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怪物サバイバル(R15版)(連載中止)  作者: ryuu
第2章 戦争恋愛錯綜
19/40

悲しみの別れ

「アクト……アクト!」



 雪菜はいてもいられず悪斗へだきつく。

 悪斗は突然のことにそのまま押し倒される。



「ゆ、雪菜姉ちゃん!?」


「アクト……よかった……いきててよかったよぉ」




 悪斗は雪菜の存在を理解してその頭を抱きしめた。

 次第に雪菜がおとなしくなってくる。




「今までどこにいたのよ!」


「あー、いろいろとあったんだよ。それよりどうしてここに?」


「探しに来たからに決まってるでしょ!」


「探しにそうか……ごめん、心配かけて」



 悪斗は雪菜の手を引いて一緒に立ちあがる。

 ハッとして魔物のほうを見る。

 いつの間にか魔物は一体が死んだことで恐れをなして引いたようだ。

 代わりに別の脅威が迫った。


「きゃぁああ!」



 悲鳴のほうを振り返る。

 そこには桜がアリカの首を羽交い締めにしてその手に金属片をもって首筋に充てていた。



「桜さん何してんだ! やめろ!」


「悪斗さん、どういうことですか? 彼女から悪斗さんの匂いが凄くするんですよね。この泥棒猫もしや悪斗さんとしたんじゃないですか?」


「落ち着け、桜さん。事情を話す! 彼女を離せ」


「それはできないです。彼女には悪斗さんと私の子供の栄養源になってもらわないと」


「こども? なんの話だよ! いいから、彼女を離すんだ桜さん!」


 アリカの首筋にどんどんと食い込んでいく金属の破片。


 血がにじみ出し、このままでは血管を傷つけ致命傷となる。


 完璧に殺す気でいる彼女の姿に悪斗は冷や汗をかく。



「桜さんはこんなことをする人じゃないですよね? そんなことをする人は俺は嫌いですよ」


「っ! やっぱり、何かあったんですね、この女とぉ!」



 彼女の怒りに気付いた悪斗は叫んで咄嗟に駆けだした。


 しかし、遅かったアリカの首筋から鮮血がほとばしる。




「うぁああああああああああああ!」




 アリカの身体を抱きとめて悪斗は彼女の首筋を抑えた。




「アリカさん! アリカさん!」


「かはぁ……ぁ……くぁ……」



 必死で何かを口にしようとしている彼女に悪斗は大丈夫だと必死で呼びかけた。


 でも、彼女はだんだんと意識を失い最後に「ありがと……良い思い出……」と言ってその場に力をなく横たわった。瞳孔が開き死を意味した兆候を見せた。


 悪斗は泣き崩れながら叫んだ。



「どうして、どうして殺したんだぁあ!」


「な、何を言うんですか? ここの島には悪斗さんと私以外に誰もいらないんですよ。それに彼女は本来の役目通り養分になった。それでいいじゃないですか」


「何を訳の分からないことを言ってるんだ! ふざけるな! ふざけるなぁ!」


 悪斗は傍に立つ桜の首筋に飛びかかった。


 そのまま、首を締めあげていく。


 咄嗟のことに彼の近くにいた雪菜も彼を止めることができなかった。



「彼女はいい人でわかりあえたんだ!  それなのにそれなのに! うぁああ!」



 桜が過呼吸状態に陥って必死でもがく。


 ようやく冷静になって雪菜が悪斗の肩を掴んだ。



「アクト、だめそれ以上は死んじゃう!」


「っ!」



 桜は解放されたことでせきこむ。


 すると、動揺した瞳で悪斗をみて悲しそうな表情を浮かべて瞳をよどませていく。



「なんで、どうしてわかってくれないんですか……悪斗さんは私を好きじゃなかったんですか?」


「もう、あなたみたいな人なんか好きじゃない」


「っ!」



 桜はフラフラとなって立ちあがる。


 その桜の足を針のようなものが射抜いた。


 桜はその場で転倒した。



「っ!」




 桜の姿を目撃した二人に向けても針のようなものが無数に飛来し始めた。


 雪菜が悪斗の手をとり逃亡する。


 その時悪斗は後ろを振り返る。


 桜さんもいつの間にか消えていて、そこにはただ男が一人いた。


 男はあのモノクルメガネをかけたビジネスマン風の男。


 単独行動したはずの男だ。しかし、そのあとからぞろぞろと彼の後ろに現れてくる複数の男女。


 まるで、彼が引きつれているような様子。



「アクト、急いで逃げるよ!」


「あ、ああ!」



 悪斗は砂浜に横たえるアリカの亡きがらを最後に振り返りみて奥歯を噛んで雪菜とその場を去って行った。



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