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襲撃者たち

大きなそのお腹を見て悪斗は愕然とした。

明らかにそのお腹は――


「妊娠しているのか?」

「ええ、そうです……あなたの子です」

「っ!」


 恐れていたことが現実となってしまう。

 何度も何度も経験し愛しあえば自ずとそうなってしまうこと。

 自分からではなかったが求められ受け入れてしまった責任はあった。


「悪斗さん、一緒に私と来てください」


 彼女の差し出す手。

 悪斗はもう逃げることを許されないと思った。

 その手に手を伸ばそうとしたのを振り払う手があった。


「ふざけないで! あなたがしたことはわかってるのよ! どうせ、アクトを押し倒して無理やりして出来た子じゃない! ソレに不自然よ! なんでもう周産期に入ってるのよ!」

「エルフの妊娠は早いんです」

「ウソッ! これでも私だってアクトとの子供は欲しいから色々と学んできたことがあるの! あなた何をしようとしているの? ソレにこの襲撃はあなたが首謀者?」


 問い詰める雪菜の言葉に宮永桜がうざったそうに顔を顰める。

 お腹の痛みを訴え始めて後ろへと下がっていく。


「妊娠って大変なんですよ。ソレに今の私をあなた方は攻撃するんですか?」


 その言葉は脅迫であった。

 雪菜も決してそこまで非道な人ではない。

 言葉で追い詰めはしても決して暴力には出ていないのがその証拠だった。


「さあ、悪斗さん私と……」

「アクト、行っては駄目! 彼女は何かおかしい! あなたを利用して何かをしようとしているの!」

「黙ってくださいこのビッチ吸血鬼! 私の愛は本物! 私の悪斗さんを返してください!」

「誰がビッチよ! 大体、アクトは私のよ! その愛が本物だっていうなら彼を虜囚にしたりなんかしない!」

「した覚えはないです。彼は私を愛して共にいてくれたんです。ですよね、悪斗さん」


 二人の女の言葉に悪斗は耐え切れずうずくまった。

 アリカの表情までが脳裏によぎる。


「俺が全部悪いんだ、俺が……だからごめん」


 悪斗は男として自分が心底ロクでなしだとわかっていながらその場から逃亡をする。

 その後を二人の女は追いかけようとするが近くから複数人の怪物の男女があらわれる。


「おやおや、宮永さん、彼に逃げられましたか」


 男どもの先頭に立つのはモノクル眼鏡をしたスーツ姿の男性である。

 見た目は普通の人間であるが瞳は人間のそれではない。

 彼の瞳孔は星のような形をしていた。邪悪な雰囲気がにじみ出ている。


「あなたたちこそ、何邪魔してくれてるんですか?」

「邪魔とは失礼ですね。君の身体は大変神聖で貴重なお身体です。無理をされては困る。ソレに僕らは利益につながることしかしませんよ。その結果としてその吸血鬼が利益につながると見込んでいる」

「彼女は殺して! 私以外に彼を愛してあげる人はいらないのです!」

「新世界秩序に反する行為ですよ」

「新世界は私がルールです」

「またわがままを。しかし、あなたも我々の考えもわかってるはずですよね?」

「わかってます」

「ならば、彼の愛した女は必要なんですよ。そして、例外まで生じてしまいましたけど」

「どういう意味ですか?」


 モノクル眼鏡の男が指を鳴らすと数人の女性の怪物が二人の姉妹を捕縛したようで連れてきた。


「その人たちは殺す目的ですよね?」

「そう、これが例外です。彼はそこの彼女たちともしてしまったようで」

「っ! 大悪魔としたんですか!?」

「ええ、ですから生まれるのはどんな怪物であるのか興味がありますが同時に恐怖もあります。ですが、これで彼女たちを殺せなくなったというわけです」

「っ! ふざけないでくださいです! 彼女たちもいらないです! 悪斗さんは私だけ! 私だけのモノなんです!」

「君の愛は彼へと伝わってないのに?」

「だまってください! メフィス!」


 雪菜は桜が言い放った彼の名称を聞いて驚きと納得の結論が結びついた。


「まさか……そういうことだったの。いずれは何者かが彼を狙いに利用しに来るって聞いていた。だけど……それが……」

「ああ、君のせいですよ桜さん。僕の正体がバレてしまった」

「そうですね。殺すしかないんじゃないですか彼女を」

「それはしませんよ。彼女も僕らにとって大変有益な存在です。まだ生かしますよ」

「私だけ彼を愛する存在でいさせるって話でしょ!」

「僕はウソつきなんですよ桜さん、信じてはいけませんよ、あはは」


 言葉には欺瞞しか満ちていないかのようなしゃべり方はまさに不愉快さそのものだった。

 彼の正体を知った雪菜にはそれが恐怖でしかない。


「さて、場所を神聖域に移動しましょうか」

「っ! 私の計画がこれでは台無しです」

「なぁに、修正なんて何度でもききますよ」

「そんな言葉信用するはずないです!」

「あはは、それは確かにそうかもですね」


 彼らに雪菜はそのまま何かの馬車のようなものに乗せられて連行されていくのだった。

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