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にじり寄る影 4

明けましておめでとうございます。


ちょっと書く気力がなかったので止まっていましたが、頑張って続けていきたいとおもいます!

ノインは怒りをにじませ、簡素に説明し始めた。


ネーヴィアンという新しく出来た国からの使者団の一人として、あのジュリアスがいたらしい。

商業ギルドに赴き、言葉巧みに新国ネーヴィアンでの商業ギルド創立に助力を、と訴えてきたらしい。

ギルドマスターであるジョージアはネーヴィアンに関する噂自体はなかったが、新しく出来た国への商売は悪い話ではない、とネーヴィアンの商業ギルドへの提携同意の書面にサインし、アッシャルダ商業ギルドから行商人達を派遣する、という合意が成された。

そして、一週間前にその使者団と共に名乗り出た行商人達は様々な物資を積んだ荷馬車で、南方の大森林へ旅立っていった。


「何故ジュリアスが、使者団の中に?」


「わからない。ただ、」


「何かを企んでいることには、間違いなさそうね。」


私はノインとやり取りし終わり、ミリアの方を向く。彼女は何か考えこんでいるらしく、私の視線に気づいていない。


「ミリアさん、どうしますか?」


と声をかけると、ハッと我に返ったミリアが私を見たその瞳が揺れていた。


「────エルヴィさんに相談してみます。」


そう言ったミリアの決意の滲む表情に、私は少しほっとしてジョージアに向き直った。


「早急にネーヴィアンに向かった行商人達を引き上げるように通達をしてください。」


「か、かしこまりました!」


「では私達はこれで。」


私はミリアを立たせると退室しようとしたが、


「お、お待ちください!」


ジョージアが去ろうとする私を呼び止める。


「こんなことを貴女に頼むのは、本当に罰当たりですが!どうか!どうかお────。」


「貴方の弟さんは、助けませんから。」


ジョージアが言おうとしたことを遮って、私はそちらを見ずに答えた。


「────ですよね。はは、本当に、何を言ってるんだ、俺は。」


諦めたような口調でジョージアは呟いた。


「我らが偉大なる主神様は、全てを見ていらっしゃいます。彼が救済に値するだけの"何か"があるならば、その御手を差し伸べるでしょう。」


そう言うと私は、振り返ることなくそのままドアを開けて出た。

直後に中から泣き声が聞こえたが、私の気持ちに変わりはない。


───悪いけど、容赦しないと決めた。あれだけのことをして、まだ一族郎党全員を罰しないだけマシと思ってもらいたいくらいだ。


そのまま何事もなかったかのように商業ギルドから出ると、ミリアは少し気落ちした様子だったが、


「ありがとうございました。」


ときちんと礼を言ってから、立ち去っていった。


「ミリアさん、大丈夫だよね。」


一抹の不安を残した結果になったが、私は私の出来る範囲でしか出来ない、と心の中で折り合いをつけてからノインを向く。


「うん。」


ノインが頷いたので、私は気に病む必要がないと判断して、じゃブラブラしよっか、と告げて歩き出した。


───なお、これが予想外な展開で驚愕させられるのは、もっと先のことだ。



なんてことにはならないでね。












結局、特にやることもなかった為に少しブラブラした後に、夕飯時よりも早めにアッシャルダ城へ戻ってきた。


出入口にいるベナルドに挨拶し、城内に入るとすぐに兵士が気づいて、近づいてきた。


「お帰りなさいませ、アネモネ様。」


「アイズ様はまだお忙しいですよね?」


「確かまだ公務の最中かと。もしよろしければ、城内の散策をされてはいかがでしょう?」


兵士がそんな提案してくれたことにちょっと驚きつつ、遠慮なくそうさせてもらうことにした。


出入口から行ったことのない城内エリアへ足を向ける。廊下ですれ違う兵士や仕官が私達を見るなり、ピッと敬礼や会釈をしてくれるが、何か言い寄られたり咎められたりはしなかった。


「前よりも雰囲気良くなったね。」


私が最初にこのアッシャルダ城に来たときは夜で緊急事態だったから、ぶっちゃけ良い印象はない。その後も祭りの最終戦と重なった為に、余計に悪いイメージだった。


「おっ。」


廊下を歩くうちに中庭に着いた。

中庭には様々な花が咲き、屋根のあるテラスにはベンチが設置されていた。


「ちょっと休憩しようか。」


ミリアとカフェに入ったが、落ち着いて休んでなかったので、ようやくといった感じで休憩を始める。


「ちょっと遊んでくる。ソウヤ、クロバ。」


従魔三匹は中庭の見える範囲で蝶を追いかけたり、流れる川に身体をつけて楽しんでいる様子だったので、私はベンチでのんびり過ごすことにした。


「はい、アネモネ。」


ベンチの近くにあったテーブルにお菓子が並べられ、ノインが紅茶の入ったカップを差し出した。

私はそれを受け取り、優雅な気持ちで口に運んだ。


「んー、美味しい。」


「マカロン、食べる?」


「食べる食べる!」


ノインが渡してくれたのは、ヴァーレデルドの王都流行りの店のマカロンで、私が日本で気に入って食べていたお店の味に近くて、和国に向かう前に全種類5個ずつ大人買いしたものだ。

渡された小皿には三種類乗っていて、イチゴ・チョコ・バニラ味のマカロンだ。


「あまぁっ。」


こうして落ち着いてマカロンを楽しめることに、私はようやく心から一息つけた。


世界が始まった最初の地、和国から始まった災厄の魔王のクローンに関わる悪魔族との縁が、まるで蛇のようににじり寄り、絡み付いている。


それが私の心を落ち着かせてくれなかったようだった。


「大丈夫。」


ノインが隣に座り、優しく空いている手を握る。


そうだ、私には頼りになる私だけの神様がいて、


「アネモネー!」


声の方を向けば、ライガはキレイな花を、ソウヤはキラキラ光る石を、クロバが落ちていたハンカチをそれぞれ口に加えて私に近づき、和ませてくれる三匹の従魔がいるんだ。


「ありがとう、みんな。」


私は笑みを返した。


───ちょっと重く考えすぎだな。

私は私のやりたいことをすることで、世界を変革させることをメインに考えなきゃね。


初心にかえって楽しむことを、もう一度再認識した。



─────現実逃避、ともいうけどね。

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