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若君は吸血鬼  作者: 関川二尋
第七章 神のいない教会
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教会へ

 あたしとマーちゃんはそのまま【教会】へと向かった。

 平坦な農道を途中で曲がり、丘の上へとつづくなだらかな道を登ってゆく。


 雨はとりあえずあがったけれど、濡れたジャージが体にへばりついて、なんともいえない嫌な感触だった。それに靴も靴下もぐっしょりと濡れてて、それがなんか蒸してて、これもまた気持ち悪かった。


 でも復活したあたしたちはへっちゃらだった。

 もう手もつないでいない。

 二人並んでぐんぐんと坂を上っていった。


   †


 片側が崖になった坂道をしばらく登ると、道の両脇に白いペンキが塗られた木の柵が現れた。つまりこのあたりから教会の敷地が始まっているらしい。

 さらに坂を登っていき、最後に右に折れる急カーブを抜けると、目の前に巨大な教会が現れた。


   †


「うわ。すごいね……」

 実はあたし、教会に来たのは初めてだった。とくに理由があった訳じゃなくて、たまたまその機会がなかったせいだ。この町は昔からキリスト教の人が多かったけれど、家はずっと神社の()だったのだ。


「そうでしょ。とにかく古いのよ」

 マーちゃんはそう言ったけど、あたしが驚いたのはその大きさだった。


 教会全体の大きさは大きな体育館位。その四隅には中世のお城みたいに、先の尖った塔がそそりたっている。そしてそれぞれの塔の先端には、真っ黒い鉄製の巨大な十字架が立っていた。


 メインの建物は平屋の石造りだが、その天井の高さはたっぷり二階分はあった。正面には巨大な木製の扉が一つあるだけ。でも馬に乗ったまま、二列で入れるくらいの大きさがある。


 さらに教会の屋根には『ガーゴイル』っていうの? 不気味な悪魔みたいなのが膝を抱えていっぱい座っていた。


 はっきり言って、この教会こそ、吸血鬼が住むのにふさわしいように見えた。


   †


「パパぁー、帰ってきたよぉ!」

 マーちゃんは敷地に入るなり、空に向かって大声でそう言った。がらーんとした敷地でその声がかすかにこだまを返した。


「お帰りぃー! 裏にイルよー!」

 姿は見えないが、かすかに英語なまりの日本語が聞こえてきた。


「裏だわ。行こ」


 マーちゃんに手を引かれるままに、ぐるりと教会の裏手に回ってゆく。


   †


 教会のまわりにはぐるりと花壇が作られており、今はクチナシの白い花が咲いて、香水のような強い芳香をふりまいている。


 ちなみにこの花がクチナシとわかったのは、若君のおかげである。

 若君が一番好きな花だそうだ。


 ぐるりと壁沿いに回り、教会の真後ろに出たところにマーちゃんのパパがいた。


 ()()()()()()()()()()()()()()()


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