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再び巡る想い出の道 7

森から街道に出ると、ノインが旅で使ったあの馬車を出すと、私達を中へ乗せた。


「まぁ、歩いていくよりは早いし、使者のフリージアもいるから馬車のがいいかもね。」


と私が提案したからだ。


少し進めば、行き交う荷馬車や冒険者達の姿が見えてくる。それを窓から楽しげに見つめるフリージアがはしゃいでいる姿にホッコリしてしまう。


見た目が少女だけに、似合ってるんだよね。


「アネモネ。」


御者台からノインの声がかかったので、ノインのいる御者台の窓から外をのぞくと、


「あっ!」


見えた景色の中から見覚えのある姿を見つけた私は、なりふり構わずに馬車のドアから飛び出し、そのまま見えた方向へ駆け出していく。


「マルスッ!」


ヴァーレデルド王国の王都ヴァレンタの門に並んでいた一行、何人か見覚えのある人達の中から、愛しい恋人の名を呼ぶ。


「アネモネッ!?」


呼ばれた彼はとても驚いていたが、私が飛び付くように抱きつくと、マルスは照れ臭そうに笑いながら抱きしめ返した。


「どうしてここに!?確か君は────。」


「ちょっと事情が重なってね。」


マルスの言葉を口に人差し指を当てて塞ぐと、私はニコッと笑った。それ以上追及されると面倒だったからだ。


「───帰ったら真っ先に会いに行くつもりだったよ。」


「私もよ。」


マルスの瞳のキレイな輝きを見つめていると、


「お前達。あのな、場所を考えろよ。」


と声が聞こえて、バッと互いに身体を離した。声をかけてきたのは、マルスと共にアッシャルダへ遠征に行っていた魔法研究所の所長ディルムだ。


「アネモネ、後で事情聞かせてくれ。」


「うん。今はあの馬車のお嬢様を連れていかなきゃいけないから。夜には帰るね。」


「お嬢様?」


マルスがノインが操る馬車に視線を向けると、私はそのマルスに耳打ちする。


「ブラックエルフのフリージアだよ。」


「ッ!本当か!?」


「後で家につれてくよ。」


マルスが少し嬉しそうに微笑むと頷いた。


「じゃあ、また家で。」


「あぁ。」


「おい待て。まさか、抱擁のためだけに来たのかよ!」


ディルムの突っ込みに、私とマルスは一度見つめた後に同時に頷いた。


「あああああこれだからカップルはああああ!」


ディルムが頭を抱えるのを横目に、マルスにまたねーっと挨拶して馬車に戻る。


どちらかと言うとディルムをそうやってからかいたかった、が正解です。


私はさっと御者台に乗ると、ノインは馬車を賓客用の門へ向かい、フリージアが持っていた親書と私達の身分証明を兵士に見せ、さっさと門を抜ける。


門を潜って見慣れた景色が見えてくると、私はヴァーレデルドに帰ってきたんだ、とホッコリしてしまった。












「お帰りなさいませ、アネモネ様。」


ヴァーレデルド城の客間で待っていた私達を迎えたのは、宰相のフェルディオだった。


「和国は楽しめましたか?」


「ええ、勿論きちんと親書は渡しましたよ。」


「助かりました。で、こちらの方が、お話があったブラックエルフの使者の方ですな。」


フェルディオが笑みを浮かべてフリージアを見ると、彼女はカチコチに緊張で固まっていた。


「大丈夫よ、フリージア。」


「はひ。」


「ほっほっほっ!いや、そんなに警戒なさらずに

リラックスしてくだされ。私はヴァーレデルド王国宰相フェルディオ・サイザリオと申します。」


と親しげに手を差し出すフェルディオに、フリージアは躊躇いつつもその手を取って、ぎこちない握手を交わした。


「この後来ますムデルガルド殿下はとても気さくな方ですから、気を楽にしてくだされ。」


「はひ。」


「ホントよ、フリージア。もし何かあっても私がガツン、と言ってあげるから。」


「ほっほっほっ!それはムデルガルド殿下が困ってしまいますな!」


と和やか雰囲気を作ろうとしてみたが、フリージアは未だに緊張を崩さない。


まぁ、当然か。

代は違うとはいえ、今まで忌み嫌ってきた相手から親交を結ぼうと持ちかけられ、今はその相手側の敷地にいる。

怖くないと言ったら嘘だし、私がいくら言っても最終的には自身達の考えが変わらないと、恐怖は変わらないだろう。


すると見計らったように客間のドアが開かれ、ムデルガルドがいつもよりも真剣な表情で入ってきた。


フェルディオが片膝を地につけ座り、私はフリージアの手を取って立たせた。ムデルガルドを目の前にして三度緊張で固まるフリージアに、大丈夫だよと優しく手を握る。


「お初にお目にかかる、ブラックエルフ族の使者よ。余がヴァーレデルド王国、第16代国王ムデルガルド・アレルヤ・ヴァーレデルドだ。」


「は、初めまして!デヴェルの森、ぶ、ブラックエルフ族の!だ、大長老からの、し、し、親書を届けに参りました、フリージアと申しまふ!!」


「ははっ、可愛らしい使者様だ。ここからは堅苦しいのはナシだ、気楽に話そう。」


ムデルガルドはフリージアの前に膝をつけ、フリージアがぎゅっと親書を握りしめていた両手を、さっと優しく掴んだ。


「今までは失礼極まりない、横暴な扱いを強いたこと、心からお詫びしたい。」


「む、ムデルガルド、殿下。」


「これから対等に、もしくはそちらに優位になるように努力していくつもりだ。何かあれば、必ず援助することを約束する。」


優しい笑顔を向けて、ムデルガルドが誠心誠意フリージアに、その後ろにいるブラックエルフ達に語りかける。


「フリージア。」


ボーッとムデルガルドを見つめるフリージアに、肩を叩いて現実に戻す。バッと私の方へ顔を向けるフリージアに、私はニッコリと笑う。


「これからの()は、ブラックエルフ族を虐げたりしない。共に国の発展を進める同志よ。私が保証するわ。」


「おー、御使い様に保証するって言われたからには意地でも成し遂げないとなー。おっかねーおっかねー。」


「あら、ムデルガルド殿下。ちゃーんとしてくれれば、なーんにもしないわよー。」


とムデルガルドにニッコリ笑って話すと、ムデルガルドはわざとらしく肩をすくめた。


「と言うわけだ。フリージア、これからのことは互いに有意義な交渉にしよう。さ、座ってくれ。」


ムデルガルドが立ち上がり、優しくフリージアに手を差し出すと、ひゃい!と声を上げたフリージアに、私は内心ホッコリしてしまった。


これが新しい一歩になったのだと、私は心の中を達成感で満たしていく。

隣にいたノインもまた、もう虐げられないブラックエルフ達の未来を祝福するように、嬉しそうに微笑んでいた。

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