操られし者1
「イザナミの子孫か……。神の名前まではわからねぇけど俺はお前の言うとおりに神の子なのは確かだ。オレ自身ついさっきまで忘れてたけどな」
「おお! では、儀式の効果で記憶を呼び起こせたのやもしれませんね!」
「記憶か……」
ゆっくりとメフィストを一瞥して、悪斗が近づいたのは柱に縛り付けられていた雪菜たちだった。
メフィストは気づいた。
「おっと、それはなりませんよ! 桜、彼を止めなさい!」
メフィストの命令を受けた桜だったが彼女は放心していた。
先刻、悪斗に伝えられた言葉が彼女の心へとダメージを与えて精神を崩壊させるほどの衝撃を与えていた。
「クソッ! なんて使えない女だ! おい! 野郎ども影女は後回しにあの男を止めろ!」
メフィストは桜への命令を放棄し、今度は自らが使役していた部下に命じた。
だが、彼らは恐怖で足がすくんで身動きすらできずにいた。
それどころか、儀式によって膂力や本来の怪物の力を吸われて体力は減退している。
指先一つが動かせないのもあった。
「なんと弱い!」
「なぁ、お前さどうしてこの計画が成功するなんて思ったんだ? 俺の目覚めを予期していなかったか? それとも覚醒した俺を使役でもできると勘違いしたのか? まぁ、どっちでもいいけどさお前は馬鹿だと思う」
悪斗は捕縛された雪菜に近づき、彼女を解放するために手を伸ばし触れた時、バチリと指を何かの力が弾いた。
「アハハハ、計画は進行できるんですよ! 君こそ馬鹿ですよ! 神の力を使役なんか最初から考えていません。僕は神の力を利用してるんです。儀式中はいくら触れようとも強大な怪物の力と儀式による時空の歪みの余波で君は愛するものへと触れることは許されない」
「チッ」
悪斗はメフィストが放置して部下へと命令を出したのにも何となく察しはついた。
「お前、怪物の力って言ったな。それはこの島にいる怪物の力をこの祭壇が九州でもしているということか?」
「ご明察ですよ。まぁ、術者は除きますけどね。ククッ」
「なら、この儀式は術者を殺せば止められるな」
悪斗は動いたがその前に二人組の男が行方を阻んだ。
その二人を見て悪斗は身体を小刻みに震わせて怒りを全開に敵の名を叫んだ。
「メフィストぉおおおおお!」
その二人の男を悪斗は知っていた。
この島で悪斗を唯一、支えて共に生活をした二人の優しき仲間。
我堂哲也と須藤満だったのだ。