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ご主人様と使用人

なんかいきなり50件以上のブックマーク登録ありがとうございます。

試しで一人称視点だけでなく三人称視点でも書いてますが読みやすいですかね?


つかサブタイトル考えるのめんどい。一話二話とかそういうシンプルなのにしようかなぁ。

アリアと会った日の夜、ジュードは御付きである使用人ローガン・ベイルの淹れた紅茶を楽しんでいた。


「うーん、なかなか良い塩梅。 淹れるの上手くなったね。 おかわり」


「ありがとうございます。 しかし私に淹れさせるよりも誰か慣れたものを呼ばれた方が良いのでは?」


「それは正論だけど……それじゃ面白くない。 それに未知への挑戦は大事だよローガン」


俺の言い分にローガンはこれ見よがしにため息を吐いた。そういう諦め的な対応やめて。涙が出てくる。


「そういう挑戦は人にやらせるものでは―――む、温度を間違えたか? 熱くなってしまった。 坊っちゃん、熱いので気をつけてください」


ふう、なんとか涙を流さずに済んだぞ。男の涙目とか誰得だからね。いや、需要はあるのか?

それはともかく俺は今のティータイムを楽しんでいる。普段貴族っぽくないとか言われるけど俺だって貴族。お茶の作法とかは貴族の間では大事らしいし、だからこんな風に優雅に紅茶飲んじゃったり―――


「あっつ!」


「大丈夫ですか坊っちゃん!? ずっと考え事なんかしてるからそうなるんですよ!」


そういえば熱いから気を付けろって言っていたような気がする。舌いてえ。あ、また涙出てきた。結局涙目になってしまった。

優雅なティータイムから一転、慌てて水差しを持ってくるローガンと口を押さえてぷるぷるしている俺という優雅さが欠片もない空間が瞬く間に出来上がった。まあいつものことである。


「大丈夫ですか? だから人の話はちゃんと聞くようにと普段から口酸っぱく―――」


「あー、うん、気を付ける」


そう言ったのもつかの間、紅茶にふーふーと息をかけ冷ましながら――非常に貴族らしくない――ジュードは再び考え事を始め、ローガンはそんな主の様子にため息を吐くのだった。


おさらいをするがこの世界の元となったと思われるゲームのストーリーは大まかに三つのパートに分けられる。

プロローグにあたる共通パート。

攻略対象たちとの交流を深める攻略パート。

そして最後に攻略パートで仲良くなったキャラといちゃラブしたり二人で困難を乗り越えたりする個別パート。

他にも条件を満たすと見れる番外パートなんかもあるのだがその辺については詳しくないので除外する。


そして今は時期的にプロローグ。つまり攻略対象のキャラたちとの顔合わせがメインストーリーになる。

そう考えると昨日の主人公との遭遇にも納得がいく。あれがジュードとアリアの『顔合わせ』だったのだ。

そしてプロローグにおいて攻略対象と顔を合わせる順番はどこに行くか?つまり選んだ選択肢によって変化する。最初の顔合わせの相手が俺だったのはたまたま俺がいるところにアリアが来ただけ。ただの偶然というわけだ。


さて、そうとくれば話は簡単だ。しばらくはアリアは攻略対象との顔合わせに忙しく俺の元に来れないだろう。その間にこれからどうやって彼女たちに取り入るか計画を立てておくのだ。

正直言うとこういう風に裏でなんかするのは苦手な部類に入るのだが……まあ少なくとも数日は余裕あるんだし大丈夫大丈夫!


「坊っちゃん今日はどうしたんです? 」


今日帰ってきてからあまりにも考え込むことが多いジュードを心配したローガンが尋ねた。

それに対してジュードは言葉に詰まった。それは純粋にどう説明すればいいのかわからないのだ。


「えーと、その、ね」


うーんどうしよう。流石にローガンといえどゲームのことを話すのはなぁ……。なんだかんだで受け入れられそうな気もするけどやっぱやめた方が……。

いや、待て。なにをするにも味方は必要か。ローガンは信用できる。これは確実。ならゲームのことはともかくアリアのことを伝えても大丈夫かもしれない。念のため情報が確実ではないからと口止めしておけば……よし。


「なあローガン」


「なんでしょうか」


「お前は俺の味方か? 何があろうとも裏切らないと誓える?」


「なにを今さら! このローガン・ベイル、例え断頭台の先であろうとも坊っちゃんに付き従う所存です!」


「え、なにそれこわ……あ、いやそうか嬉しいぞ? うん、ほんとに」


ジュードは割と素でドン引きしたがローガンは本気である。一見すると軽い関係のように見えるがその実ローガンは狂信と表せるほどの忠誠をクロス家、しいてはジュードに捧げていた。

その心情を知ってか知らずかジュードはこれ以上そんな話してたまるかとばかりに話を打ち切ると冷ましすぎて適温以下になった紅茶をすすった。うん、おいしい。


「今日アリア・クォークっていう女の子と友達になったんだ」


「それはおめでとうございます。 しかしアリア・クォーク……ですか? クォークという家名は記憶にありませんがどこの貴族で?」


「いや庶民だよ」


さらっと庶民と友達になったと言われさしものローガンも驚くがすぐに立ち直った。よく考えればこの主は屋敷の使用人たちにも気軽に話しかけるし、それどころかほかの庶民相手にやたらフレンドリーなのだ。近くの市場なんかではちょっとした有名人であるので今更驚くことでもない。それでも他の貴族たちの目がある学園で、ということには僅かながら驚いたが。


「それで、そのアリア嬢がどうしたのですか?」


「ローガンも『翡翠の瞳』の話は知ってるよね」


「ええまあ、貴族に仕える立場としてある程度は。 たしか王族の血を引く者のみか持つとされる緑眼のことをそう呼んでいるんですよね。 それがどうかしたので?」


「アリアの瞳って綺麗な緑色なんだよ。それも透き通るような、ね 」


「……な、なんですと!?」


ものすごい勢いで詳細を聞いてくるローガンを宥めて落ち着かせる。そりゃまあ行方不明だったお姫様が見つかったかもしれないなんて焦るかもだけど……ほんととんでもない設定だな!誰だ考えたの!でもこういう設定結構王道なんだよなぁ。おそろしい。


「す、すいません、取り乱しました」


「いや無理もないよ。 俺も気づいたとき驚いたもん」


なんでその程度で済むんだ、という疑問をローガンは飲み込んだ。

昔からどうもこの主は貴族の振舞いだの序列だのに対して無頓着だ。頭ではわかっているのだろうがそのくせ平気で庶民と仲良くしようとするあたり本当の意味で理解をしていないのだろう。

それでも最近はマシになってきている。子供の頃なんて友達になったとか言ってアドルード家の嫡男を連れてきた時は本当に驚いたものだ。ご当主様も腰を抜かしていたほどだ。もっともそれ以来侯爵にすぎないクロス家と王族に次ぐ権力を持つアドルード家は交流を持つようになったので悪いことではなかったのだが。

いや今はそんなことよりも主がその王族かもしれない人物をどうするつもりなのか、そちらのほうが心配であった。


「そのアリア嬢をジュード坊っちゃんはどうするおつもりで? 」


……どうするつもり?やべえ、全然考えてなかった。全力でサポートするって言ってもそれだと報告すればいいって話になっちゃうし……利用するとか言っておけばいいのかな?でも利用してやることなんて……あ、そういえば前に調べたはいいけど現状では手が届かないから諦めたことがあったな。うん、そのためにしよう。そうしよう。


「しばらくは様子見かな。 本当に王族だったら……うまく取り入ろうかな」


「っ! ? ……本気ですか?」


「ああ。 不服か?」


「坊っちゃんが決めたことなら私は従います。 ですがしかし……」


「貴族たるものお家のためには誰かを利用し裏で動くのは当たり前、だろう? それが例え王族でも……」


「ええ、確かにそうです。 ですが正直ジュード坊っちゃんがそういうことに向いているとは……」


「目的のためだからね。 俺も心を鬼にするさ」


とはいうもののあの笑顔を思い出すと非常に胸が痛い。ついでに未来の王女を利用すると考えると胃も痛くなってくる。

それを隠すために無理矢理自信ありげな笑みを浮かべたがわずかにひきつっているのが自分でもわかる。基本的に俺は小心者なのだ。


「しかし、そこまでして坊っちゃんはなにを求めるのですか?」


「ふふ、よくぞ聞いてくれた!」


勢いよく立ち上がったせいで飲みかけの紅茶が溢れそうになるが構いやしない。いや溢したらメイドたちが大変だろうし気を付けよう。メイド長怖いし。


「ずっと東にタクシンって国があるのを知ってるよね?」


「はい、ファーミシアとの交流は盛んではありませんが稀に市場にそちらの品が流れてくることもありますので知識としては知っております」


「よろしい。 調べたところその国には独自の食文化があるらしくてね、俺は是非とも交流を持ちたいと思っているんだ」


「…………えっと、それはつまり」


「そう! 俺の目的はその国の特産品である米をたくさん輸入してこの国に広めることさ!」


つまりお米万歳ということだ。だってしょうがないじゃない日本人なんだもの。お米は魂の燃料と言っても過言ではないのだ。欲を言えば醤油とか味噌も欲しいのだがまずは米だ。それに上手いぐあいに広まれば経済効果も見込めるし……ふふふ、一石二鳥とはこのことだよ!


一方、ものすごい得意気な顔で言い切ったジュードの姿にローガンは「なんだいつもの病気か」と安心していた。それと同時によく考えれば心配する必要すらなかったよなぁ、と頭をかく。

幼い頃からジュードの遊び相手兼世話係として共に過ごしてきたローガンはこの主が誰かを利用したり謀略を張り巡らしたりなんてことにはまったくもって向いていないことを知っている。それどころか貴族に向いてないと実の父親に言われてしまうほどの度の超えたお人好しだ。

そのお人好し気質はあの氷の鉄仮面との異名で知られるエルフィン・アドルードがあまりの毒気の無さに自然と表情を崩し、アドルード家に長く仕えている使用人たちが「エルフィン様が笑った!?」と一様に戦慄するほどだ。どれだけ笑わないんだエルフィン・アドルード。

とにかくそんな人畜無害の代名詞であるジュード・クロスが身の程知らずの野心を抱いたり犯罪めいたことなんかをできるはすがないのだ。

大方取り入るだの利用するだのはただの口実で色々世話を焼くつもりなのだろう、とローガンはそう結論づけた。……お米の輸入に関しては本気かもしれないが。


「ふふふ、もしかしたら俺はこの先腹黒の代名詞になってしまうかもな」


そんな寝言を垂れ流しているジュードを見てローガンは主の額に手を当てた。


「……失礼ですが熱でもおありで? どう考えても坊っちゃんには無理です」


「本当に失礼だなお前! というか断言するほど向いてないの俺!?」


えぇ、割とショック……と、とにかくアリア・クォーク! お前には我がクロス家の繁栄のために、しいては俺の食生活の充実のためにも利用させてもらうよ!そしてお前は学園生活を満喫しエルフィンと幸せになるがいい!

心の中でそう宣言すると気合い付けに紅茶を一気に飲み干した。


(……食べ物くらいご当主様に頼めば普通に取り寄せてくれるんじゃないかっていうのは言わないほうが良いんでしょうね)


ローガンはひっそりと空気を読んでいた。

主人公の相談役的なキャラを出してみました。あと出すとしてもメインは多くて二、三人かなー?

あと次回更新あたりで他の小説でやってた簡易キャラ紹介やろかな。


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