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穏やかな揺らぎ 1

祝! 100話目 !


まさか (気力が) 続くとは思いませんでした。


話はまだまだ序盤で、展開が遅くて申し訳ないですが、どうぞよろしくお願いいたします。




ノインの振る舞う夕食・安心の室内での就寝で、スッキリと気持ちのいい朝を迎えた。


ドラゴンズキャッスルのゲストルームも過ごしやすかったけど、やっぱり自分の部屋が一番みたい。


身体と気持ちがサッパリした目覚めに、足元のライガを起こさないようにそっとベッドから降りた。


夕食後、ノインがライガ用に使っていたスカーフに身体を小さくする細工を施した。改めて装備し直すと、ライガは前と同じ成猫サイズに変わったのだ。

あの跳び跳ねようは、本当に嬉しかったようだ。今も幸せそうな眠りに浸っている。


部屋を出て廊下にある洗面台に行くと、一階から良い匂いが上がってきている。

ノインが早速、朝食の準備をしているようだ。


「良い匂い。今日はパンかな?」


トーストの焼ける匂いを胸いっぱいに吸って、私はワクワクしながら朝の手入れに入る。


「はぁ、サッパリした。」


と洗顔からタオルに顔を埋めた後だった。


どん、と背中から肩にかけて何かが当たった。


そこまで強い衝撃じゃないのでライガかな。とタオルから顔を離して、正面の鏡を見る。


「───へ?」


間抜けな声が出た。


見えたのは金色のキレイな髪だった。どうやら私の肩に頭をのせているようで、顔が見えない。

が、この一軒家にいる金髪の人物は一人しかいない。


「ま、マルス!?」


私は顔が真っ赤になっていくのを鏡でわかるほど、ビックリしてしまう。

かなり大声で呼んでしまったが、マルスはゆらゆら動くも顔を離そうとしない。


「あ──さ─ま。」


身動きできない状況で聞こえた言葉に、私はマルスが寝ぼけているのだと理解した。


イケメンが寝ぼけて女子にもたれ掛かるとか、何かのごほうびですかね?


ある意味、落ち着いてしまった私はそっとマルスの頭を撫でてみる。

すると両手が上がってきて、後ろからぎゅっと抱き締められた。


「ふわぁ!?」


寝ぼけているとはいえ、大胆なその行動に変な声が上がる。


まさか、抱き締められるとは思わなかった!


「か、あさ。だ、すき。」


マルスから漏れた言葉に、私はマルスの事情を知る身として振り払えなくなってしまった。


色々あったみたいだからなぁ、マルスは。


でも、私はマルスの母親じゃないし、そろそろ起きてもらいたい。身体を動かせないのは辛いんですけどぉ。


と心の中で嘆いていると、マルスの頭がふっと浮上し、鏡越しに目があった。


「おはよう、マルス。良い夢見れた?」


とびっきり愛されスマイルでそう挨拶すると、さぁっと顔を真っ青にして固まるマルス。


「そろそろ離してくれると嬉しいんだけど?」


「す、すまんっ!」


ガバッと腕を離して慌てて後退するマルス。


「マルスは寝起きが悪いんだね。私も疲れてるとそんな感じだよ。気にしないで。」


私は笑ったままそう話すと、マルスは本当に申し訳ないようで謝り続ける。


「今日は私だったからいいけど、ツェルクもいるから気をつけてね?ツェルクだったらどーなってたかな?」


とわざとからかうと、マルスは何かを想像したのか嫌そうに顔をしかめた。

その顔が面白くて思わず笑ってしまう。


「ぶっ!あはは、変な顔!だから気をつけてね?じゃ、私は部屋に戻るね。」


私はタオルや手入れ道具を持って、マルスの横を通過して部屋に戻った。

ドアを閉めた後、躊躇わずベッドに飛び込んだ。


「~~~~~~~~~~ッッッッッ!!」


イケメンに抱きつかれてあそこまで平常心保てた私、マジ頑張った!余裕のある女子を装えた!マジエライ!本当によくやった私!!!!


動揺していないわけがない。


今までは間近といっても接触がほぼなかったから、そこまで意識してなかったけど。


やっぱりマルスはマジ王子!何やってもカッコいい!さすがアイズの異母弟!!


良い匂いしたし、温かかったし、髪がサラサラだったし、ちょうどいい重さだったしあああああああもう意識しちゃったら無理ィィィィ!!!!


ベッドで顔を埋めながら足をばたつかせて騒ぐ私に、ライガが声をかけてきた。


「んー?アネモネ?どうした?」


「あっ、いや!ライガ!ごめん!起こした?」


「いや、もう起きねぇと。そんなに暴れてどうしたんだ?」


ライガはベッドから降りて、身体を伸ばしながらも私の心配をしてくれた。


「うー、誰にも言わない?」


「おぅ、俺とアネモネの秘密な。」


ぴょんと私のベッドに飛び乗って、私の目の前ですとんと座るライガ。


「マルスがかっこよすぎ。」


「いきなり突拍子もないこというんだな。何かあったのか?」


ライガが呆れつつも聞いてくれた。洗面台でのことを話すと、あぁと何かを納得したようだ。


「アネモネは一人しか伴侶をもたないのか?」


「は、伴侶!?あ、いや、その。」


「んん?」


ライガは私の反応に困惑している。

あぁ、そうか!そもそも、人間と動物じゃ価値観が違いすぎるじゃん!


「あ、あのね。」


と言いかけてふと思い直した。


────あれ?もしかして、私の勘違いかな?


「どうした?」


「いや、なんと言うか。私は今まで伴侶────というかお付き合いする人は一人しかダメだって思ってたけど。」


「そうなのか?良い子を生むには良い伴侶をたくさん持つものだ、って親父から習ったんだけど、人間は違うのか?」


ライガの言葉も含めて、私は首をかしげる。


私、もしかして、日本の感覚のままでいすぎてるかな?

だけど、これをノインに聞くのはちょっとなぁ。


「んー、こういう時は同じ女性に聞くべきだな。でもな、誰に聞けばいいかな?」


コンコン、とノックが聞こえて、私は気持ちを切り替えて返事をしてからドアを開ける。


「おはよ、アネモネ。朝食が出来たぞ。」


ドアの向こうにいたのはツェルクだった。


「お?寝間着のままじゃないか。可愛いが着替えてから来た方がいいぞ。」


そう言われて私はハッと自分の服を見た。


「あ、ちょっと寝すぎたかな。あはは。」


「ほら、さっさと着替えてこいな。」


ツェルクが軽く笑ってドアを閉めた。私は慌てて昨日用意していた服に着替える。


太ももまでの長い丈の青紫のワイシャツを着る。これは腰の辺りでスリットが入っていて、見えないように白のカボチャパンツを履いて対策はバッチリ。

腰にはやや幅のある茶色のベルトを巻く。武器を下げれる紐や飾りがついていて便利。

足首までの黒の靴下、青紫のショートブーツにして、足の武装を着けやすくした。

後で鎧と長手袋を装備することにして、次は髪型に取りかかる。


「んー、決まらないからあとまわし!」


とりあえず、主神からもらったカチューシャを着けてタンスを腕輪にしまった。

バタバタと慌てて支度して、その勢いのまま食卓に向かった。


「おはよう、アネモネ。」


ノイン達が待つ食卓は優しい雰囲気で包まれていて、美味しい朝食を待つ三人の笑みがそれぞれ似合っていて、私はさっきの悩みをもう一度考えてしまいそうになった。









一軒家をどこかにしまいこんだノインが、先に街道で待っていた私達に合流した。


「さ、行こうか。」


私の一声で皆が動き出した。


「アネモネ。」


先頭で歩くノインに呼ばれて、私が近づくと彼は何気ないように話す。


「悩み事?」


「もしかして、私分かりやすい?」


私がノインにそう聞くと、彼は間髪いれずに頷いた。


「あはは。どうしようかな、相談していいものかな?」


「────頼りない?」


ふいにノインが悲しげに私を見るので、慌ててそうじゃないことを伝える。


「そんなことないよ!じゃあ、聞いちゃうね。」


結局、ノインに今朝の疑問を話すことにした。


「こっちは一夫多妻制とかあるの?」


「うん。」


「ちなみに逆は?」


「あるよ。」


あっさりと疑問は解消されてしまった。やっぱりその制度はありましたかー。


「────いいよ?」


「あ、この流れだと察しちゃったよね。大丈夫、今じゃないから。」


私は若干照れながらもノインに話した。


「まずは使命が先。そのあと、ゆっくり考えてみるよ。」


「わかった。」


何やら少しホッとした様子のノインに、私は笑ってしまった。


恋愛もしたいけど、先に主神へ恩返し的なことはしたいからね。


決意を新たに、私は街道の先を見据えた。

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