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02 事情説明

やっと出来ました。改稿する可能性ありです。

 目を開けてそこにあった景色はさっきまであった薄暗い倉庫のそれでは無かった。そこは心が澄むような心地よい空気が流れた草原であった。


 これは玉川さんがさっき唱えた転移魔法?でどこぞの異世界に飛ばされたという認識でいいのか?


「大方それであってますよ」


 なんかさっきから匠に乗り移った“何か”さんに心を読まれているんだが……


 そんな事を考えながら振り向くとそこにはいると思っていた匠はおらず、その代わりに赤髪の青年が立っていた。背が俺と同じぐらいであるため、同年代程だろう。


「やあ、兄さん。はじめましてと言ったほうがいいかな?」

「……ッ!?」


 こいつが匠に乗り移ってた“何か”……!?


「おー、驚いてる驚いてる」


 ふいに、“何か”の後ろから顔を出してきた者がいた。


「匠!?」

「ウェーイ! 聖斗元気?」

「いや、元気? じゃねえだろ!? 心配したんだぞ!?」

「おーう、どうどうどう。落ち着こうぜ、ひとまず」

「この状況で落ち着けると思うか!?」

「いやー、授業怠けてても赤点取らない聖斗君であれば大丈夫かな~、と思ったんだけど」

「それ全然関係ないからな!?」

「冗談だよ、冗談」


 この状況下で冗談を言っている暇も無いだろ! と言いたい所だが(らち)が明かなそうなので俺は何も言わずに抑えておくことにした。


「はぁ、もう疲れるから説明を先にしてくれ。もう、色々と状況の変化が多すぎてついて行けん」

「はは。そうですよね兄さん」

「まずそのお前が俺を『兄さん』と呼ぶ理由を教えてくれないか!?」


 そう、今俺が聞きたいのはこいつがずっと俺のことを『兄さん』と呼んでくることだ。俺には弟がいた憶えは無い。しかし俺には中2以前の記憶が無い。弟がいたとしてもおかしくは無い


「私は兄さんの一部だからですよ」

「…………へ?」


 今日は驚くべきことのオンパレードだとは思ってはいたが今回は予想外の返答過ぎて驚きというよりは思考停止と言ったほうが正しいだろう。


「それは……ドッペルゲンガー的な?」


 我ながら中々に冷静に返答できたと思う。一応焦りは見せないようにはした、頑張って。


「うーん、それは違うかな?」

「詳しく説明すると、愛士(いとし)君はあなたの感情のうちの愛を(つかさど)る部分なのよ」


 さっきまで黙っていた玉川さんが口を開いた。しかしそんな事を考えている場合ではない。今の一文が俺の思考をかなり惑わせた。まず『愛士君』というフレーズ。


 なるほど、こいつは愛士という名前なのか。まあそこはいいだろう。問題はもうひとつのは方だ。愛を司る?……何それ? ただただ率直な意味不明なのですが


「まあ、私はあなたの感情の一つであって他にも複数いますから、第二の自分と定義されるドッペルゲンガーという表現は間違っていますね」


 ちょーっと待て、まーたひとつ大切な事を言われた気がする。『複数いますから』? こいつみたいのが他にもいるのか? それも複数?状況に一切ついてけない……


「ひとまず、色々なことは歩きながら話しましょう」


 そんなこんなで俺たちは歩き始めた。


「まずは、ちゃんとした自己紹介よね!私はあっちでは玉川晴海って名乗ってたけど本名はミーナ・ウォルテーリア・パールっていうの。それでこっちが―」

「―前宮 愛士(まえみや いとし)です。聖斗兄さんの一部であり弟です。よろしくお願いします」

「桜坂 匠だぜ! 趣味はー」

「いや、お前はいいから」

「えー、いいじゃんか親友!」


 ここはあえてスルーしておく。


「前宮 聖斗…です?えと、まあ、ひとまずよろしく」


 そこで玉川さん改めミーナが話を切り出してくる。


「さて!説明しようかな?」

「そうですね。どこから説明しましょうか?」

「まず、聖斗の親父さん達の話じゃね?」

「……俺の父さん達?」


 何故このことに父さん達が関係あるのか全く検討がつかないのだが……


「その通りですね、私達の父である前宮 海斗(まえみや かいと)がこの事態の原因なのですから」

「じゃあ、海斗さんの事から話そうかな?」


 そこから、俺はこの世界に来た経緯を聞いた。俺の父と母は同じ研究所の科学者だったらしく、父達はある研究をしていたそうだ。その研究とは何だったのかというと、


 それは生物兵器の開発だった。その開発されていた兵器の名前は


  "前宮 聖斗"


 そう、本人達の息子だった。

 なんでもその兵器は「人間の感情を精神的な物から肉体的な物に変換し、莫大な破壊力を実現する」ということを目指していたそうだ。

 息子を実験に使ったと聞けば誰もが怒りを覚えそうだけど、覚えてないからそこまで怒りは湧いてこないかな……


「そして海斗さんは聖斗君の感情の具現化に成功したの。でも、それによって原因不明のシステムトラブルが起きたの」

「そう。そのシステムトラブルによって研究所は全壊。所員のほとんどは死亡。しかし、奇跡的に私達の父達と匠さんのお父様を含む5人が即死をまぬがれました」

「ちょっと待て! なんでそこに匠の父さんがいるんだ?」

「あっ、俺の親父もお前の親父さん達と働いてたんだわ」

「えっ、まじで!?」


 そういう大事な事は先に言っておけよ、と心の中で文句を言いつつ続きの話を促す。


「でも、即死はしないと言っても状況は絶望的。聖斗君の父さん達は死を覚悟したのよ」

「でも、その瞬間目の前が真っ白になった」

「そして、気づけばこの世界の王宮にいたのです」

「えっ? それは父さん達が召喚されたって事か?」

「その通りよ」


 父さん達が召喚された? それってもしかして……


 確証は無いが、恐る恐る質問してみる。


「それって……もしかして父さん達が勇者だったりする?」

「ご慧眼に感服致しますよ、兄さん」

「ッ!」

「えっ!? なんで海斗さんが勇者だって分かったの!?」

「え、いや……召喚されるって言えば勇者かなーと……」

 

 確かに召喚されたってだけで勇者と洞察出来るのは確かにちょっとすごい? いや、やばいか。はぁ、異世界転移モノのラノベ読み過ぎだな……


「へぇー、すごいわね!」

「いや、そんな感心することじゃない気が……」

「まあ、その話は置いておいて話の続きをしましょう」


 愛士(いつの間にか名前で呼んでた)がめちゃくちゃスマートに話を逸らしてくれた。

 愛士ナイスッ!、と心の中で声援を送りながら話を聞く。


「こうして海斗さん達はこの世界に来て死を免れたの」

「そうなんだ……良かった父さん達は生きていたんだな!」

「いえ、この話にはまだ続きがあります」

「死を免れたってのは1人を除いてなんだよ」

「……?」

「その1人というのは……」

「私達の母、前宮 鈴音(まえみや すずね)なのです」

「そうか……」


 そうか……父さんは生きてても母さんは生きてないのか……。人の運命ってのは残酷だな、父さんが生きているなら母さんも生きてて欲しかった……。これは確実にわがままだ。今まで生きていなかったと思っていた人が2人いて片方だけでも生きていたんだ。でも、やっぱり二人とも生きていて欲しかった


「おーい、聖斗ー、お前人の話は最後まで聞け。まだ話は終わってないぞー。何のために俺たちがこっちに来たと思ってんだ」

「……は?」


 確かにその通りだ。父さんが生きてると知らせるだけならば俺がこの世界に来る必要は無いはずだ


「そう、聖斗君には勇者になってこの世界を救って欲しいの。お母さん共々、ね」

「つまり、兄さんは我々の母、前宮 鈴音を救う為にこの世界に来たのです」

「俺が……母さんを」


 母さん……顔も覚えていない……父さんもそうだけど、でも、それだとしても……会いたい……これからの人生でその事ばかり引っかかって生きていくのは出来ればしたくない。それにもうここに、父さん達がいる場所に、来てしまったんだ。もうこれは運命なのだろう。


「わかった。母さんを救えるならやってみるよ!」

「ええ、その通りですね。兄さんであればそう答えてくれると信じていました」

「ちょっと愛士君! それ私が言いたかったセリフ! あっ、私も信じてたよ!」

「フゥー、今のセリフかっこよかったぜ、聖斗ー」


 それぞれが感想を述べている。


 まあ、匠はスルーですな。


「とりあえず、装備を整えないと世界を救うも何も無いわよ!」

「そうですね、城門も見えてきたことですし」

「城門?」

「ほら、あそこだ」


 匠が指を指した方向に確かに城門が見えた。城門から左右に伸びる城壁はおそらく50メートルはあるだろう。


「俺達が向かっていたのはあそこなのか?」

「その通りよ!まずはあそこに言って装備を整えて国王様に会いに行くわ」

「こっ、国王!?」


 えっ!まじっすか!こういうのって勇者としての功績をたててから行くもんじゃないの!?


「国王様に会って聖斗君が来たことを伝えてから出発する予定よ!」

「へ、へぇー……」


 いきなり国王の御前って……俺大丈夫かな……


「その点は大丈夫ですよ。基本ミーナさんの真似をしていればいいのですから」

「えっ?」

「ふふん!これでも私はこの国の5大貴族に属してるんですからね!」

「はぁ!?」


 嘘だろ?5大貴族とか絶対めっちゃ偉い人やん!


「えっ!そうだったんすか!玉川さん!」

「って、お前は知らなかったのかよ!?」

「いやー、初耳ですわ」

「えっ!?言ってなかったっけ?」

「あははー、忘れちゃいましたね」


 駄目だ、匠の記憶力の乏しさを忘れていた。だからいつも暗記系の小テストで0点なんだった


「まあいいっすよ、早く門に向かいましょうや」

「そ、そうね」


 その時聖斗の頭には国の名前がなんなのかという疑問が生まれていた。


「玉川さん」

「その呼び方はこの世界ではやめて。私の本名はミーナ・ウォルテーリア・パールよ。これからはミーナって呼んで。あと、さんもいらないわよ」


 クラスのアイドル玉川さんをさん付けせずに呼ぶのはちょっと気が引けるが、本人がいいと言っているのでお言葉に甘えるとしよう。


「じゃあ、ミーナ。この国の名前ってなんて言うの?」

「そういえば、言ってなかったね。あ、ちょっと待ってテレビの説明っぽくやってみるー。おほん!」


 1度咳払いをはさんだ後、ミーナは雄弁に語り始めた。


「ここはカルザニア王国。神の血が流れているとされる超がつくほど長命の人間、カルザ陛下のもとに統治された国。そしてこれからくぐる門の先にある都市はカルザニア王国の首都、メゼル。ようこそ、カルザニア王国へ!カルザニア王国の四大貴族の1つパール家の代表として歓迎するわ!」


 それはミーナの通る声によるテレビのVTRのような国の紹介であった。しかし、俺は不覚にもこんな事を思ってしまった。


 め、めっちゃかわええ……


 しかし、この事は未来永劫語られる事は無いだろう。

読んで下さりありがとうございました。やっぱり書くのが遅いのでかなり間があくと思います。

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