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無人島 前編

「あ……くぁっ!」

 苦痛に呻きながら目を覚ます。

 額を抑えて薄くぼんやりと目の前の景色を眺めた。

「なんだここ?」

 どこだか知らない場所――。

 しかも、額にはぬちゃっとした感触。

 手を離して見ると血がべっとりと付いてた。

「俺、頭を怪我したのか? って、うわ!」

 やっと、自分の状況を把握できてくる。

 どこかの海岸の砂浜で無数に倒れた人の中にぽつんといる一人であると。

 しかも、その倒れた人は人と形容していいのかさえわからない姿をしていた。

「ば、ばけものっ」

 そう、口にせざる得ない者たちが無数に倒れ込んでいた。

 ある者は頭部から獣耳を生やし、ある者は赤黒い肌をしていて、ある者は角を生やしている。

 まるで、ファンタジーな物語に出てくる怪物のオンパレード。

「そうだっ!」

 眠りつく前のことをようやく意識がはっきりとしてきて思いだしてくる。

 駅前で暗闇にのまれたのは自分だけではなく近くにいた雪菜姉ちゃんも一緒だったということに。

 慌てて探すように地面に手をつき立ち上がろうとした。

 ふと触った地面の感触は地面の触感ではない。

 どこかいやらしいような息遣いと声が聞こえ恐る恐る手の方を見た。

 自分の右手が触れていたのは地面ではなく女性の右の乳房だった。

 その女性は雪菜姉ちゃんその人であり、冷や汗が流れ始める。

「んくぅ」

「うわぁ!」

 激しく動揺しながら彼女から距離を置いた。

 何かをされるのではないかと緊張に汗水たらして様子を伺う。

「ふぅー、この怪物も未だに気絶中か」

 もし起きていたとすれば何かをされていたに違いないと思いほっと安堵した。

 彼女をたたき起こすべきかと思ったがまず、状況から見てそれが得策なのかと思い悩む。

 この状況で多くの見知らぬ怪物なのか、コスプレをした人たちの集団昏倒しているだけなのか。

 とにかくにせよ、パニックになる事案である。

「何か仕掛けられてないよな?」

 アクション映画のように罠などが仕掛けられており爆弾で爆殺されないだろうかと身体をチェックする。

 異常はなかった。

 つづけて、周囲の状況を確認した。

「自分の目で危険がないかチェックしてからだよな」

 起こすのはそのあとにしようと決め、いざ動き始めた。

 一人ひとりが化け物であり人間ではないものたちが砂浜にいるこの状況は何度も思うが非常によくはない。

「コスプレって感じにやっぱり見えないな」

 そう考えるとやはり危険であるのか。

「移動させるべきだろうか?」

 そう思いいたるときには遅かった。倒れた数人のうちの二人が身体をゆすって起き上がり始めた。一人は大柄な赤黒い肌の男。もう一人は端正な顔立ちをした絶世の金髪美女の耳長娘。

「一体ここはどこだがや?」

「うぅっ、な、なんですかこれ!」

 両者ともに周囲の認識をして動揺し始めた。

 恐る恐る近づき無害な雰囲気がある女性の背後からそっと声をかけた。

「あの、大丈夫ですか?」

「きゃぁ! 誰です!」

 シュッと風切り音が顔の横で聞こえたと思えば海を裂くように何かが通り抜けて行った。

 自分の頬を触れて、裂けた頬が出血してるのを確認した。

 彼女から慌てる様にして逃げた。

「やばいやばい!」

「あ、ちょっと!」

 彼女の呼びとめるような声にかまわずに雪菜のもとに走った。

 すると、雪菜姉ちゃんは起き上がりかけていた。

 その時に彼女と顔を合わせて絶句した。

 それは雪菜姉ちゃんの顔をした彼女でははない何か。

 赤い瞳に鋭い牙をした彼女に似た顔をした存在。

「うわぁあああああああああああ!」

 後ずさりして踵を返せば多くの異形の者たちが全員目覚めていた。

 もう一度雪菜姉ちゃんの顔をした何かとご対面して彼女が何かを言ってくる。

 激しく動揺してしまい軽いパニック状態が彼女の言語をうまく聞きとることができない。彼女が手を伸ばしこちらに触れようとしてきた。

「ぁ」

 ついには恐怖やパニックで足をからませて転倒し地面に後頭部を打ち付けた。

 次第に意識は暗闇の底へと沈んでいった。



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