【015】食堂にて……(ルビア再登場)
「あっ、空いてる~!」
「まあ、皆とは遅れて来たからだろう……まあ、食事の時間は短くなったがこれはこれでいいんじゃないか?」
「そうだな。まあ、じっくりと今日のランチを選ぼうぜ~」
俺たちは教室から食堂に移動してきた。みんなとは一歩出遅れて食堂に来たということもあり空いていた。
「ふ~ん、食券があるんだ~」
この世界にも食券があることに軽く感心しつつ、どんなメニューがあるのか見てみた。見た感じ、地球と同じように肉や魚の定食や丼もの、ランチセットなどがある。学食の割には豊富な品揃えだった。キーマがメニュー選びで大分悩み、それをモコとサヤに急かされつつ注文。その後、食事を手に取った後、奥の窓際の席に腰を下ろした。
「キーマは相変わらず優柔不断だな……まったく」
「ほんと、ほんと」
「い、いいだろ~、食事選びは大事なんだぞ! なあ、アキラ?」
「あ、ああ、そうだな」
キーマ、俺を巻き込むなよ。
そんな感じで俺たち四人が食事を摂りながら談笑していると、
「あっ! アキラ!!」
「?!……ル、ルビア!」
ルビアが俺に気づくとズンズンとこっちの席に歩いてきた。
「ちょっと! あんた聞いたわよ!…………教室でまたインネンつけられたんだって?!」
俺の席の横に鎮座したルビアは三人に構うことなく話しかけてくる。
「あ、いや、まあ…………うん」
「やっぱ、本当だったんだ、その話! で……どいつらなの? どいつらがあんたにチョッカイ出してる連中なのよ?」
ルビアが半ば半ギレ気味に突っついてくる。
「?!…………まさか、あなたたちなの? ウチの弟をイジメてるやつって?」
そういうとルビアは、モコ、サヤ、キーマの三人にいきなり睨みを利かしてきた。
「ち、違います! 違いますよ、ルビアさん!?」
キーマが全力で否定する。
「ちょっと……あんたなんで私の名前知ってるのよ?」
「えっ? あ、そ、それは……その~、ア、アキラからお姉さんの話を聞いていたので……」
「ふ~ん、そうなんだ……?」
キーマがあわてて丁寧に返答しているにも関わらず、ルビアは警戒を緩めていなかった。
「ル、ルビア、この三人は俺の友達だから……」
ルビアがかなり誤解しているっぽいのでとりあえず冷静になるよう話しかけた。
「あ、そうなんだ? ごめんね、勘違いして」
「い、いえ、そんな……」
キーマがルビアの誤解が解けたことを受け、ホッとした表情を見せる。
「こ、光栄です……ルビアさんとお話ができるなんて……」
んっ? なんだ? キーマのその態度は?
「そ、そんな、大げさな……」
「い、いえ、大げさなんかじゃないです! あ、改めて自分は……」
と、突然、顔を真っ赤にしたキーマが立ち上がり、ルビアに向かって全力で挨拶をする。
「キーマ……キーマ・グランドレイス・オライオンと申します。アキラ君の友達をさせていただいております。以後、よろしくお願いします!」
「よ、よろしく……」
キーマの全力にルビアが若干引いていた。
「ビックリさせてしまいすみませんでした。彼のことは気にしないでください…………はじめまして、私はサヤ・ベルダイト・カザキリと申します」
「よ、よろしく……だ、大丈夫よ。それにしても面白い子ね、彼……」
「もったいないお言葉ですっ!!」
ルビアに食い気味に感謝の言葉をかけるキーマ。
「あたしはモコ・マイヨール・イーデンベルグといいます。アっくんとは婚姻の契りを交わした仲です!」
「ははは……もう、モコやめろよ、そうやってすぐ……」
「はあ~~~~~!??!??!? ど、ど、ど、どーいうことかな~…………アキラく~ん?」
ルビアが食い気味に、且つ、笑顔であって笑顔でない笑顔で俺に詰め寄ってきた。
「じょ、じょ、じょ、冗談だよ、姉さん。冗談だって……モコの妄想だか……ら……」
「冗談? 妄想?」
「そ、そうです、ルビアさん! こらっ! モコ! お前、ルビアさんに向かってそんな冗談飛ばすなよっ!! もう少しはまじめdkjどあえ……」
「モコちゃん……だっけ? もう~びっくりさせないでよね?」
ルビアがキーマを押しのけて食い気味にモコに詰め寄る。
「婚姻の契りはウソですが、あたしはアっくんのことが大・大・大好きですっ! この気持ちは本当ですっ!!」
「「なっ…………?!」」
モコのはっきりとした口調で『好き』なんて告白された俺はルビアと共に面食らった。正直、これまでの人生でこんな美少女から『好き』だなんて言われたことなどなかったので中身は四十歳のおっさんではあるが不覚にも……というか、まあ、こんなリア充っぽいことに免疫皆無の俺はただただ、たじろいでいた。
「お、お前は、どうなんだ、アキラ? 好きなのか? モコちゃん……が?」
「え……ええええええ~~~?!!?」
ルビアが顔を赤くし身体を震わせながら、その告白についての解答を求められる。いや、そんなこと聞くなよっ?!
「そ、そんなこと言われても、ボ、ボクは、お、俺は……これはモコのただの冗談であってだね…………ルビア君」
気づくと何だか『新堂アキラ 四十歳』とごっちゃになったキャラになって解答していた。
「ふふふ、面白いリアクションだね、アっくん! そういうアっくんがあたしは好き……」
「いいかげんにしろっ!」
と、サヤがモコの頭を刀の柄で強めに小突いた。
「ちょ、ちょっと、サヤ~?! 今のはマジ、痛いから~~!!」
「すみません、ルビア先輩。モコはいつもこんな調子でアキラ君に絡むキャラなので。別に本気ではないですので……」
「ちょっと、ちょっと、ちょっと~! あたしは本気だってのっ!」
「ウソをつくなっ! お前、他の男子にも同じことを言ってるだろ?!」
「あ……え……いや~……」
「そ、そうなのか……?!」
ルビアがモコに詰め寄る。
「あ、まあ~その~、はは……」
「あ、そ、そう……他の男子にも…………はは」
(そんなもんだとは思っていたさ、思っていたけども、思っていたけども~~~~~~~!!)
これまでの人生で女性にこんな風に言い寄られることは無かっただけに、ついさっきまで舞い上がっていた自分を殴りたい。穴があったら全力で潜りたい。
「?! こ、この女……いや、この……女狐めっ!!」
ルビアの顔からいよいよ『般若』が出始めている。
「せ、先輩……あ、あの~ですね、冗談ですから……これはモコの……」
キーマがルビアをなだめようとする……が、
「ふん! あたしはルビア先輩になんて負けないんだからっ!!」
「「!? お、おい、モコっ!!!!」」
キーマとサヤがハモりながらモコにツッコむ。
「ルビア先輩と言えば、去年、この学院ではもはや伝説となっている『農奴民出身』でしかも『一年生』でありながら『学院マドンナ』を手に入れた超有名人であることは誰もが周知の事実っ! でも、今年はあたしがその座を奪ってみせます!!」
な、なんだ、なんだ?
一体、何が起こってる?
『学院マドンナ』?『超有名人』?…………何がどうしてどうなってる?
いろいろと新しい情報が一気に雪崩れ込んできたため、アキラは軽く混乱していた。
「ふーん、面白い一年ね……。私は貴族だろうが年下だろうが負けるつもりはないわよ?」
ルビアも何か変なスイッチが入ったようである。
「もちろんです! 先輩に負けて欲しいなんて言ってません。ジツリキで『学院マドンナ』の座は奪ってみせますっ!!」
モコが力強く宣言する。
「なるほど……良い度胸じゃない、気に入ったわ! モコちゃん、あなたのフルネームもう一度教えてくれる?」
「モコ……モコ・マイヨール・イーデンベルグです」
「……モコ・マイヨール・イーデンベルグね。覚えたわ、モコちゃん! これからもアキラとは仲良くしてあげてね」
「はい」
ルビアがモコに手を出すんじゃないかとハラハラしたが、結果的にそんな挑戦的なモコをルビアが気に入ったようだ。
「でも、付き合うとか、付き合うとか、付き合うとか、そういうのは………………許しませんからね?」
「うっ……?!」
一瞬だけ、モコを見るルビアの目が『般若フェイス』に切り替わった。
「は、はい……も、も、もも、もちろんです」
モコは危険を察知したのかここではすぐに折れた。
「……それじゃあ、みんな、とりあえずアキラのことこれからも仲良くしてあげてね」
「「「は、はい!!!」」」
「それじゃ…………………………て、じゃなかった!? アキラ~~~!」
「は、はい~~!!!」
ルビアは危うく本題を失念したまま帰ろうとしていたようで、本題に気づいた途端、いきなり詰め寄られた(別にそのまま戻ってもよかったんだけどな~)。
「それで?……あなたをイジメている奴らは一体どいつらなの?!」
そうか。ルビアは朝の教室での出来事を聞いたからそれで俺にすぐに話を聞きに来たのか。
「ルビア先輩……アっくんをイジメていたやつらは、あの……………………『イシュタット家の関係者』です」
「イ、イシュタット家……?!」
ルビアがモコの説明を聞いて顔が少し険しい表情に変わる。
「はい……あの『イシュタット家』です」
「な、なんで? なんでイシュタット家の関係者がアキラを?」
「わ、わかりません……すみません」
モコが申し訳なさそうにルビアに謝る。
「い、いえ、ごめんなさい、別にあなたを責めてるわけじゃないのよ。だから気にしないで……」
「いえ…………私たちはアキラ君とは友達と言っておきながら……アキラくんがイジメられているのをわかっていながら助けることができません……でした。本当にすみません……」
サヤがそう言って頭を下げると、モコもキーマもサヤと一緒に頭を下げていた。
「そ、そんな、やめてっ! 貴族の方で、しかも相手があの『イシュタット家』なら歯向かうことなんてできないのはわかってるよ、私だって。だから、本当に気にしないで。頭を上げて!」
ルビアがあわてて三人に頭を上げるようなだめる。
「それに、これは私たちの問題だし、私自身もう覚悟はできているわっ!」
「「「「えっ……?!」」」」
「……相手にとって不足なしっ!!」
三人だけじゃなく俺も一緒にルビアの発言にビックリする。この人…………やる気だ。
「ル、ルビアさん、本気ですか? 失礼ですが『農奴民出身』では、あの『イシュタット家』に歯向かうことはかなり危ないものかと……」
「そ、そうです、ルビア先輩!! あいつらはただの貴族ではありません……あの高名貴族ですよ、イシュタット家は」
「先輩……イシュタット家に歯向かうのはさすがに危ないです! 考え直してください!!」
三人が一斉にルビアの発言に対して総ツッコミを入れる。しかし……、
「ふん! そんなの皆が知っているわ。でもね…………」
ルビアの顔が怒りの表情に一気に変わる。
「こっちだって我慢の限界なのよーーーーーー!!!!!!」
と、ルビアが周囲の生徒を気にせず大きく叫んだ。すると……
「ふふ……『学院マドンナ』であろうお方が、そのような下品な大声で人の迷惑も気にせず吠えるなんて、さすが農奴民出身…………といったところでしょうか?」
ルビアに声をかけたのは誰が見ても認めるであろう『イケメン男子』は、ガラの悪そうな連中を引き連れながら俺たちの席に近づいてきた。その中にはあの朝の不良の顔も見える。
「出たわね、イシュタット家のバカ息子! あんたがそこにいるってわかってたから聞き取りやすいように言ってやったのよ……」
そう言うとルビアが物凄い眼光でその『イケメン男子』の前に立ち塞がった。
他の生徒たちもタダならぬ状況を察したのか、俺たちのテーブルに注目が集まっていた。
「ふっ……君はもうちょっと『貴族』や『高名貴族』に対しての言葉遣いや、『学院マドンナ』としての自覚を勉強したほうがいいと思いますよ?」
そのイケメン男子はクスクスと余裕を浮かべた笑みで俺たちを見下ろす。しかし、そんな相手の余裕を無視するがごとく、ルビアがさらに凄みを増して問い詰める。
「あんた、ウチの弟にかなり酷いことをしてくれたみたいね…………イシュタット家の御曹司、『ガルア・マイヨール・イシュタット』」
「…………ふっ」
高名貴族イシュタット家の御曹司、『ガルア・マイヨール・イシュタット』…………こいつがアキラをイジメていた奴らを仕切っていた張本人…………それにしてもルビアのあの凄みにも余裕噛ましてるってことは実力者ってことなのか?
『高名貴族』とか『イシュタット家』というのもまた何かしら『影響力のある家』ということらしいが、いずれにしても『本当の敵』がこいつだっていうことだけはわかった。
「ルビア……今、お前に用はない、引っ込め」
「何だと……?」
「用があるのはお前の弟のほう…………アキラ・ファドライド・ビクトリアスだ」
「!?」
ガルアがアキラの名を出した瞬間、食堂にいるすべての生徒の目が俺に集まった。
「私はいまだに信じられんがこいつらがウソを言っているようにも思えない。だから一応聞かせてもらうぞ…………」
と、ガルアが朝の不良たちに指を差しながらさらにアキラに質問をぶつける。
「貴様……朝、体育館でこいつらとさらに他の連中を加えた私の兵隊全員をやったというのは本当か?」
「「「「…………へっ?」」」」
ルビア、モコ、サヤ、キーマがガルアの質問の内容に気の抜けた声を出す。
「……ああ、本当だ。俺が全員やった」
「「「「!?!!? ええええええええええええええええええ~~~~~~~!!!!!!」」」」
今度はルビアやモコたちだけでなく食堂にいた生徒全員が驚嘆の大合唱を上げた。
ストックが無くなりました……_| ̄|○
がんばります。
そんな中、もう一作品投稿開始しました。
今度はギャグ要素過多の作品です。
「変態紳士が異世界にやってきたっ!」
もよろしくお願いします。




