ってたな。


 俺が神話学で興味があるのは、邪神や悪神といった存在とそれにまつわる神話だよな。

 そういった神がこの地上にいると、これも昔にダメ女神から聞いた。

 これまでの勉強では、それについて教えて貰ったことがなかったし、なんだかとても気になるんだよ。



 午前のふたつの必須科目講義が終わって、お昼休みだ。

 クラスの全員が教室を出て、ぞろぞろと学院生食堂へと向かう。

 おー、既にずいぶんと混み合っていますね。


 料理の注文と受取りをする長いカウンターがあり、そこで何種類かあるランチから選んで、出て来た料理を自分でトレイに載せて席まで持って行く方式だ。

 値段はどれも同じで、事前にまとめて購入しているランチ用の食券を渡すだけで、お金のやりとりは基本的には無い。


「ここ、空いてるわよ」

「4席空いてて、良かった、です」

「ザック、こっちこっち」

「おー」


 ランチもライくん、ヴィオちゃん、カロちゃんの4人でテーブルを囲む。

 カロちゃんは俺と幼馴染で、ライくんとヴィオちゃんは同じ領主貴族家の子だから、気安く話せるのかもね。



「午後の選択科目、どの講義に行くか決めてる?」

「なんとなくだけど。ザックは?」

「今日は、剣術学中級に行かないとなんだよね。フィランダー先生から来いって言われてて。あと、初等魔法学も」


「フィランダー先生って、剣術学部長の教授でしょ」

「剣術学の方からも目を付けられてるのか」

「ザックさまは、グリフィニアでは剣術の方が有名」

「へー、そうなの? カロちゃんもっと教えて」


「でもザックさまは、初等魔法学は必要ないです。魔法学特待生ですし」

「なになに、ザックは魔法学特待生なのか。特待生って何だ」

「あなた、どれだけ隠し球持ってるの?」

「いやいや、隠し球とかじゃなくて、あの特技試験の結果でそうなった。もうひとりの試験官をしてたジュディス先生からも、来てって言われてるんだよ」


「わたし、初等魔法学は行くつもりでしたから、一緒に行きます、です」

「カロちゃんも行くなら、わたしも行くわ。ライくんも行きましょうよ」

「そうだな、よし僕も行こう」

「えー、君たちだって、初等魔法学は必要ないのでは?」


「ザックくんが出席するなら、面白そうじゃない」

「そうそう」

「はい、です」



 結局、3時限目に講義のある初等魔法学は、4人で行ってみることになった。

 俺が出席すると面白そうって、何でだ。


 4時限目にある剣術学中級は、ちょっと高度そうなので3人は遠慮するそうだ。

 カロちゃんは剣術を習い始めているけど、まだまだだって言うしね。

 あとのふたりは、貴族らしく剣術も習ってはいるが、やはり魔法の方がメインらしい。



 さて、やって来ました、初等魔法学の講義。

 実地の魔法訓練中心の講義だってジュディス先生が言ってたけど、その通り講義を行う場所は、特技試験でも使用した魔法訓練場だ。


 選択科目オリエンテーションのトップバッターのひとつであり、また実践的な講義ということもあってか、なかなか集まってるねー。

 50人近くはいるかな。女子も結構多いよ。


「はーい、こちらに集合してくれるかなー。講義を始めますよー」


 講義開始の時間になり、ジュディス先生がやって来て集まった皆に声を掛ける。


「たくさん来てくれたわね。それでは選択科目、初等魔法学の講義を始めます。私は魔法学教授のジュディスです。私のクラスのC組や特技試験を魔法で受けた人は、知ってるわよね。それから、今日はオリエンテーションで自由出席だから、特に出欠は取りませんよ。えーと」


 先生がざっと受講生たちを見渡し、俺を見つけるとニコッと微笑んだ。



「私の講義は、主に初級の攻撃魔法を実践的に訓練しながら、より高度な魔法へと導くものです。もちろん魔法には能力適性があり、現在の皆さんの実力もバラバラだと思いますが、それぞれが確実に前に進めるよう、基本的なところから始めて行きます」


「では早速、講義を始めて行きますが、その前に、ザカリー君、ちょっとこっちに来て」

「えっ、僕ですか?」


 えーと、何でしょうね。俺は、ジュディス先生の側に行った。

 歩きながら途中で振り返ってライくんたちの方を見ると、3人がニコニコしながらそれぞれ胸の前で小さく手を振っている。


「皆さんは知っていると思うけど、A組のザカリー・グリフィン君よ。彼は魔法学特待生で、この初級魔法学の講義を受講する必要はないんだけど、私がお願いして来ていただきました。彼にはこの講義のアシスタントをして貰うつもりよ」

「え?」


 皆がザワザワしている。

 そう言えば、昨日そんなことを言ってたよなー。と言うことは、俺がこの講義に出るのは決定ですかね。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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