【018】報告と決起集会
「こんな理不尽な世界どう考えたっておかしいだろっ! 俺がこの世界の『貴族のシステム』をぶっ壊す!」
と、勢いで言ってみたものの何をどうしたらいいのかわからない、という俺のオロオロぶりを見たルビアが、
「あんたバカなの? やっぱバカなの?」
と、肩を落として呆れ顔でそう言った。
「とりあえずあんたの事情はわかったわ。だけど貴族に楯突くどころか『貴族のシステム』自体を壊すってそう簡単じゃないし、まあ…………無理よ」
「そ、そんなことわからないじゃないかー、ブー、ブー!!」
と、俺がブーブー言うとすぐに殴られた。
「……はー。まあ、あんたはこの世界に来たばっかりって言うからまずはその辺の話からしていくわね」
とルビアがため息まじりで説明を始めようとした。すると、
バンっ!!
「「「見つけたー!!」」」
モコ、サヤ、キーマの三人が勢いよく扉を開け入ってきた。
三人はルビア同様、俺を追っかけてきてくれたのだがルビアよりも一歩出遅れたらしく、その間に他の生徒の混乱に巻き込まれ遅れてしまったとのこと。
「あの後、生徒たちはガルア先輩たちの周囲に集まってくるわ、その騒ぎを聞きつけて先生たちが駆け込んでくるわで大変だったんだからっ!」
とはモコの弁。
「ご、ごめん……」
俺は三人に突然あんなことになったことを謝った。
三人には俺が転生者であることを言うかどうか迷っていた…………が、そんな迷いをルビアがすぐに解決した。
「あ、ちなみにこいつ弟だけど弟じゃないから。あと、この世界の人間でもないから」
「「「……はっ?」」」
ルビアがすぐにバラした。
とりあえず、ルビアが端折って説明していたので何がどういうことなのか混乱している三人に俺は改めて『別の世界からこの世界に来たこと』『アキラ・ファドライド・ビクトリアスに転生したこと』『神様との約束』といった説明を行った。
一通り説明した後、ルビアには『いや、すぐ言う前に確認くらいしろよ~』と俺が注意すると、
「大丈夫よ。この子達はさっきあなたを助けるって言ってくれてたでしょ? そんな、これからやっていく仲間に隠し事はダメよ」
と、ルビアが正論を持って答える。
ぐうの音も出ないほどの正論であった。
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「そうか。アっくんは昔のアっくんじゃないんだ?」
「あ、ああ」
「まあでもそう言われればこれまでの言動や行動にも納得がいきました。話してくれてありがとうございます」
「い、いえ……」
「中身、四十のおっさんとは!」
「キーマ、そこかよっ!」
三人とも俺の話を聞いて当然驚いてはいたが、誰も疑うことはなかった。
ただ、疑うことはなかったが三人が三人、顎に手を当ていろいろと熟考していた。何を考えていたのだろう?
まあ、これまでの言動や行動が昨日と今日で全く違っていることもあり、三人とも俺のことを必要以上に心配していたところもあったのでそういう面では正体を明かしてよかったと思う。
そうして三人に一通り事情を説明し状況を飲み込めた後、改めてルビアが声を掛けた。
「さて! これで全員が状況を把握できたわね。それじゃあ、これから作戦会議を行います」
「「「「作戦会議?」」」」
「そうです。作戦会議です。ぶっちゃけ、今、私やアキラ……というより我が家自体がかなり危ない状況にあります。はっきり言って超やばいです。そんな超やばい私やアキラに貴族の御三方は協力してくれると言ってくれましたが、それは本当に信じてもよろしいのでしょうか?」
「も、もちろんです、ルビアさん! 僕がルビアさんやアキラを守りますっ!!」
「はい。私もウソ偽りはありません。アキラくんやルビアさんに協力します」
「モコももちろんアっくんのために協力しますよ!」
「み、みんな……」
俺は三人に感動した。友達っていいもんだな~。
以前の俺にはこんな友人はいなかったので少しばかりうれしかった。
「ありがとうございます。貴族の御三方の協力は非常にありがたいです。ちなみに私もアキラも父もイシュタット家と事を構えるつもりです。おそらくイシュタット家とつながりのある王族の方が入り、いくらこっちに『正義』があったとしても私たちは糾弾され捕らわれることになるでしょう。もしかしたらあなたたちも捕らわれるかもしれません……それでもあなたたち三人は私たちに協力してくれるのですか?」
ルビアが俺が三人に感動している横で、もう一度、三人に覚悟を確認した。
「はい。もちろんです。わたくし、キーマ・グランドレイス・オライオンはオライオン家のキーマとしても個人のキーマとしてもあなた方、農奴民であるビクトリアス家に協力致します」
キーマが右こぶしを左胸に当て、改めて俺とルビアに協力することを誓った。おそらく、キーマのこの一連の所作はこの国の騎士や貴族の行う正式なものなんだろう。それだけ本気だ、ということが伝わる。
「無論です。わたくしサヤ・ベルダイト・カザキリもカザキリ家としてもあなた方『正義』に協力します」
サヤもまたキーマと同じように右こぶしを左胸に当てて答える。
「当たり前でしょ? だって、アっくんは私の恋人なんだから! そんな恋人の危機に立ち上がらないような軟弱な者はイーデンベルグ家にはいませんっ! わたくしモコ・マイヨール・イーデンベルグも当然、アっくんに全面的に協力するよっ! あっ……あとルビアさんにも(てへぺろ)」
モコも二人と同じ所作で舌を出しながら答えた。
「ありがとうございます」
ルビアが三人に対して、右こぶしを左胸に当てお辞儀をする。俺もそれを見て同じような所作でお辞儀をした。
「さっ! これで私たちは正式に運命共同体ってわけね! これからよろしくねっ!」
「「「はい、よろしくお願いします!」」」
一通り、あいさつと覚悟についての話をした後、ルビアは今後についての話を始めた。
「じゃあ、とりあえず今後のことなんだけど、おそらくガルアは仲間を増員してアキラを襲うと思うの。本当なら私がそれを阻止したいのだけれど一年と二年では校舎が離れていて私はあまりアキラの近くに居られないから三人にアキラのことをお願いしたいの」
「もちろん、お安い御用です!」
と、元気よくキーマ。
「それは大丈夫ですが問題は……放課後の……」
と、何やら熟考しながらサヤ。
「うん、そうね。放課後……とりわけ家族に対して大人のほうからの攻撃もあると思うけど、その辺はこっちで何とかするわ」
と、サヤの心配を汲み取りすぐに答えるルビア。
「ルビアさん。もし、大人の攻撃で危なそうになったら私たちの名前を出してくださいね。少しは抑止力になるかもですから」
と、ちょっと上から目線気味だが屈託のない笑顔で告げるモコ。
「ありがと、モコちゃん」
「いえいえ。これは『貸し』ですから。それに先輩には何としてでもこの学校に残ってもらい、今年の『学院祭』で『学院マドンナ』を賭けて勝負したいので」
と、ニヤニヤしながら答えるモコ。
「なるほど……それなら遠慮なくあなたたちの『名前』、使わせてもらうわ。ありがとう」
ルビアは改めて三人にお礼の挨拶をした。
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「それにしても……」
と、キーマ。
「さっき食堂で見たアキラのあの力は何なんだ?」
キーマは『みんなが聞きたがっている話ランキング一位』の事柄に触れてきた。
「アキラ……あの力は何なの? 以前のアキラにはそんな腕力はなかったわ。あなたってもしかして格闘術か何かやってるの?」
「あ、いや、そういうわけじゃないけど……でも、ちょっと身体を強化しているというか、させてもらったというか……」
俺は『神様に力を付与してもらった』ことをやんわりと説明した。
「へー、道理で。だから、あんな食堂での腕力や教室での身のこなしだったんだな。納得したよ」
「どういうこと?」
「俺は格闘術を小さい頃からやっていて『三級』の資格を持っているが、アキラは速かったけど身のこなしは素人のような動きだったからさ」
「ああ、なるほど」
要するにキーマは、俺の動きは型を習った動きではなく、あくまでよく見て速く動くという『身体能力だけの動きだ』ということを言っていた。
なるほど。さすが経験者。
「実はその事なんだけど、俺は前にいた世界では格闘術を習ったことはおろかケンカもしたことがない」
「えっ? マジかよ!」
「ああ。だからこの身体能力だけで戦うよりも格闘術を習っておきたいんだ。だから、キーマに教えてほしい……どうかな?」
「もちろんいいぜっ! 格闘術の基本的なことを身に着けるだけでも大分動きに無駄がなくなってラクに相手をいなすことができるからな」
「ありがとう。助かるよ」
俺はキーマと明日から早速、格闘術というものを習得するべく特訓することを約束した。
「ねえ、そう言えばアキラ、あなた魔法って使えるの?」
「ん? あ、ああ」
「どのくらい?」
「どのくらい? うーん、わからない」
「わからない? はっ? あなたバカなの?」
ルビアが思いっきり呆れた。
「しょ、しょうがないじゃないかー! この世界に来たのは昨日ぶりなんだしっ! 授業も魔法の授業なんてまだ受けてないしっ!」
と、俺はルビアに自分の正当性を訴える。
「とりあえずあなた魔法はどういうのが使えるの?」
「えーと……朝、体育館でガルアの舎弟っぽい奴らと戦ったときは何か『虹色の膜』みたいなものが出ていたっけ……」
「「「「えっ? 『虹色の膜』?……」」」」
四人全員が『虹色の膜』というものに反応した。
「そ、それって、もしかして……防御魔法の『グランドフィルム』のこと?」
と、ルビアがおそるおそるというような感じで尋ねた。
「ああ……確か、そんな名前だったかも」
「「「「!!!!!!」」」」
四人が一斉に驚く。
「グ、グランドフィルムって……それ、上級の防御魔法だよ、アっくん!」
モコが慌てた様子で答える。
「えっ? それってすごいの?」
「すごいなんてもんじゃないわよ! それ、私だって使えないわよ」
「えっ? そうなの?」
ルビアも驚いた様子で答える。
「ルビアさんも使えない上級防御魔法を使えるなんて……さっきのアキラの話を信じていなかったわけじゃないけど、本当に以前のアキラとは違うようだな……」
と、キーマも感心しながら答えた。
「しかし、それが本当ならアキラ……君は上級魔法までは使えるということなのか?」
サヤも驚いた様子ではあったが冷静に質問を投げかける。
「あ、ああ、たぶん。でも、使い方はわからないんだ……」
「使い方がわからない。なぜ?」
ということで、ここで皆に『この世界で使われている魔法は全部使える』ことを話した。
「はぁああぁあ? な、なによ、それ?! ウソでしょ?!」
ルビアが真っ先に驚きを口にした。
「で、でも、その~……魔法の使い方とかはわからなくて。そのさっき話した『グランドフィルム』ていう魔法は自分の中にある『能力向上能力』という能力が自動で魔法を展開したという感じなんだよね……はは」
俺の間の抜けた言動を他所に、四人は『こいつは何を言ってるんだ?』という顔で呆れ顔をしていた。だいぶ、温度差があるようである。
「さ、さすがに、ちょっと信じられない話ですね」
と、サヤ。
「うーん、でも、もしアキラが言っていることが本当ならまずはアキラに『格闘術』だけでなく『魔法理論』も教えたほうがいいということか」
と、キーマ。
「い、いや、いくらなんでもさー、その話信じるっての、キーマ? ごめん、ちょっとあたしはそれはさすがに信じられないっていうか、無理!」
と、モコは意外にもこの話のついてはかなり疑っているようで、さらにルビアにも話を振った。
「……て言うかルビアさんだってその話、信じられます?!」
「え? あ、うーん……どうだろう?」
と、ルビアもさすがにその話には眉をひそめたようで、
「とりあえず見てみないとわからない……といったところかな。一応、私だって『学院マドンナ』という肩書きも持っているからそれなりに魔法には自信があるけど……まあ、そういう意味でも正直、今のアキラの話は信じられないというか……」
「ですよねー」
と、モコとルビアがなぜか意気投合している。
「い、いや、別にウソは言っていない、とは思うけど……」
俺はウソはついていないが本当にこの世界で使われている『一般魔法』がすべて使えるかどうかはやったことがないので強く反論できなかった。
「な・の・で! その真相を今、確かめてみたいと思います」
と、ルビアがおもむろに何やら提案をしてきた。
「えっ? どうやって?」
「アキラ……今から私と対戦するわよ」
「えっ? ええええええええ~~~~~~!!!!!」
ということで、ルビアとの対戦カードが決まりました。
また更新が遅れてしまいすみません。
もう少し落ち着いたら随時更新してきます。




