ピッキングはおまかせ
ジャキン! 懐中電灯付きのヘルメットをかぶり、
ジャキン! 聖水入りの水鉄砲を肩からさげ、
ジャキン! 白木の杭をジャージのズボンにはさみ、
ベトベト! ニンニクのペーストを顔と髪に塗った……
†
「うげ……」
ナナちゃんが真っ先に声を上げた。
「うげぇ……」
あたしも同じく声を上げた。
こりゃ吸血鬼でなくとも逃げたくなる。
「これだけ臭えば、ばっちりね!」
だが、マーちゃんだけはなんともなかった。
†
「じゃ、作戦開始!」
それからマーちゃんを先頭に、あたし、ナナちゃんの順にそっと階段を上がっていった。
ナナちゃんの話では、お母さんの寝室は二階の突き当たりの部屋だという。階段をそっと上がり、狭い廊下を特殊部隊のように音もなく進んでゆく。
「ここです」
ナナちゃんがそうささやいて、あたしたちとは反対側の、扉横の壁に背中を寄せた。
そして水の入ったポリバケツを慎重に構えた。
退却時にはナナちゃんが中の水をザっと流す予定だ。
マーちゃんが無言でうなずく。それから背後のあたしを振り返り、同じく無言でうなずいた。
(さぁ突入するわよ、オッケー?)
言葉がなくとも意志は伝わる。
あたしもしっかりとうなずいた。
それからマーちゃんがそっとドアノブに手を伸ばし、ゆっくりと回していった……
†
……のだが、
「あれ……?」
マーちゃんはもう一度、ゆっくりとドアノブを回していった。
手はつるつるとドアノブをなでるばかりで、まったく回らなかった。
(鍵がかかってる……)
マーちゃんは鍵穴を指さし、泣き顔でそう伝えてきた。
(知らなかったの?)
あたしも唇の動きで伝える。
マーちゃんはコクンとうなづいた。
(中から鍵をかけてるって、マーちゃん、自分でそう言ってたよ?)
と、ささやくと、マーちゃんはがっくりと肩を落とした。
(メンボクない……)
「合い鍵とかないかな?」
あたしがナナちゃんに聞くと、ナナちゃんは首を横にふった。
そうだよね、あったら持ってきてるもんね。
むむ。仕方ないな。
†
あたしはポケットからがま口の小銭入れをとりだし、中から一円玉を取り出した。
「さっちゃん、開けられるの?」
マーちゃんはあたしの耳に手をかぶせ、小声で聞いてきた。
「家の中の鍵って、たいていこれで開けられるのよ。知らなかった?」
あたしもマーちゃんの耳に直接ささやいた。
それからドアノブに向きなおり、鍵穴についている溝に一円玉を当てた。
サイズはぴったりだ。それからそっと一円玉を回す。
カキン……
バネのはずれる音が響いた。
「すごい!さっちゃん天才!」
ナナちゃんは音のしない拍手をパチパチと送ってくれた。
さて、いよいよ突入開始だ!




