マーコット姉さんと領主の奥様
マーコット姉さんが慌ただしく出て行った後も、お母さんは特別お迎えの準備をする訳でもなく、日常を過ごしていた。
大丈夫なのかな、と思ったが、3歳の俺が口出しする事でもないかと思い、キャサリンの相手をしたりしてた。
『大変だ!
奥様がいらっしゃるぞ!!』
お父さんが駆け込んできた。
訪問の先触れがお父さんの方に行ったらしい。
『落ち着いて下さいな、あなた。』
『これが、落ち着いてられるか!
粗相の無いようにお出迎えせねば!!
本当ならば、一ヶ月は前に先触れを寄越す筈なのに、何でこんなに急なんだ?
一体、何をしにおいでになるのか?
見習いに出している子供たちが何かやらかしたのか?
それとも、この村に何か嫌疑をかけられたのか?
ああ!
どうすれば良いのか?!』
『落ち着いて下さい。
奥様は多分、【パッチワーク】や【ホットケーキ】を検分にいらっしゃるのですよ。』
『ハァッ?!
その様な事でわざわざいらっしゃるのか?
呼び付ければ直ぐにでも参上するのだぞ?』
『男の方には分かりませんかしらね。
ああ、ご到着のようですわ。
お出迎えいたしましょう。』
『突然の訪問、許して下さいな。
マーコットに聞いて、いてもたってもいられなかったのよ。
これが、【ママゴトセット】ね。
見事なものね。
この【パッチワーク】も素晴らしいわ!』
『有り難うございます。
【パッチワーク】はこの村の特産とすべく、事業にのり出しましたので、こちらもご覧下さい。』
『あら、まあ、とても素敵ね。
一段と洗練された模様になって、王都の貴族たちも喜びそうだわ。
もっと技術が磨かれたなら、王妃様に献上も検討したいわね。
詳しい打ち合わせをいたしましょうか。』
『光栄でございます。
では、別室にお茶の用意を致しましたので、そちらでいかがでしょうか?』
お母さんと奥様が部屋を移る。
お父さんは話に付いて行けないようだが、取りあえず側にひかえていて、二人に付いて行った。
『やっぱり、奥様、気にいられたわね!
お連れして正解だったわ!!』
マーコット姉さんが一人ほくそ笑んでいる。
『これが【ホットケーキ】!!
素晴らしいわ。!!!』
奥様の声が部屋の中から聞こえてきた。
美味しいモノの前では、上品さは忘れるらしい。




