表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

03 メゼルの武具商人 パート1

完璧にリメイクしました。前の所を読んだ方はすいません。

 カルザニア王国首都メゼル。そこはとても活気に溢れる場所であった。人間だけでなく、よくゲームで出てくるようなエルフやドワーフらしき姿も多々見えた。


 この頃のラノベとかには多種族共存国家とかよく出てきたりするけど、この国はどうなんだろな?今の所エルフやドワーフ以外、人と違う種族を見ていない。魔物とかはいないのだろうか?確かに俺の考える異世界とここが全く同じという事はないだろうが、エルフやドワーフがいるから魔物もいそうな気がする。

 いやー、しかしさっき始めてエルフ見たときは全異世界ラノベマニアの夢を叶えてしまった!と、滅茶苦茶感動したけど、ここまできたら魔族とかあわよくば竜とかにも会えちゃったりして……


「たまか……ミーナ」

「ふふ、呼び方には少しずつ慣れて行ってくれればいいわ。何?」

「あはは……ここはエルフとかドワーフ以外の魔物とかはいないの?」

「魔物ね〜、魔物は残念ながらいないわ。聖斗君はここが多種族共存国家とか考えたのかしら?」


 図星である。素晴らしく図星である。


「え?……なんで分かったんすか?」

「いつもそういう感じの本読んでるじゃない」

「えっ!?えっ!?なんで知ってるんすか!?」

「あっ!ご、ごめんね!前に休み時間聖斗君が本読んでて、ちょっとちらっと見てみたらそんな感じの内容だったから……」

「あっ……そういうことか……」

「ミーナさん観察力ぱなくないですか?」


 そんな会話に匠が入ってきた。


「そんな事無いと思うけど、一応私はあなたたちの世界であらゆるものを観察して頭の中に叩き込んできたから」

「じゃあ、聖斗のラノベ見たのもその一環だったり?」

「うふふ、そうかもね」

「ラノベから学べるものはないかと……」

「……」

「あっ、ごめんなさい。愛士君、話に置いてかれちゃってるわよね」

「いえいえ、大丈夫ですよ。私はあなた方を見ているだけで十分ですので」


 愛士は優しい笑顔で言った。


「大丈夫?愛士─君?」


 その呼びかけに愛士は適切に答えてくる。


「ミーナさんと同様に呼び捨てで結構ですよ。優しい笑顔、とは少し照れますね」

「や、やっぱり聞こえるんだね……」

「兄さんと私は元々同じ存在でしたからね。兄さんも方法を知れば私の心の声が聞き取れますよ。」

「あはは、なんか頭の中に人の声が聞こえるって変な感じそうだからちょっとやだかな……」


 読まれるのも少し嫌だけどね


「まあそこは慣れですね。でも、兄さんは心が読まれるのもあまり快く思ってないようですしこのスキルは切っておきましょう」

「今読んだだろ」


 返答に俺は顔を歪めた。


「ははは、失礼しました兄さん。これが最後ですので。」


 まったく油断出来ない奴である。というか今気になる言葉が聞こえた。


「そう言えば、今スキルって言ってなかった?」

「ええ、言いましたね」


 おおー!ここに来て異世界テンプレワードで出てきたぜ!


「スキルって言うと人が持ってる異能的な感じ?」

「人だけじゃないわよ」

「ええ、そうですね。人間種以外にも先ほど見ましたエルフやドワーフも当然使えますし、兄さんが言った魔族などのモンスターよりの者たちも持ってますよ」

「そ、そうなのか……じゃあ魔法も当然あるのかな?」

「ええ、もちろんあるわよ」


 そこに聖斗ではない者が反応してくる。


「おお!!魔法!!あの本の中や画面の奥にあったものが今この世界には日常的にある!!ヤヴェ、テンションあがるぜ!!」


 言い忘れていたが、俺が匠と仲がいい理由は同じラノベオタクだからだ。おそらく、匠も俺と同じくこの状況に感動していることだろう。


「えっ!もしや、俺たちも魔法、スキル使えちゃったり?」

「ええ、ちゃんと習得すれば使えるようになるわよ」

「「まじっすかッッ!?」」


 ……


 しまった。つい、感動で反応してしまった。これどうやって話しつなげばいいんだ……?


「……ふふふ、随分と元気な反応ですね」

「そうね、二人とも魔法って響きに興奮しちゃったみたいね」

「「……」」


 これこそが顔から火が出るという状況なのだろう。うん、めっちゃ恥ずかしい


「まあ、魔物とかにも後々会えると思うから楽しみ(?)にしていると良いわ」

「そ、そうですね……楽しみにしてます……」

「さ、さーて……まず何をすればいいんだっけか?」

「ああ、まずは装備を整えにいきましょう」


 そう言って歩き始めると愛士がミーナへと話しかけた。


「ミーナさん、頼んでおいたものは用意して頂けましたか?」

「ふふ、ちゃーんと用意しておいたわよ」

「ありがとうございます」


 この一連の流れで話の要点が見えてこない。


「何の話?」

「私はあらかじめ装備を頼んであるようなのですよ」


 あらかじめということはその装備は貴重なものだったりするのだろうか?というか愛士だけ先に?


「どうやら、父さんが頼んでおいてくれたようです」

「ふーん、なるほど、ちなみにその武具にはどういう力があるんだ?」

「自分の意志に応じて着ているその武具が変形するという力を込めてあるそうですよ?」


 その時俺の頭の中では、その装備の1部分が伸び、魔物と戦っているシーンが映し出されていた。


 おー、結構格好良さそう


 その時俺はそう思っていた。だが、俺はその後愛士の装備を見た瞬間絶句することとなる。あまりにも予想外な形状によって。


 *


「えーとね……、これはどう言えばいいのかな……?」


 店に入って取り敢えず待っててと言われ服を見ていたがそこに愛士と共にミーナがやってきたのはいいが……


 俺の目の前にはミーナの横に悠然と立つ、いわゆる中華服(チャイナ服)と呼ばれる装いの愛士が立っている。


「どうですかね、兄さん、似合っていますかね?」

「まあ、似合ってるとは思うけど……」


 そう似合ってはいるのだ丈もぴったりで綺麗に着こなしてはいる。しかし、確実にこの場では場違いなのだ。チャイナ服という異世界ではなかなか見ない服と言うだけでなく、真紅という物凄く目立つ色なのだから。


「なんでチャイナ服なの?」

「何故ですかね?父さんのチョイスですから私には分かりかねますね」

「そ、そうか……」


 その時、頭にさっきの愛士の言葉がよぎる。

 "自分の意志に応じて着ているその武具が変形するという力を込めて頂きました。"

 確かに普通の鎧とかであればその力も生きてくるとは思うが、このチャイナ服にその力があってもあまり意味が無いようにみえる。


「あのさ、なんでこのチャイナ服にさっきの力が必要なの?」


 その時愛士の口元が今までより少し笑っているように見えた。


「それは時期に分かるのでは?実際まだ私にどんな力があるかも分かりませんし、そこで憶測を語っても無意味でしょう。さあ、兄さんも服を選んで下さい」


 そう言って話題を流されてしまった。


 まあいいか。ちょっと気になるけど、愛士も後で分かるって言ってたし


 脳内でそう理解した直後ミーナが話しかけてきた。


「聖斗君!こんなのどお?」


 そう言って渡されたのは漆黒のローブ。まさにファンタジーあるある。部分的に金や赤の刺繍(ししゅう)が施され、神秘的なオーラをかもし出している。異世界ファンタジーファンとしては魅力的だ。

 しかし……


「……俺にはちょっと派手すぎますね」

「えっ?似合ってると思うけど……」


 俺は元々別に目立ちたがりでは無かったからいつもここまでキラキラしたものは身につけない。身につけろと言われればある程度は付けてもいいがやはり慣れない。

 それからしばらく店を見ていたが、ここはミーナによると貴族専属の店らしく、冒険者用の装備も売っているが派手目の物が多い。

 それから探そうとした時1人の従業員らしき男が近づいてきた。


「ミーナ様お久しゅうございます。挨拶が遅れ申し訳ございません」


 その近づいてきた男は店に入った時にも会ったサイルという名の店主だった。


「サイルさん。お久しぶりですね、そんな畏まらなくていいんですよ?」

「そうも行きません、パール家の方々に雇って頂いている以上体裁は整えなくてはなりませぬ」

「そうかしらね?サイルさんはやっぱり真面目ですね」

「恐縮です……はてさて、ミーナ様、今日はどのようなご要件で」

「あっ、ええ、この2人に装備か服を仕立てたいのだけれど、今探していたところよ」

「おや、ではそちらのお2人、いえ3人はパール家様付き冒険者にでも?でしたら、こちらに」


 そう言って招かれたのは石板の前だった。


「サイルさん、これは?」

「おや、知りませぬか?」


 店長、サイルさんが言うにこれは隣の国であるエドバンス法帝国の勇者が作り上げたものらしく、石板に触れた者のステータスを表示する。

 現実世界にもしステータスなどがあればHPが尽きれば即死なのか、攻撃力というのは腕力、キック力、握力など、どれを指すのかなど延々と考えた時期があった。

 しかし、これはあっちの世界での話。実際ちゃんとこの世界にはそれらの概念が存在する……らしい。

 そこら辺は後々ミーナに聞くとして。


「え!?こんなのがあったら教会に行く必要ないじゃない!」


 サイルさん曰く、今まではステータスを見るというのは全て教会の元でやられていたのが、この石板だけで出来るというのだ。

 まあ、確かに凄いのだろうが今俺が気になっているのは……


「その勇者って父さんですか?」


 そう、その隣国でこの石版を作ったというのが勇者だと言うのだから、俺の父さんと思うのも必然的であって、それに対しミーナは、


「いえ、それは違うと思うわ。海斗さんはまるマキシア公国の勇者。エドバンス法帝国にいるのは不自然よ。恐らく、海斗さんと来た他の研究者じゃないかしら」

「なるほど……」


 そうか、父さん以外の人も来ているんだった。その人達にも今後会うことになるんだろうな。


「しかし、この石版はまだ公式に取引されておらず、まだ、王族などの間でしか実物や情報は共有されていなかったのですが、市場に出る前にその勇者様は雲隠れしてしまったようでして……」


 雲隠れ……だと?


「それはどういうことなのかしら」

「文字通りです。突然姿を消してしまったのです。所々では死亡説なども流れているのですが、まだ確証は無いようで……」


 どうやら雲行きが悪くなってきたようだ。


「サイルさん、情報ありがとう。その件にはこの後あたってみるわ」

「左様ですか……失礼、話が逸れましたな。この石版はカルザ王より頂いたものです。私達の店を信用して下さりとても光栄でございました」

「なるほど、王家にのみ共有されたその実物をサイルさんが保存することになったのね」

「その通りです。ミーナ様、後から申し訳ないのですがこの石版は元々極秘の物でありますので上級貴族の方々にしか公表しておりません。できる限り口外はなさらぬようお願いします」

 「分かりました。善処します」

 「ありがとうございます。では……失礼お名前を伺うのを忘れておりました」


 確かに自己紹介をしていなかった。


「前宮聖斗です」

「桜坂匠っす」

「そうですか、ではセイト様からこの石版にお手をかざして下さい」

「はい」


 促されて出てきたのは所謂ホログラムと呼ばれる様なものでそこにはステータスが表示されていた。



 マエミヤ セイト 人族 職業(クラス)無職

 称号:《勇者》《長男》

 スキル:《兄弟》《合気》〔成長加速〕

 ステータス:[生命力]1000 [魔力]500

  [魔力耐性]1000

 魔細胞含有量:測定不能

 装備:異界の服


 天職:戦闘士、鍛冶師、隠密、弓術士



「なるほど?」


 うん、分かんないっすね。


「ふーん、って、サイルさん。何も映らないじゃない」

「え?映ってますよ」

「え?」


 ミーナさんには何故か見えていないようだ。


「失礼しました、その石版に映るものは本人の方にしか見えないよう設計されているようでして」


 随分とご丁寧な個人情報保護だな。


 「なるほどね。確かにステータスは本人にとってかなりの極秘情報だから当然の対策だとは思うけど、この石版を作った上に隠蔽もやってのけるなんて……流石ね」

 「はい……我々に富をもたらす存在ですな。しかし、その方々が間違った道へと行けば我々の未来を断ち切る刃にもなりかねません」


 少し重い空気が流れた。


 「では次にタクミ様お手をかざして下さい」

 「ういっす」


 話が一瞬止まったが、サイルさんがそのまま話を促した。


 「ほー、なるほど」

 「いや、何も分かって無いよな」

 「よくお分かりで」


 一瞬で俺と匠のボケツッコミが終わった。

 とりあえず俺も匠もステータスを確認出来た。


 「よし、これで2人ともできたわね」

 「おや、ミーナ様もそれにそちらの……赤い服の御方はよろしいので?」

 「ああ、そうね。私も久しぶりにステータスの更新がどうなってるかは確認した方がいいし……じゃあ先に愛士君からどうぞ」

 「おや、そうですか?では、お言葉に甘えて」


 愛士も俺たちと同様に手をかざして、ほう、と一言。


 「私は確認できました。ミーナさんも」

 「ええ、ありがとう」


 ミーナはステータスをみて、ふうん、と言った感じだった。

 ミーナさんは見たところ成長に即しての変化だけであまり変わりは無かったらしい。


 「さて!天職はどうだった?」

 「天職ですか?」


 天職と言うとだいたい転生してからの己に合った適性職みたいなものだと思い、聞いてみるとやはりそんな感じであった。ひとつ違うとすれば転生者に限らず、この世界全ての人に存在するらしい。


 「俺は4つあったんですけど……」

 「4つ!?」

 「え、あ、はい……」


 反応から察するに多いのだと思う。これで少な過ぎる時たらかなり恥ずかしいが……


 「4つは異例ね……普通は1つか2つなのだけど、多い人は3つあるわ4つはあまり聞いたことはないわね。かなり才能がある証拠ね」

 「え、才能!?そんな、自分はそんなにあるなんて考えたことは……」

 「いいえ、聖斗君には才能が必ずあるわ。この結果はね精霊によって出されているはずよ」

 「精霊?」


 精霊はこの世界中に存在していて、普通の人には目に見えない存在らしい。ステータスは精霊から見た俺たちの力量であり基本精霊の示すことは確実らしい。


 「そうなんですか……あ、そういえば俺の魔細胞?の含有量って言うのが測定不能って書いてあったんですけど」

 「測定不能?うーん、多分それは何かしらのスキルのせいかしら、ステータスはスキルに何かしらの影響を与えるから」

 「そうなんですか……お前らはどうなんだ?」

 「私は職業は拳闘士と幻術師と書いてありましたよ。魔力含有量は20パーセントでしたね」

 「え、まじかよ愛士含有量多くね?俺10パーセントだったぜ?あ、俺は隠密、双剣術士、魔導師だったぜ」

 「おや、匠くんの方が天職が多いじゃないですか。それに含有量が多いからと言っていいとも限りませんよ?」

 「お、それもそうだな」


 愛士と匠は天職が2個と3個か……それにしても匠が隠密とは柄に合わない職業だな。俺も人のことは言えないかもしれないが。


 「うん、2人とも標準の天職より同じか、それより多い数ね。流石勇者一行と言ったところかしら。じゃあ予定より早く職業が分かったからここで聖斗君と匠君の職業に合った服も買っちゃいましょうか」


 恐らく本当はさっきミーナさんが言っていた教会とやらに行く予定だったのだろう。


 「じゃあサイルさん、2人に服を見繕ってくれる?」

 「かしこまりました」


 そう言ってサイルさんは俺たちを連れて店の中を歩いていった。

聖斗の父海斗が勇者を務めている国を カルザニア王国→マキシア公国 に改めました。すいません

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ