【004】転生したらガラスの十代だった件
≪今回、君が転生したこの身体はこの異世界で生きていた十六歳の少年のものだ。そして、その少年もまた…………自殺者だ≫
「えっ?!」
自分だって自殺をして今ここにいるくせに、他人の自殺に素直に驚いていた。
「十六歳で自殺?」
≪うむ。原因は同級生や上級生からのイジメらしい。まあ、よくある事例と言えばそれまでだが、何にしても気持ちの良くない話じゃよ≫
「そんな……」
俺は、十六歳で自殺した少年のことを考えると言葉に詰まった。十六歳で自殺なんて……どれだけ酷いイジメにあっていたのだろう。どれだけ傷つけられたのだろう。考えるだけで胸糞悪くなる。
しかし、それと同時にあることにアキラは気づいた。
「んっ? 待てよ? その少年の身体に自分が転生しているということは………………俺がその『いじめられる側』になったってこと?!」
≪そういうことじゃ≫
「ま、待って、待って。確かにそんなイジメをする奴は胸糞悪いしやっつけたいと思うよ? だけど、俺、自慢じゃないけどケンカとかしたことないし……それどころか人を殴ったことさえないから!!!」
≪ふむ。じゃあ逃げるのか?≫
「えっ?」
≪その無念の少年の身体を使って…………逃げるのか?≫
「そ、そんな、そんな言い方って…………」
≪じゃが事実じゃろ?≫
「…………そ、それは」
しばらく沈黙が続いた……………………が、すぐに、
≪わっはっは……! 冗談じゃよ、冗談。心配することはない。もう忘れたのか?…………能力の底上げ≫
「あっ! で、でも、それ以上の強い奴だったら?」
≪ふっ。まあ、実際に試してみることじゃな。まあ、必要になればワシも声でアドバイスを掛けてやるからの。心配するでない≫
「わ、わかりました……本当にお願いしますね。本当、俺、ケンカとかダメなんで……」
≪わーはっはっは。いや~楽しみじゃよ、その時が来るのがな≫
「と、とりあえず、俺は、これからどうすればいいんですか?」
≪心配せずとも、これからどうすればいいかはすぐにわかる≫
「えっ? どういう……」
その時、女性の必死に叫ぶ声が聞こえた。
「アキラ!? アキラーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!! どこにいるの!? アキラーーーー」
「も、もしかして、俺のこと、呼んでる?」
≪うむ。お前のこの世界での名は『アキラ・ファドライド・ビクトリアス』という名じゃ≫
「この世界でも『アキラ』って日本人っぽい名前の人いるんだ?」
≪まあな。ワシもよくわからんがそういうもんなのじゃろう……≫
「何で、神様のあんたがわからないんだよ?!」
≪何を言うておる。お前みたいな自殺者の魂は五万といるのじゃぞ。いちいち各世界のことを知り尽くす必要もなかろうに≫
「あ、あんた、以外と雑な神様だな……意外だよ」
≪ふん。神なんてこんなもんじゃ。それよりも、さあ、あの娘に返事してあげるがよい。ワシはしばらく消えるからあとは自分で何とかするんじゃぞ。ではさらばじゃ!≫
「えっ?! も、もう行くんですか? ちょっと……俺、どうすれば……」
俺は、神様に消えないよう必死に問いかけたがそんなのお構いなしというがごとく、フッと姿を消してしまった。
≪あ! あと、君には前の少年の記憶とかないはずだから、その辺は適当に見繕っておくように。それじゃの!≫
「いや、消えてなかったのかよ! あっ……て言うか、やっぱ消えないで~~~~~!!!」
今度こそ、本当に消えてしまった。
「そんな消える直前に一番大事な情報をサラッと言うなよ~~、もっと早い段階で言ってくれよ~~~~!!!」
というアキラの叫びは空しくただ空に響くだけだった……………………と思ったが、
「アキラ! みつけた! やっと……やっとみつけたわよ、アキラ!!!」
「え? あ、あ、はい……アキラです」
俺の神様への叫びは、その女の子に俺という存在を察知させるハメとなってしまった。
俺の名前を叫んでいたその薄青の髪色で少し短めのセミロングの少女は年齢がどのくらいなのかはわからないがパッと見、年齢よりも童顔のように感じる。あと、おっぱいが豊かで素晴らしい。
そんな俺を見つけると、猛然と俺に向かって走ってきた。
「アキラーーーーー!!!!!!!」
見た感じ、自分よりも年下のような雰囲気があったことをいち早く察した俺は、
「い、妹よーーーーーー!!!!!」
と、異世界に来たばかりということを感じさせない見事の対応で………………、
「アキラーー……て、誰が妹やねん!!」
スタイリッシュな対応できませんでした。転生早々『エルボースマッシュ』頂きました。
「おぅふっ……!!」
軽く、二・三メートルは吹っ飛ばされた。そこまで吹っ飛ばされるほどであれば普通なら気絶もんだが、
(あれ? あんなに吹っ飛ばされたのにあんまり……………………痛くない?)
どうやら神様がくれた『身体能力の向上』が早くも役に立ったようだ。
「ア、アキラ、あなたそんなに濡れて……。!? ま、まさか、自殺しようとしていたわけじゃないでしょうね? それに……お姉ちゃんに向かって『妹よ』だなんて……私が一番嫌うワードを出すなんて、アキラ、あなたもしかして……記憶が……?」
なんだか、この女の子が勝手に妄想を始めたのだが、まあ、『自殺未遂をして溺れかけたら記憶喪失になってた系』で進めていこうと思っていたので、それはそれで好都合だったので…………乗っかった。
「う、うん。お、俺、自分の名前以外、全部の記憶が無くなっちゃったみたい……はは」
「ア、アキラ…………自分のことを『俺』だなんて……昨日までのあなたじゃ、考えられないわ……ふふ」
そう言うと、姉と称する自分よりも年下っぽい女の子はギュッと俺を抱きしめ…………泣き崩れた。
「でも、よかった…………本当によかった……無事で」
その娘は、涙をいっぱい流し、力いっぱい抱きしめてくれた。なんだか、すごく暖かかった。
「ご、ごめん……姉さん、心配掛けて…………。本当に、この年で心配ばっかかけて、ごめん」
「この年でって……あなた、まだ十六歳でしょ? バカね……」
「う、うん…………そうだったね、ごめん」
ここでの俺は『アキラ・ファドライド・ビクトリアス』ではあるが、自分が地球で自殺する時に思ったあの『両親への呵責』がフラッシュバックしたからなのか、つい、この子にそのときの感情をぶつけていた。
どうやら、ここから俺の『異世界リハビリライフ』が始まるらしい。
さて、どうなることやら……不安と期待が入り混じる船出であった。
更新しました~。
ここからはすこし更新遅くなるかも~、かも~、かも~ん(意味不明)。