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若君は吸血鬼  作者: 関川二尋
第六章 忍び寄る影
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ピッキングはおまかせ

 ジャキン! 懐中電灯付きのヘルメットをかぶり、

 ジャキン! 聖水入りの水鉄砲を肩からさげ、

 ジャキン! 白木の杭をジャージのズボンにはさみ、

 ベトベト! ニンニクのペーストを顔と髪に塗った……


   †


「うげ……」

 ナナちゃんが真っ先に声を上げた。


「うげぇ……」

 あたしも同じく声を上げた。

 こりゃ吸血鬼でなくとも逃げたくなる。


「これだけ臭えば、ばっちりね!」

 だが、マーちゃんだけはなんともなかった。


   †



「じゃ、作戦開始!」

 それからマーちゃんを先頭に、あたし、ナナちゃんの順にそっと階段を上がっていった。

 ナナちゃんの話では、お母さんの寝室は二階の突き当たりの部屋だという。階段をそっと上がり、狭い廊下を特殊部隊のように音もなく進んでゆく。


「ここです」

 ナナちゃんがそうささやいて、あたしたちとは反対側の、扉横の壁に背中を寄せた。

 そして水の入ったポリバケツを慎重に構えた。

 退却時にはナナちゃんが中の水をザっと流す予定だ。


 マーちゃんが無言でうなずく。それから背後のあたしを振り返り、同じく無言でうなずいた。


(さぁ突入するわよ、オッケー?)

 言葉がなくとも意志は伝わる。 


 あたしもしっかりとうなずいた。

 それからマーちゃんがそっとドアノブに手を伸ばし、ゆっくりと回していった……


   †


 ……のだが、


「あれ……?」

 マーちゃんはもう一度、ゆっくりとドアノブを回していった。

 手はつるつるとドアノブをなでるばかりで、まったく回らなかった。


(鍵がかかってる……)

 マーちゃんは鍵穴を指さし、泣き顔でそう伝えてきた。


(知らなかったの?)

 あたしも唇の動きで伝える。

 マーちゃんはコクンとうなづいた。


(中から鍵をかけてるって、マーちゃん、自分でそう言ってたよ?) 

 と、ささやくと、マーちゃんはがっくりと肩を落とした。

(メンボクない……)


「合い鍵とかないかな?」

 あたしがナナちゃんに聞くと、ナナちゃんは首を横にふった。

 そうだよね、あったら持ってきてるもんね。


 むむ。仕方ないな。


   †


 あたしはポケットからがま口の小銭入れをとりだし、中から一円玉を取り出した。


「さっちゃん、開けられるの?」

 マーちゃんはあたしの耳に手をかぶせ、小声で聞いてきた。


「家の中の鍵って、たいていこれで開けられるのよ。知らなかった?」

 あたしもマーちゃんの耳に直接ささやいた。


 それからドアノブに向きなおり、鍵穴についている溝に一円玉を当てた。

 サイズはぴったりだ。それからそっと一円玉を回す。


 ()()()……

 バネのはずれる音が響いた。


「すごい!さっちゃん天才!」


 ナナちゃんは音のしない拍手をパチパチと送ってくれた。

 

 さて、いよいよ突入開始だ!

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