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怪物サバイバル(R15版)(連載中止)  作者: ryuu
第2章 戦争恋愛錯綜
15/40

アリカの暴走 改稿

運営からの指示で改稿しました。一部内容に変更がございます。

 北側を走っていくと川の流れる音が聞こえてきた。


「近くに川……ある」

「なら、そこへと向かいましょう!」


 音の方角に向かい急いでアリカは悪斗を抱えて走った。

 ウサギの速度が優に上回ってるのが如実に表れてるかのようにいつの間にかバックルベア―を巻いていた。

 

「まいたようですね」


 河川敷にたどり着き二人で寝転がり息づかう。

 背後をもう一度振り返る。


「無事……巻けた……」

「さすがはウサギの足ですね」

「それ……差別発言」

「すみません!」


 褒めたつもりが逆効果に悪斗は困った。

 その様子を見てアリカは笑った。

 悪斗は次第に気付いたからかわれたのだと。


「アリカさん、止してくださいよ。そういう差別的な部分がまだわからないんですから」

「でも……だいたい……想像ついて……ほしい」

「うぐぅ……善処します」


 安全圏を獲得できたとみて気が緩んでほっとした笑いが二人の間に生まれた。

 そう、思えた矢先だった。傍で激しく苦しみ悶え動くアリカがいた。


「え? アリカさん!?」


 彼女は激しく首をひっかきまわす。

 ジャッカロープという種族の彼女の手は普通の人間の手と変わらなくその手で首をひっかきまわす。慌ててその手を押さえて触れるとその手はひどく冷たくなっていた。


「え? これ本当に生きてるのか!?」


 あり得ないほどに冷たかった。

 彼女の人間に似た顔立ちながらにその人間とは異なる赤い瞳へと変貌した。

 その目を見るとまるでウサギそのものを幻影として見てしまう。

 唯一足だけだったウサギの個所は拡大していき、人間の部分でもあった箇所までに体毛が生え始めていく。

 その様子に悪斗はぎょっとした。


(これ尋常じゃない……まさかここにきて彼女が敵になってしまうのか!?)

 

 まるで、熱に浮かされたように。

 触れるとかなり熱い。


「なんだよこれ!」


 あわてて、自ら脱いだ上着に水を含ませて彼女の肌を冷やそうとする。

 けれど、改善は見られない。


「何か方法ないのか!」


「方法なら……ある……だけど……ぐっ!」


「あ、あるんですか!? どんな方法ですか!?」


「そ、それは……でも……いえない」


「なんでも手伝います! だからいってください!」


「……人間の……精気を……吸い取る……」


「え」


 聞こえた言葉は何かの聞き間違いなのかとわが耳を疑った。


「えっと、今なんて?」


「どんなこと……手伝ってくれる……言った。……あなたなら……わたしも許せる……」



 その時だ。


 悪斗の耳に獣の遠吠えが聞こえた。


「嘘だろ!」


 例のバックルベア―が近くまで迫ってきているのを悟った。

 このままではまた追いつかれてしまう。

 熊は川でも行動できうる生き物である。

 悪斗は熱にうだった彼女を背負い、川をゆっくりと渡る。

 思いのほか上流で川の流れは緩く浅い。

 通りやすくはあった。

 悪斗は懸命に移動をして向こう岸にわたるとまた森林の中へと入った。

 どこか休めて身を隠せそうな場所を探すと一つの大きな穴倉を見つけた。

 まるで洞窟だった。

 

「ちょうどよかった!」


 どうにかそこへと入ってアリカを寝かせた。

 未だに苦しみ喘ぐ彼女。

 熱にうだされた身体を少しでも軽減させようと悪斗は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら強硬手段を決行した。

 彼女の上着を脱がせて下着姿にする。

 自らの濡らした上着でどうにか体温低下をもう一度試した。


「だめか」

「もう……こっちも……だめ」

「え」


 アリカのその言葉を聞いた直後悪斗の視界は反転していた。

 いつのまにか、アリカにまたがられてしまった悪斗は目を白黒させる。


「あ、アリカさん何を――ンッ!?」


 蕩けるほどに熱い感触に口をふさがれ、その心地よさに一瞬で全身の力は抜け落ちた。

 悪斗はまどろみに落ち切った。だが、それも数秒のことで自分が今、アリカという知り合って数日と間もない彼女と濃厚なキスをしたと言う事態に衝撃を受けてすぐに彼女を突き放す。


「あんっ」


「あ、アリカさん! な、なんでキスをっ!?」


「私のために……お願い……。これ……必要なこと……だから……キスした」

「それってさっき言ってたことですか? でも、こういうことは大事な人と……」

「今まで……女の人から……奪って事なき……得た……今ここに……人間あなた……だけ」


 彼女のその一言には何も反論できないまま黙った。

 その黙認が彼女には許諾と受け取ってしまったのか貪り食うように悪斗の肌へと自らの肌を密着させる。

 まるで、儀式の一環を行う余興で愛情を伝えられて悪斗は戸惑った。


 さらなる濃密なキスをされて淫猥な音が響く。

 彼女の舌は肉食動物のごとく狙った獲物を離さないように悪斗の唇を離すことはない。


 この事態は、悪斗にしてみたら急なことで判断が追い付かず、情事の余興でもあるキスに頭を切り替えることなどできない。


「これって……ゴクリ」


 そして、アリカに貪られるように悪斗は身を委ねたのであった。

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