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生まれ変わるなら 3

シュリアの説明を簡潔にすると、


服は大体、中世辺りのヨーロッパの庶民が着ていた服の感じがする。


基本的には映画や漫画などで描かれるあるあるな服装が多かった。


地域によってはインドみたいな民族衣装もある。


動きやすい服になると、やはりアニメや漫画などで見かけるファンタジー系衣装が混ざる。


「今の日本みたいな服はないんですねぇ。」


「それはアネモネ様が生み出して頂き、広めていただければ、一つの変革になります。」


「えっ?そんなことでもいいの?」


シュリアの言葉に、微かな笑みを浮かべてうなずいた。


「アネモネ様、世界を変えるということは何も大きな出来事だけとは限りません。些細な物の変動もまた、一つの変革なのです。」


「なるほど。それなら、私がゴスロリやメイク道具作ったりしても、世界が変わるのね。」


「ゴスロリは是非広めてくださると、私的には嬉しいです。」


うふふ、と笑うシュリア。どうやらゴスロリがお気に入りの様子。


「私は化粧文化が嬉しいわ!この世界には香水はあるけど、そういう文化がなくて寂しいわ。」


はぁ、とため息をこぼすエレノア。ふとあることが気になって、二人に問いかける。


「───あの、エレノアさんもシュリアさんも、属神なんですよね?」


「ええ、私は美容の属神。彼女は服飾の属神よ。」


「お二人がこの世界に広めたりはしないんですか?」


これだけの知識等を地球から参考にしてるなら、それを世界に広めたりすればいいのに、先程から聞く限り、それをした話がでない。


「アネモネ様。我々はそれが出来ないのです。」


二人とも一応に暗い表情で黙りこんだが、問いに答えてくれたのはシュリアだった。


「我々だけでなく、我らが偉大なる主神でさえもこの世界に干渉することは出来ません。」


「どうしてですか?」


「────一度、否定されたの。」


今度はポツリ、とエレノアが答える。シュリアがエレノアを心配して見つめている。


「私達はね、この世界の住人に望まれて生まれた神様なの。だから、基本的にはこの世界の住人の意志が反映されちゃうのよ。」


「故に我々は一度でも"干渉するな"、と言われたら出来なくなってしまいます。」


「酷い話ですね。」


なるほど、だから主神さんは、世界を変えようと思っても手が出せないから、私を呼んだんだ。


「仕方がないことですから。」


シュリアは寂しげに笑った。同じようにエレノアも笑っている姿を見て、私への期待が高いことが伺える。


───だから、こんなに超厚待遇なわけだわ。


一人納得したところで、話題を変える。


「じゃ、どんな服にしようかな。」


「アネモネ様のお好きなものを、ご自由にお取りください。こちらはいかがですか?」


シュリアは微かな笑みを浮かべて、私に服の説明を続けた。







あれからたくさんの洋服から普段着用と、旅や冒険用の服、帽子や髪飾り、下着から靴まで幅広く選んでしまい、ふと気づいたらスーツケース2つ分くらいの量になっていた。


「なんか、スゴい量になっちゃいましたね。」


「この程度、問題ありません。」


シュリアがそういうと、選んだ服やアクセサリーがふわっと浮いたかと思うと、鏡台の横に設置された洋服タンスに吸い込まれるように入っていく。全てが洋服タンスに入ったら、勝手にドアが閉まった。


「こちらの洋服タンスは、中にミニドレッサーと姿見が付いてます。」


シュリアが中を開けて、使い方を教えてくれた。


他には中に入ってるポールが手前に引っ張れてハンガーにかけられた様々な洋服が取り出しやすくなってたり、引き出しがたくさん付いていて中には靴下や下着がしまってあった。


「こちらのタンスをお使いください。」


「えっ?良いんですか!?」


「持ち運びやすいように、大容量のアイテムを収納できる腕輪をご用意しました。」


すっと差し出されたのは、金色の装飾された水晶のついた腕輪だった。

水晶は水色で光に反射して、虹色に煌めいていた。


「タンスに触れて念じれば収納できます。」


言われた通りに腕輪を左手首につけて、タンスに触れた。


するとタンスが光の玉になり、するんと腕輪に吸い込まれるように入っていった。


「そちらをお使いください。」


「こんな便利な物、ありがとうございます!」


「これくらいは問題ありません。」


少し得意気に笑うシュリアに、嬉しそうに笑うエレノア。


二人のためにも、美容や服飾系を流行らせないとな───と新しく心の中で変革目標を追加しておいた。


「終わりましたか?」


「ひゃうっ!」


いきなり後ろなら声がして、変な声をあげる。振り返ると、ノインが立っていた。


が、先程の服装とは違っていた。


さっきは執事っぽい服だったが、今は私が今着ているような庶民っぽい服に変わっていた。


「あれ?ノインさん、服変えたんですか?」


「はい、はな───失礼、アネモネ様に同行するなら合わせたほうがよいかと。」


「─────はい?」


思いもよらない言葉に、私は固まった。


「同行するって、私にですか?」


「はい。先程、アネモネ様から疑問があれば聞きたいとおっしゃいましたので、今後のアネモネ様の全面サポートを行えるように、我らが偉大なる主神に許可を頂き、同行できるようにいたしました。」


「─────マジですか?」


微かに微笑んでうなずいたノイン。


「これからもよろしくお願いいたします。」


まさかのイケメン全面サポートが追加された!


見た目も好みにカスタマイズして、好きなものを身に付けらる上に、荷物がかさ張らない便利なアイテムまで支給。


しかも、やらなきゃいけないことは自分の自由に決めていいとか!


かつてこんな良いこと尽くしの異世界転生あったのか!


いいや!ないね!マジで最高だわっ!


───その分、監視付きになったから責任重大になんだけどね!


まぁ、一応ポジティブにとらえておこう。


「良かったぁ、一人で行くのは怖くて心細かったんです。」


「そうでしたか。それは良かったです。何かあればいつでも申し付け下さい。」


ノインはそう言うと、エレノアとシュリアに近づいて、何やら話し込んでいた。


聞き耳を立てると、先程の干渉に関する内容のようだ。


「あまりアネモネ様を混乱させるようなことはしないで頂きたい。」


「何よ!事実でしょ?」


「ですが、必要以上の情報はアネモネ様の自由な行動の阻害になりかねない。今後は気をつけて下さい。」


ノインがエレノアから離れた瞬間、シュリアがノインを睨みながら、一言呟く。


「───我らが偉大なる主神にぶら下がるだけの、何にも持たない下等属神が偉そうに。」


ノインはピクッと反応したが、敢えて無視して私に近づいてきた。


────うわぁ、神様同士のいがみ合い、レベルがすげぇな。


互いに纏ってるオーラが違いすぎるわ、こわぁぁぁ。


「お待たせしました、アネモネ様。この後はどうされますか?」


気づいたらノインがすぐ近くにいて、ビックリしつつも返答する。


「えっ!あ、あー。そうだなぁ。とりあえずお茶の続きをしたいです。」


ノインの後ろから、ひたすら威圧的なオーラを向けるエレノアとシュリアを避けるようにそう伝えると、ノインはかしこまりました、と指をならそうとする。


「あ、待って。」


それを一回止めてから、エレノアとシュリアに向かって手を振りながら、


「ありがとうございました!私、頑張りますからまた、会いましょうねー!」


とお礼を言うと、二人が一気に雰囲気が変わり、優しげな笑みで手を振り返した。


よし、険悪なままで立ち去るよりは幾分か気分がいいわ。


「じゃ、お願いします。」


ノインにそう言うと、彼もまた優しげな笑みを私に向けたまま、指を鳴らした。




──────────────────────



「───ちょっとシュリア、言い過ぎよ。あの子に聞こえてたわよ。」


エレノアはシュリアに小言を言うと、シュリアは鼻で笑ってみせた。


「事実です。ノインさえいなければ、私がアネモネ様に同行したかったのに。」


「仕方がないでしょ。ノインの役割は我らが偉大なる主神の補佐。彼だけが唯一、我らが偉大なる主神の意志のみで構成された属神なんだから。」


この世界に住まう生命に望まれて生まれた自身(シュリア)とは、全く違うノインを羨む気持ちはわかるエレノアは、小さくため息をついた。


「でも、彼女の中でちゃんと変革する内容に加えてくれたみたいだから、まずは成功かしら?」


「そうですね。」


シュリアもため息をこぼすと、エレノアはふふっ、と笑ってみせる。


「これからに期待、ね。」

アネモネ「しかし、あのビッグサイズの桃、収穫したかった。メイドさんの秘境にせまるのも捨てがたかったな。」


ノイン「何か?」


アネモネ「いえ、気にしないで下さい!」

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