日常
この作品は私がノクターン版で掲載している怪物サバイバルを全年齢対象に読めるようにしていくというものです。ストーリー自体は大まかに同じになっていきます。現在18禁版は連載休止中ですがこの作品が人気次第でそちらを継続していけたらと思います。
超常現象物。
それは非科学的な現象物体のこと。
そんなものはこの世にはないとさえ誰もが信じている。
だが、しかし、青年の前にはそれらを立証する存在がいた。
それも複数。
その中には幼馴染も含まれていて理解の許容を大幅に超える。
これは現実なのだろうか。
獣耳を生やした少女、鱗肌の青年、筋骨隆々とした岩肌の40過ぎの男、耳の長いアニメや漫画なんかで親しまれてるエルフの様な美女、天使のような羽を生やした美女、黒いドレスに赤い瞳そして、金色の瞳と鋭い牙をもつまるで伝説上の物語にある吸血鬼の様な姿の美少女etc。
そんなさまざまな人種の中にたったひとりだけ人間である青年は緊張や恐怖で息をのんで震えあがった。
異形の超常現象物体、または怪物たちが青年に異様な執着心を見せながらにじり寄って手を伸ばす。
青年は今いるこの良くもわからない無人島の砂浜で後ろに徐々に下がって青年は思った。
この場所は一体どこなのだろう。
そして、なぜこうなってしまったのか。
数時間前までは普通の街にいたはずなのに。
*******
睡眠と言うのは誰もが平均的に行う行為である。
一般的に睡眠をしなければ体を悪くし1週間以上寝ないとなれば死に瀕するという。
青年は自室でパソコンを立ち上げそのような内容文を読みふけりながら手近くにあった保険証を見た。
『神月悪斗』青年の名前が書かれていた保険証は更新が必要だった。
ここ最近青年は寝不足だった。それも過剰なほどに。
「ふぁ~あ」
今日で1週間近く睡眠をとっておらず体はだるくふらつく。
必死で何度もベットに寝ようとしても奇妙な悪夢にうなされ眠れぬ1週間である。
それ以外にも眠れない要因は多々思いつく限りあった。
「そろそろ学校も行かないと死ぬなぁ」
と言いながらもこの健康状態では外に出ることができるほど気力がなかった。
睡眠について調べていたのも睡眠できる良い方法がないかと検索をしていた次第だったが当てになりそうな良治がなくあきらめた次第だった。
結果として自分の寝ていない期間を検索かけたところヒットした内容が死亡と言う記事。
「このまま死ぬのかなぁ。あはは」
薄暗い自室のカーテンを開き、気分転換を行う。朝日が差し込み顔面を光が照射した。
クマだらけの顔に光は強烈に刺激を与えそのまま顔を抱え唸りながらうずくまった。
「くっそぉ」
一種の睡眠障害に発症しているのはわかるが保険証が更新切れしていては病院に行けない。
一度更新手続きを行う必要がある。
しかし、その気力もあらず日にちはだらだらと進んでいった。
「誰かに頼れはしないし」
1軒家で一人暮らしを行ってる身分であり誰も頼るべき相手がいない。
いや、一人だけ思い当たるが彼女にだけは迷惑をかけたくないという過剰な男のプライドが邪魔をしていた。
一人暮らしを始めてはや数年。
大学生活を始めるにあたり悪斗の両親は同時期に海外転勤を決め海外へ移住し悪斗にこの家を明け渡した。
仕送り金もたびたび送られながらの生活でありつつもあくまでお金も生活資金しかあらず病院に行くためのお金はない。
保険料を利かせたとしても金がわずかに足らない。バイトも最近まで行っていたがとある問題を引き起こしクビになったばかりだった。
「神様仏様、おらに元気をわけてくれー」
リクライニングチェアにもたれかかりながら両手を天井につきあげた。
そんな馬鹿な行為をしてるとドアチャイムが鳴り響く。
体の異常なだるさから出る気も起きず居留守を決め込んだ。
だが、相手も相当粘り何度何度もチャイムが鳴り響く。
「あーうっさいなぁ」
席から立ち上がり足を運ぶ前に勝手に玄関の戸が開かれた音がした。
「え」
自室の扉の取っ手に手をかけた状態で硬直しこちらに向かってくる気配に身構えた。
相手は住居不法侵入をした犯罪者。しかも、金目のものでも盗みに来た泥棒だろう。
対抗しようにも体力がない今の自分で太刀打ちができるはずもない。
「やばいよやばいよ」
ゆっくりと自室の扉が開かれた。悪斗は咄嗟に扉の開いたわずかな隙間に手を入れて相手をわしづかみにしようという先手必勝の攻撃に出た。
と思った矢先にしっかりとつかんだはいいのだが右手に強烈な柔らかな感触と
「ッン」
扉の向こうから聞こえた色っぽい声に狼狽する。
聞き覚えのある声。
「こういうことしたいなら言ってほしかったなぁ、アクト。んふふっ」
声の主の正体に気づいた悪斗は手を離し声の主を部屋に招き入れた。
入ってきたのは絶世の20代くらいの清楚なお姉さま系美女。
スウィンキーで髪止めした綺麗な茶髪、優しげな大きな瞳、スッと通った鼻梁に小ぶりな鼻と桜色の唇という端正な美貌をしていて体つきもまさにモデル。まさに美女。
「もう、今も胸が疼いちゃってる。このまま抱いてくれる?」
「‥‥‥‥はぁー、雪菜姉ちゃん無断で家に上がり込むなよ」
美女、鞍馬雪菜は隣家に住む幼馴染。
その隣家も相当な大豪邸の御屋敷でウチの家がわずかな敷地面積しかないほどに大きな家。ウチの家の敷地面積が160平方メートルに対して雪菜の家はその約5倍は大きいというまさに豪邸。
それも彼女の家柄は古くからの名所ある家柄で政府とも密接なかかわりがあるという家だからでもある。
雪菜はお嬢様でありながらも自由奔放な性格をしておりたびたびこうして身勝手にも昔から家に無断で上がり込んでくる。
小さい頃の仲良くなった縁か。
「だって、ちゃんと合鍵ももらってるよ。お義父さまとお義母さまにもちゃんとアクトの管理を任されてるもの」
「はぁー」
一般的な家庭のウチとは比べ大豪邸に住むお嬢様が平然と家に上がり込むこのことに慣れてしまった悪斗であるが最初は彼女と仲良くすることすら困難だった。
彼女の家の方から苦情が寄せられたりした。一方的に彼女がこっちに接触して来たというのにひどい言い草であったことは悪斗の記憶にわずかに残ってる。
「あんまり、こういうことしてっとまた雪菜姉ちゃんのところの両親が何か言うんじゃないか?」
「それならもう大丈夫だよ。だって、ウチのお父さんもお母さんもアクトを許嫁って認めてるんだから」
「‥‥俺ら付き合ってもないのにいいのかよ‥‥」
「アクトは私のこと嫌いなの?」
うるんだ瞳で見つめられてたまらず顔をそらした。
自分の顔がすごく赤くなってるのを自覚するほどに彼女のその表情は自分の感情を揺れ動かすほどに弱い。
「アクト、学校行ける? ここ数日具合悪くって休んだでしょ? 今日は大丈夫?」
「あー、それな。今日は行く」
「でも、ねむそうだよ。眠れてないの?」
「いや、少しは眠ってる‥‥ぞ」
実際はウソだった。
彼女に心配は掛けたくはないので必死で取り繕った。
彼女はことさら心配そうな顔であり逆効果みたいだった。
「大丈夫だって本当に」
不安に助長を駆けるような言い方だったかもしれないと焦ったが雪菜は笑顔になって手をさし伸ばす。
その行動に首をかしげ茫然となる。
「ンッ」
「ん?」
「手つなぐの」
「あ!?」
思わぬお願いにうろたえる。
さすがに気が引けて手を突っぱねてさっさっと机の横にかけてあったカバンを手に取った。
着替えは済ましてるのでかばんを持てば準備完了だった。
雪菜を無視して階段を下りて昇降口で靴を履きオートロック式の玄関扉を開けて外に出る。
数秒後には慌て追いかけてきた雪菜もついてきた。
「もう、アクトひどい!」
「手を握るのは勘弁だ」
「なんでぇ!」
「恥ずかしいからに決まってるだろ」
「え?」
これ以上の言及から逃げるようにしてとっと施錠して学校へ向かった。
「まってよぉ、アクトォ!」
あとから雪菜が追いかけてくるような足音が後方から聞こえる。
この何気ないことがこの俺、神月悪斗の日常であった。
まずは序章でして初読みの人はぜひ、おもしろいと感じたらブックマークをお願いします。
18禁版をお読みの人もこちらもブックマークを登録していただけたら嬉しく思います。
ぜひ、暖かな目でお読みいただけたら幸いです。