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僕の異世界転生生活冒険記  作者: 玖荷録
プロローグ
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プロローグ

初投稿です。

ご指摘などいただけたら幸いです。

 僕は今夜中の公園で一人横たわっている。

 いや、正確には横たわっているのは一人ではない、生きて横たわっているのが僕一人だ。

 僕のすぐ横には僕と同じ制服を着た男子が倒れている。死んだ状態で。

 こんなとき某RPGの有名なセリフ「返事がない、ただの屍のようだ。」なんて言えたら……流石に不謹慎か。


 彼が死んでいるのは追々話すとして、

 僕自身が横たわている原因の一つ――というか一つしかないが――はずばり出血である。

 僕の横で横たわっている少年に襲われたのである。

 彼はストーカーである。勿論、僕のではなく僕の友人である三船明さんのだ。

 三週間ほど前から彼女よりストーカー被害について相談を受けていて、

 僕としても何とか解決してあげたいと思い先週から自宅まで彼女を送っていたのである。

 こんな風に一緒に帰っているのをみたら彼氏がいるのかと思いあきらめてくれるかと思ったからだ。


 実に馬鹿だった。そもそも彼氏がいるからと言ってあきらめるような奴がストーカーになるのだろうか、いや、ならないだろう。ストーカーになるからにはかなりの愛があるわけで――酷く歪んだ、それも一方的な――彼氏がいるからと引き下がるわけがないのである。むしろ彼を下手に刺激してしまったのが裏目に出た。


 いつも通り、いつものルートを帰っていると公園の木の陰からナイフを持って突進してきたのである。特別運動神経がよかったわけでもない僕だがまっすぐ走って来るだけなのでよけるのは簡単だった。


 しかし、そのあとが悪かった。僕は避ける際に三船さんの手を放してしまったのだ。それは僕めがけて走ってくる彼から彼女を少しでも遠ざけようとしての措置だったのだが、またも裏目に出た。彼女に走って逃げよう叫ぼうとしたとき、三船さんは足がすくんでしまったのかお尻を地面にぺたんとつけて動けなかったのだ。


 そして彼のナイフの矛先は彼女へと向かっていた。元から彼女狙いだったのだろう、最初のまっすぐに突進してきたのも僕と彼女を引き離すためだったのだろう。彼はナイフを逆手に持ち替え彼女に馬乗りになった。


 ――心中――そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

 それは愛し合う二人がこの世で結ばれぬと嘆き来世で一緒になるための行為だ。

 この場合は一方的だから無理心中か。


 僕は彼女たちの元まで駆けた。三船さんは動けないでいる。叫び声すら上げられずに。

 振りかざしたナイフを持つ手を後ろから押さえる。

 走ってきた勢いのまま馬乗りになっている体勢を崩す。

 彼を何とか抑え込みながら僕は叫ぶ。


「三船さん逃げて!」


 彼女はハッとしたような表情をすると直ぐに自宅の方に駆けていった。

 これでもう彼女は大丈夫だろう。

 

 彼女の安心を確信したがために意識に一瞬の隙が出来てしまった。


 彼は羽交い絞めにしていた僕の腕を振りほどいた。

 その衝撃で僕は仰向けに倒れてしまった。

 

 ナイフが振りかざされる。

 ナイフの刃が僕の首の付け根あたりに刺さる。

 刃はそのまま胸の方に向かって滑っていき、僕の胸を切り裂いて止まる。


 今までに経験したことのない痛みが僕を襲う。

 ナイフの通った後、特に頸動脈のあたりからは大量の血液が心臓の鼓動に合わせ勢いよく飛び出す。 

 飛び出した血液が彼の顔にかかった。彼は血を拭うためナイフから手を放した。

 僕は自分の胸に刺さったままのナイフを引き抜き、仰向けの姿勢のまま思いっきり手を振りぬき彼のこめかみにナイフを突き刺した。


 彼が倒れる。

 僕の首から血液が溢れるかのように噴き出すのとは対照的にナイフの刺さったところから少量の血が出るだけだった。

 僕の刺したナイフは柄まで埋まっていて、それが止血になったのだろう。

 それに何の意味ないのだが。


 僕は茫然とした。

 自分が初めて人を殺したなんて実感がなかった。

 あまりにもあっけなくまるで機械の電池が切れたかのように彼は死んだのだから。

 僕は何もできず、ただひたすら自らに死が近づくのを待つしかなかった。


 



 ……今日この公園で起きたことは以上だ。

 今現在僕は血が足りず指一本動かせずにいる状態で横たわっている。

 自分が何で今こんなに冷静なのかわからない。

 死ぬ直前の、一種の走馬灯のように今日の出来事を思い出したのかもしれない。

 昔から痛みに強いと言われていたがそんな話ではないだろう。

 


 ふと目に涙が浮かんでいるのに気がついた。

 痛さ故ではなく、ただ純粋にたった一つの感情から。

 僕は声になったかもわからないような声で一言――

 

「死にたくない……」


 ――そう呟いて、この世を去った。


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