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若君は吸血鬼  作者: 関川二尋
第六章 忍び寄る影
43/130

いきなり襲撃?

 あたしたちはまず学校の方に歩いていき、途中から東側にそれて住宅街へと向かった。

 この辺りは町の中心部からは少しはずれているエリアだが、一軒家の建物が多く、ちょっとした高級住宅街になっている。

 整然と並んでいるどの家にも、駐車場と庭があり、家の造りもヨーロッパ風で新しい。

 ちなみに路面も砂利道からアスファルトに変わる。


   †


「なんかこういう家っていいよねぇ」

 とマーちゃん。

「……うちの教会はスゴい古いからさ、なんかこういうきれいな家にあこがれちゃうよ」


 

「あ、ソレわかる! うちの家も古いし、なんか広すぎるからさ、こういう家の方が住みやすそう」

 とあたし。

 和風と洋風の違いはあれ、あたしの家もマーちゃんの家も無駄に広いという共通点がある。


「それにしても、静かだねぇ」


 そういえばやけに静かだ。

 どの家もひっそりと沈みかえっている。

 通りに出ている人も全くいない。


   †


「まだ早いからじゃない? 土曜だし」

 あたしはそうは言ってみたものの、やっぱり違和感はある。

 散歩中の老人とか、ペットの散歩をしている人とか、庭の水まきをしている人とか、そういう人がぜんぜんいないのだ。


 どの家も不気味に沈黙している。

 まるでその腹に秘密を抱え、静かにあたしたちを見つめているみたいに……


 なんて、思うのは考えすぎだろうか?


「ううん。これ、やっぱり変だよ」

 マーちゃんがきっぱりと言った。


「うん。変だよね」

 あたしも正直にうなずいた。


 でも引き返すわけにはいかない。

 二人ともその気持ちは同じだった。

 あたしたちは二人とも胸に提げたロザリオをギュっと握りしめ、さらに歩みを進めていった。


   †


「確か……あ。ここだ!」

 やがてマーちゃんは一軒の家の前で立ち止まった。


 表札には『真崎』と出ている。まだ新しい家だ。

 二階建てで屋根は青い。

 駐車スペースはあるけど車はなく、かなり広い庭がある。

 庭は半分が花、半分は野菜が植えられている。

 まぁ、このあたりでは普通の家だ。


「さてと、まずは……」

 と言いかけたとき、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


   †


 ()()()()

 一瞬で全身に汗が噴き出した。

 どうやって身を守っていいのかわからない。


 それから恐怖が体を縛り付ける。

 だめだ。動けない! なにも出来ない!

 これじゃただ殺されるだけだ。

 いきなりこんなことになるなんて。


 人影は両手を開き、飛ぶようにして迫ってくる!


 そして、あたしの横をさっとかすめて通り過ぎ……


()()()()()()!」

 と、マーちゃんに抱きついた。


 それは『菜々子ちゃん』だった。

 ちょっと背の高い、あの小学生の女の子だ。


「ふぅ……」

 なんか緊張しすぎたみたい。

 すでに汗びっしょりだし、気づいたらロザリオをギュッと握りしめていた。


   †


「お、おはよう、ナナちゃん」

 とマーちゃん。

「おはよ! ほんとに来てくれたんだね!」


「だって約束したでしょ?」

「でも、ほんとに来てくれると思わなかったの」

 それからナナちゃんはくるりとあたしの方をみた。


「あれ? シンちゃんのお姉ちゃん?」

「おはよう、ナナちゃん。あたしね、マーちゃんの友達なの」

「そっかぁ、おねえちゃんも来てくれたんだね。ありがと」

 ナナちゃんはペコリと頭を下げた。


「で、お母さんは相変わらず?」

 マーちゃんが聞くと、ナナちゃんの顔が急に寂しそうになった。

「今も部屋に閉じこもってる」


「わかったわ。さっそく行きましょう」


 菜々子ちゃんは静かにうなづくと、先に立ち、玄関の扉を開けた。

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