【006】夜明け前……そして覚悟
――――朝。
異世界リハビリライフの一日が始まる。
俺は昨夜早いうちに寝たためか夜明け前に目が覚めた。なので、フラッと少し外に出てみた。
「ふあぁぁあ、こんな朝早く起きるのなんて…………何年ぶりだろ」
俺は大きく伸びをしながら地球の頃を思い出していた。地球にいた頃、次の日が来て仕事に行くのが嫌なのを理由に夜更かしの毎日を送っていた。まあ、誰も『明日』から逃がれることなんてできないのでただの問題の先延ばしなのだが………………まあ、そのくらい当時の俺は精神的に参っていたのだ。まあ、それにしても、そんな精神状態で職場に通っていた当時の俺を少しは褒めてあげたい。
しかし、まあ、この世界は地球と違って本当に空気が澄んでて美味しい。もしかしたら、地球とは違って石油といった化石燃料なんて使っていないからこれだけ空気が綺麗なのだろう…………俺はそんなことを考えながら、夜明け前の朝靄の中、小鳥のさえずりを聞きつつ深呼吸して心地よい空気に身を委ねていた。
「本当に異世界に来たんだな……俺。自殺して死んだはずがまさかこんなことになるなんて……人生、わからないもんだ」
そう言いながら俺は一人、フフッと苦笑していると、
「ふあぁぁあぁ……な~に、朝からニヤニヤしてんのよ」
後ろから姉のルビアが大欠伸をしながら俺のほうに近づいてきた。
「おはよ、ルビア」
「おふぁよ…………ふぁあ……相変わらず早いわね、アキラは」
「えっ? 俺って、いつもこんな早起きだったの?」
「あ、そうか、ごめん。…………うん、アキラ、あなたはいつもこんな夜明け前には起きていたのよ。いつもの習慣はまだ身体が覚えていたってことかもね」
なるほど。この今日の早起きは元のアキラの習慣だったってわけか。俺とはあまりに違う習慣だが、この身体に染み付いた癖はそのまま継承されているということか。あとは……………………フッ、若さか。
俺は改めて、自分が転生した身体が『十六歳』の身体ということを実感した。
「な~に、ブツブツ言ってんの! とりあえず、歯磨いてきなさい。一時間後には出発するわよ」
「一時間後に出発? どこに?」
「どこにって…………学校よ。私たちは学生なんですから。私は高校二年生、アキラは今年入学した一年生なのよ」
「あ、そうか、学校…………か」
俺の中で不安の固まりがざわつきだしたので、つい、顔を伏せた。
「……やっぱり、学校、行くの嫌?」
ルビアが俺の気持ちを察して優しい口調で話しかける。
「ま、まあ、ね。でも…………」
そう――俺は転生前のアキラがイジメられて自殺したことを聞いている。だから、正直、学校に行くのは嫌だった…………が、そんなことをしても何の解決にもならないし、それに元々のアキラの無念は俺が晴らしてあげたいと神様の前でも誓った。だから、
「大丈夫。俺は学校に行くよ。これからはもう…………前を向いて生きていくことに決めたんだ!」
俺は思いっきりの笑顔でルビアの問いに答えた。
「ア、アキラ…………」
ルビアが俺の言葉を聞いてすごく驚いた顔をしていた。しかし、すぐに笑顔になり、
「すごいわ、アキラ! お姉ちゃん、あなたのこと誇りに思うわ。立派よ、アキラ!」
そう言うとルビアは俺のことを…………抱きしめた。
「ル、ルビアっ?!」
咄嗟のことで俺はおろおろとする。
「…………私が守ってあげるからね、アキラ」
ルビアが耳元でそっと優しく囁いた。
「うん。ありがとう、姉さん」
何というか、このルビアなり、父親のモレーさんなり、このアキラの家族は本当にお互いを大切にしているんだな、ということがよくわかる。地球にいた頃、俺の両親はお互いが話すことなんてことはほとんどなかったし、また俺に対しても二人は関心を示すことさえなかった。だから、ルビアやモレーさんと話していると、とても新鮮で暖かい気持ちになると同時に生前では望めなかったことが今、目の前で普通に起きていることに少し戸惑いを感じてしまう…………まあ、贅沢な悩みである。あと、兄弟・姉妹がいなかった一人っ子の俺にとってルビアのような『お姉さん』という存在がいることもまたとてもうれしかった。
朝靄が明け始めた頃、俺とルビアは家に戻り学校へ行く準備をした。
更新、更新、更新んん~~~~~~!!
ちょっと頑張った(エッヘン!)