そのご
食堂に到着するまでの間、スティーブさんからヘッドフォート家について少し話を聞いた。
この家にはリコリスとウィリアムが住んでおりご両親は
3年程前に、馬車で王城へ向かう途中の事故で亡くなっているようだ。
それからは、王家の力を借りながら領地を運営しているらしい。
ふむふむと相槌を打ち、スティーブさんにお礼を伝える
食堂の扉を開くと既に2人は席に座っており、
私も案内された席に座る。
「お待たせしてしまって、すみません。」
「大丈夫よ。ドレスもサイズが合っているようで安心したわ。」
リコリスの合図で美味しそうな料理が運ばれてくる。
カトラリーを見る限りマナーなどはさほど違いが無いように思えた。
食事も終わり、これまた美味い紅茶に舌鼓を打っていると
「これからどうしましょうかね。」
リコリスに問われ、口の中の紅茶を飲み下す。
「この身体では、魔力も無いですし、出来ることが少ないです。なので、取り敢えず魔力が回復するのを待つしかないかと...。ご迷惑をおかけしますが…。」
「良いのよ、そんなこと気にしなくて。ただ、ビビちゃんのご家族とか心配されてないかしら。」
「いえ、私は1人で暮らしていましたし、両親とも疎遠なので問題無いかと。」
心配そうなリコリスを安心させるように微笑みながら答えた。
「そうだったの。うちにはいつまでも居てくれて良いからね。…今日のところはそうね、我が家を案内するわ。ウィルが。」
「僕ですか?姉上が案内すれば良いのでは?」
それまで黙って話を聞いていたウィリアムが激しく噎せている。
「あら、良いじゃない。私は少し用事があるから、お願いね。」
にっこり笑う姉に勝てないのか、ため息をつきながら立ち上がり食堂の扉に近づく。それから、座ったままの私を振り返り早く来いと言わんばかりの視線を寄越す。
慌てて立ち上がり、手を振るリコリスに頭を下げながら
ウィリアムの元へ向かう。
「ご迷惑をおかけしてすみません。もし、忙しいようであればスティーブさんとかに…。」
「別に…。急ぎの仕事もないから問題ない。まずは、主要部屋の案内をする。」
不満はあれど、しっかりと案内はしてくれるようだ。