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逆襲1

「なぜだ……なぜだ! なぜ、祭壇の拘束から抜け出せている! 抜け出せるはずがない! 彼の遺伝子を受け継いだものが体内にいればその拘束は解けることはないはずだ!」

「あらぁ、激しく動揺して口調が変わっていましてよぉん、メフィストフェレス」

「ぐっ!」


 メフィストは今起こっている状況が自分の計画の中にはありえない事象であったが故に混乱してしまう。必死で考えをまとめていてもわからない。

 彼は悪魔の中でも最上位の悪魔であり特に魔術的研究においては第一人者といっても差し支えないほどに魔術には精通した技術を持っていた。

 その特技もさることながら彼は相手に流れる力の波動を見ることができる特殊能力も有している。

 その能力で見た目でメフィストには相手の女性が彼の遺伝子やその能力を体内に宿していることを検出することが可能だった。

 このメフィストが施す祭壇では人間である神月悪斗を媒介にして、贄を彼の遺伝子や能力を有したものとし設定された祭壇。


「贄が祭壇にいる限りその儀式中に脱出することは不可能だ。たとえ、何が起ころうと。たとえば、その中に宿している存在がいなければ――いや、まさかそんなはずは僕の目は確かに……」


 一人、考察をして口にし、理解を深めて見える検証結果。

 そんなことはまずありえない。

 自分の能力に絶対の自信を持っている。

 だからこそ、メフィストはその結果に疑いを持って食って掛かる。


「君らは彼と交わっていないとでもいうのか! いいや、そんなことはない彼の能力の波動を確かに感じているんだぞ!」


 ゆっくりとこちらへと歩み寄る悪魔リリスの神楽坂イリエナに怯える。

 メフィストは能力値としては決して彼女には負けていないが、ただ一つだけ彼女に劣るものがあった。

 それは膂力。

 メフィストは悪魔でも知性や魔術における能力、人を操ることに長けている悪魔。

 リリスは人を操り、生命を食らい、その奪った生命力を自らの肉体のエネルギーの力へと変換さえできる。


「あなたもわかってるわよねぇん、いくら能力でも賢いあなたはこの状況がいかに不利なのか」

「っ! くそがぁああ!」


 突然として祭壇が光輝きだす。

 急な地震に二人が慌ててメフィストの首を取りに駆け抜けた。

 背後からイリスの氷のつぶてがメフィストを襲い、前方からリリスの撃ちだした突風が弾丸のように襲う。

 挟撃の攻撃にメフィストは絶叫してその場に倒れ伏した。


「君たちはどうやって僕の目を欺いたのか理解したよ……。リリスの能力は体内のエネルギーを変換する。君は彼の能力を自分のエネルギーへと変換したのですね」

「ご明察と言いたいところだけどねぇん、半分正解ってところねぇん」

「なに?」

「あなた一つ勘違いしているわよぉん」

「なに?」

「わたくしとイリスは彼と交わってはいませんわよぉん」

「何をふざけたことを抜かすのですか? あの場にいて彼に跨って……そうか……そういうことか」

「生命力をもらうだけなら交わる方法だけってわけではありませんわよぉん。それに彼も決して非道な男ではないわぁん。イリスだって同じような感じでしたわぁん」


 メフィストは最初から彼にも彼女たちにも一杯食わされていたことを知る。

 自らの失態に笑いが込み上げた。


「ククッ、アハハハハ。なるほど、なるほど最初からエネルギーが足りないわけですか……あはは。ですが……それならば、まだ打つ手がないわけではないんですよ!」


 メフィストはむくりと起き上がると祭壇のほうへと駆け出した。

 宮永桜のほうに手を掲げ自らの目の前に彼女を顕現させ、その身体へと手を添えた。


「グァアアアア!」

「宮永桜、あなたには申し訳ないですがやはりあなたは今すぐ消えてもらいましょう!」

「メフィスト……フェレス……どういう……」

「この祭壇における本当の真実を教えましょう。この祭壇は最初から私のための儀式! あなたの移住など私にはどうでもよかった!」


 宮永桜は腹を抑えうずくまり、拘束されている雪菜もお腹を押さえ始めたのだ。

 その光景にリリスは真っ先に気付いた。


「まさか、妊娠を速めているというんですの? クロ!」


 メフィストに攻撃を集中するために仲間のほうへと雪菜の救出を嘆願するイリエナだったが驚愕の光景を目にした。

 黒の胸に穿たれた一つの矢。


「くろ……?」

「すみません……イリエナ様……」

「クロぉおお!」


 愛すべき部下が地面へと倒れ行く。

 突然として矢の雨が降り注いだ。

 イリスの氷の盾が防ぐ。

 盾を顕現していたイリス本人へと何者かが襲撃を仕掛けた。

 すさまじい速さが彼女を蹴り飛ばす。


「イリス!」


 吹き飛んだ妹の傍へと歩み寄りたいが敵の存在が身動きを封じ込める。


「一体誰というんですの!」

「もう、そうですよね、私って本当に影が薄いから存在忘れられるんですよね……ハァ」


 ため息零し、森林の木陰からそっと姿を現したのは矢を携えた一人のゴスロリギャルだった。


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