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体質と視線

今日も今日とて悪斗にだけ見えるものが路上にははびこっていた。

 陰湿で黒い影。街中を行き交う人々の身体をすり抜けていくソレ。

 そのようなものたちが見えるのが悪斗だけ。

 周りは何事もない平和な日常のようにその辺を通り過ぎていく。

「アクト、顔色悪いけど平気?」

「ああ、いつものだよ」

「例のまた見えるの?」

「ま、まあ」

 悪斗の視界に映るそれは浮遊した存在だったり、原形をとどめない肉片と化した物体として地面に横たわっていたりしていた。中にはしっかりと原形をとどめているものもいるが、何かをうわ言でぼやいたり、人に話をかけるも通り過ぎられるよりも自らの体をすり抜けられてしまう。

 そう、彼らは一般的に言われてる『幽霊』という存在。それもこの世に未練を残した死人たち。

 不透明な存在の彼ら、彼女らの存在は日常の中に平気で介入をしてるというのにもかかわらず一般人とはわからないままに生活を送れることに賞賛すら覚える。

 悪斗も一般人でありたかったと常に願うがそれも無駄なことだった。生まれてから霊視という能力をもってしまったたために良くないものを見続けてきた人生は過酷なものであり時には悲惨な目にあい死にかけたことすらあった。

 そんな非日常の人間であるからにして一般人とは言えない。

『助けておくれぇ』

 着物を着た火傷の顔の女人が道すがら話をかけてくる。それもこちらに対してだと悪斗は気付いた。

 しかし、無視を貫き通して雪菜の手を引いて駆け出した。

 捕まれば過去のように黄泉の世界へ連れてかれてしまう。

 もう、あのような悲惨なことはいやだ。

 その恐怖がおぞましくよみがえる。

「アクト、ちょっとストップ!」

「っ!」

 悪斗は慌てていた思考と行動をストップさせた。

 ゆっくりと雪菜の方に振り返りその手を離した。

「ご、ごめん」

「どうしたの? またなんかあった?」

「幽霊に話しかけられたもんだからおもわず……」

「ねぇ、ここ最近寝られないのってそれが原因でもあるの?」

「…………」

 図星だったために沈黙した。

 昔も話をかけられたことはあったが今年に入ってからは異常な頻度で幽霊から声をかけられていた。

 そのために睡眠不足がたたってしまっていたのだ。

 他にも奇妙な悪夢が主な原因といえた。

「お祓いしてもらったら? 私の伝手でたぶん当てがあるかもしれないしアクトのためなら手助けするよ」

「大丈夫だよ。雪菜姉ちゃんにはこれ以上迷惑をかけられない。昔だって……」

「そ、それはアクトのせいじゃないでしょ」

 悪斗と雪菜が出会ってからの歳月においても様々な経験がありその中には悪斗の幽霊を呼び寄せるというもう一つの体質のせいで雪菜を巻き込んでしまったことがあった。

 そのことが要因によって彼女に迷惑を被った過去を悪斗は持ち、彼女にはあれ以来迷惑をかけないと心に誓っていた。

「あれは第一悪斗を利用しようとした悪徳宗教団体のせいで起こった悲劇じゃない。でも、悪斗が私を助けてくれたおかげで何もなかったんだよ」

「そ、それでも雪菜姉ちゃんには迷惑をかけられないから伝手とかでそういうことをしなくていいよ。また、そういうことが起こるとも限らないだろうしさ」

「それは……」

「大丈夫。たぶん一時的なものだよ」

 つらそうな彼女の表情をこれ以上見られず視線を前に戻した。

 気づけば、もう大学の前についていた。がむしゃらに走っていたがために気付かなかった。

 周りの視線もいつの間にか集めていた。

 あれだけ、喧嘩のように言い争っていればそうなるのだろう。

「はぁー」

 おもわず、溜息が漏れ出した。

「アクト、行こう。お互いに講義遅刻しちゃうわよ」

「わかったよ雪菜姉ちゃん」

「今は先輩でしょ」

「そういうところ真面目だよね雪菜先輩」

「んー、どっちかっていうと個人的趣味が大きいかな」

「何それ?」

「なんでもないよ」

 キャンパス内をそのまま歩きだしてお互いに別の講義室へ向かった。

 道中にもちろんのこと悪斗だけの目には幽霊が見えていた。

 その中に幽霊ではない異形の存在も混じっていたことに悪斗は気づかなかった。

 歪な視線の正体に。

不定期更新の作品です。こちらは過去のノクターンノベルズ版を全年齢対象に書き換えていく作品になる予定ですので更新が遅いです。それでも続きが読みたい。面白いと少しでも感じていただけたらノクターンノベルズ共々こちらもブックマークをお願いします。

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