【007】門(ゲート)
俺とルビアは支度を整え、学校へと向かっていた。
「そうだ……アキラ、あなた『魔法』は使えるの?」
ふいにルビアが尋ねた。
「え? あ、うん、どうだろう…………どうして?」
「学校では魔法の授業とかもあるから、もし、使えない場合、授業の単位が取れないの。つまり…………進級できないってことよ」
「進級できないとどうなるの?」
「そんなの決まってるじゃない…………退学よ」
「えっ? 退学っ?!」
「……まあ、赤点を取っても補講があるからそれを受ければいいのだけれど…………でも、そもそも魔法が使えなかったら結局は補講でも単位が取れないから結果、退学になっちゃうわよ」
「うーん……」
どうなんだろう……一応、『基本的身体能力の向上』をしてもらったから大丈夫だとは思うが…………その辺は一度神様に聞いてみよう。
「まあ、もし、赤点を取るようなことがあれば私が魔法の使い方を教えてあげるわ。ちなみに記憶を失う前のアキラなら最低限ではあるけれど魔法は使えていたから何とかなると思うわ。まっ! 私も教えてがあげるから心配ないわよ」
「よ、よろしくお願いします」
そんなことをルビアと話をしながら歩いていると、原っぱのような場所に門番のいる『詰め所』みたいなものが見えてきた。
「あの建物の中には学校のある『王都』へと繋がってる『門』があるのよ」
「『門』?」
「そっ。その『門』を潜って王都へ出るの。そこから歩きで20分ほどすれば学校へ着くわ」
「ふーん、そうなんだ。あれ? でも、それだったらこんな朝早く出発しなくてもよかったんじゃ……だって学校は九時からなんでしょ?」
「それはね、私たちのいるこの土地……農奴民地区から王都はけっこうな距離がある為よ。『門』は潜って外に出るのは一瞬なのだけれど距離によって時差が発生するの」
「時差?」
「そう。ちなみに、この農奴民地区から王都までだとその時差はだいたい『一時間』ほどあるのよ」
「い、一時間?! そ、そんなに時間が経ってしまうんだ」
「そっ! だから家から私たち農奴民地区出身の学生は、家から早く出ないと間に合わないってこと」
「なるほど……」
「まあ、でも、この『門』を使わないで王都に行くとなったら軽く『五時間』はかかるからね、この場所って」
「!?…………そ、そんなにっ?!」
「そっ! だから、一時間の時差なんて言っても体感では一瞬なんだから全然ありがたい話ってことよ」
「確かに、そうだな……」
門の入口と出口で『時差』が生まれるなんて…………つまり『時差のあるどこ○もドア』ということか。
そうこうしている内に、俺たちはその『門』のところまで来ていた。
「ここで守衛さんに『学生証』を提示するのよ。アキラの学生証は私が持っているから渡しとくわね」
そう言ってルビアが俺の学生証を手渡した。俺とルビアは守衛さんに学生証を提示し、詰め所の中へ入っていく。
「これが…………『門』」
詰め所の中はそんな広くなく、周囲は窓もないどころか置物や観葉植物のようなものも何もなく、中心に石造りの『門』がただあるだけだった。
「な、なんか殺風景だな……」
「まあ、移動するだけの部屋だからじゃない? 特に気にはしたことないけど…………さっ、行くわよ」
そう言うと、ルビアが俺の手を握りグイグイと『門』の中へと進んでいった。『門』を潜る時、一瞬激しい光に立ちくらみしそうになった…………が、しばらくすると光も薄れ視界が復活してきた。すると……
「す、すごい!! これがこの世界の『街』…………こんなに栄えているんだ!!!」
今、俺の目の前には先ほどいた森や野原ではなく大きな『街』がそこにあった。大人や学生、子供など多くの人々が往来している。
「やっぱり『王都』のことも…………まあ、覚えてないか」
ルビアが苦笑いをした。
「あ、う、うん……」
「そうだ! まだ学校まで少し時間あるからあそこの『王都案内スクリーン』を触ってみるといいよ。そこで王都全体がいろいろと見れるから」
そう言ってルビアが指差した方向を見ると、大きな柱があり、そこに街上空からのマップのようなものが映し出された『大型スクリーン』が埋め込まれてあった。俺は早速、足早にそのスクリーンへと向かった。
「おお! すげー!!」
そのスクリーンは手で触れると触れた場所がクローズアップするような動きをした。しかも地球にいたときのスマートフォンの操作と同じように拡大縮小ができ、さらにはグー○ルマップのように3D視点でその場所からいろいろと動かすこともできる。それにしても街並みも人も地球とさほど変わらない感じということに少し意外だ。てっきり『異世界』というと『中世ヨーロッパ風』というイメージでもっと科学力が遅れている感じだったのだが、まさか自分が住んでいた日本とさほど変わらないレベルだなんて……むしろ、物珍しさで言うと『異世界』のほうが上のように思える。
俺はこの大型スクリーンだけでなく、街並みや人、建物をマジマジと食い入るように見ていた。
「ふふ……なんかアキラ見ていると小さい頃初めてお父さんと王都に来たときを思い出すわ…………きっと、今のアキラはあの小さい頃と同じような感動をしているのね」
俺が大型スクリーンではしゃいでいる隣ではルビアが感慨に耽っていたようだが当然俺は気づいていなかった。まあ、テンションアゲアゲだったので(死語)。さて、この『王都案内スクリーン』を一通り触って操作を理解した後、俺はまず『王都』がどういう街の構造をしているのか知りたかったので上空地図を見てみた。すると、この王都…………まず街全体が高い外壁に囲まれていることがわかった。
「『城塞都市』……といったところか」
そして、そこから中心街へクローズアップしていくと、街の建物が見えてくるのだが、その建物ひとつひとつが何と『コンクリート』のようなものでできている。しかも驚いたことに『高層ビル』がいくつもあった。
「まるで日本の東京みたいな街並みだな……」
そうして俺が夢中になってスクリーンを触っていると横から、
「まあ、ここは『街』というよりも『王都』だからね。とりわけ、他の街よりも洗練されている感じよ」
と、ルビアが追加情報を教えてくれた。
「そういえば王都……ていうくらいだからこの国には『王様』がいるってこと?」
「そうよ。国の名前は『カセドラ王国』。見て……この先にある『お城』があるでしょ? あれが国王の住むお城『ロイヤルパレス』で、そして国王の名前が『ライドネル・オーグリット・カセドラ国王』……皆、愛情と尊敬、そして畏怖の念を込めて『ライドネル王』と呼んでいるのよ」
「カセドラ王国……ロイヤルパレス……ライドネル王……」
ルビアが説明する国の話や国王の話を聞くと、改めて、自分は今、本当に異世界にいるんだということを実感した。
更新しました。
イラストが進まない……。でも頑張るっ!




