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王女様お友達作戦始動なり!

新連載です。

発端はなんだっただろうか?

そう、たしか学園のなかで迷子になっている女の子を見かけて思わず声をかけたことかな?

うん、それ自体は後悔してないんだ。困ってる人を見捨てるなんて人としてあるまじき行いだからね。でもさ―――


「私、アリア・クォークっていいます!」


目の前で輝くほどの笑みを浮かべて名乗る少女に対して俺はかすかに引きつった笑みを浮かべながら名乗り返した。


「ジュード・クロスだ。 よろしくなアリア」


まさか『物語』、ひいてはこの国にとっての重要人物だったなんて……聞いてないよ!




俺の名前はジュード・クロス。ファーミシア王国の貴族であるクロス家の次男として生を受けた転生者である。

はぁ?とか何言ってんの?とか思うかもしれないが事実である。こうなる前は地球の日本という国で暮らしていた一般人だったのだ。

この世界に産まれて早十五年だがこの世界何気に生活水準が高く、元現代日本人であった俺でもほとんど不自由なく暮らしてこられた。ご都合主義と思うかもしれないがこれに関してはなんとなく理由はわかる。

この世界が俺にとって前世にあたる日本で発売されていたゲームの世界であるからだ。


ストーリーは貴族が通うランシール学園に入学した主人公、アリア・クォークが学園生活のなかで貴族の嫡子たちと恋に落ちる、という王道もの。いわゆる乙女ゲームというやつだ。

……いや別に俺がやってたわけじゃないよ?やってるのを隣で見てたり色々話を聞かされただけだ。知ってるのも大まかなストーリーとメインキャラぐらいでしかない。

ちなみに俺、ジュード・クロスはそのゲームの攻略対象のひとりである。なんてこったい。

そして俺の目の前にいるこの少女こそがこのゲームの主人公であるアリア・クォークなのだ。……まさかたまたま声かけたのが主人公だったなんて、こんなん予想できるかちくしょう!


アリア・クォーク。

このゲームの主人公であり色々あってこの貴族だらけの学園に転入してきた平凡な庶民、という設定の女の子だ。

性格は少々気弱だが芯が強く、ごく一部を除き誰からも好かれるタイプ。

実は幼い頃に行方不明になっていたファーミシア王国の王女、つまりこの国の王様の子供、しかも一人娘であるという裏設定がありそれは終盤で明らかになるのだが……よく考えなくてもとんでもない設定である。平凡どこいった。

そんな実はとんでもない存在である彼女は俺に向かってちょこんと頭を下げた。


「ほんとありがとうございます! 困ってたんですがみなさん私の話なんか聞いてくれなくて……」


「まあ無理もないよ。 この学園に在籍しているのはほとんどが貴族だから」


よく勘違いされがちなのだがランシール学園には貴族以外でも入学可能だ。大商人の子が箔をつけるために来たり学者志望の者たちが貴族庶民問わず学びに来たりする。あくまで学びの場というスタンスなのだ。

でも自分の家の威光を傘にきる奴はどこにでもいるし、庶民を下に見る貴族なんてそれこそ掃いて捨てるほどいる。

正直そういうの馬鹿馬鹿しいと思うがだからといって長男でもなく貴族社会に対して影響力を持ってるわけでもない俺がどうするということもできない。なかなかに歯がゆいものだ。


(それにしてもなぁ……)

ジュードは改めてアリアの姿を観察した。

アリアの見た目は現王妃を全体的にちっちゃくした感じで生き写しと言っても過言ではないほど似ている。唯一瞳の色だけが現王の瞳の色である緑色を受け継いでいるのだ。

…………誰か気づけよ。わかりやすすぎるだろ。ぶっちゃけるとこの娘見たときそのまんま過ぎてこちらとら吹きかけたんだぞ。

なお、この世界で緑色の目を持つのは王族ぐらいなもんである。なんか貴族たちの間で『翡翠の瞳』とか呼ばれていて王族の証にもなるのだ。

その証拠に原作においては主人公が王族であることを怪しんでいた貴族たちも主人公の瞳を見て考えを改めるというシーンがある。

それを踏まえてもう一度言おう。


気 づ け よ


別にアリアが目の色を隠してるとかそういうのは一切ないんだぞ?むしろフルオープン、隠す気ゼロだ。

いやゲームの視点から言えばプレイヤーに『翡翠の瞳』の情報が入るのはそれこそ終盤になってからだし、庶民には『翡翠の瞳』のことは知られてないから今まで庶民として暮らしていたアリアがその事を知らないことも納得はできる。

だけど貴族共!お前ら全員アウトじゃねーか!目ん玉節穴かお前ら眼科行け!あ、眼科無いこの世界!ガッテム!


「あの、どうしました? な、なにか私気にさわることでもしましたか!?」


「え? あ、ああ、ごめん。 そういうわけじゃないんだ」


やばいやばい、じっと見すぎた。適当に言い訳しないと。


「君に対する皆の対応を聞いて、やはり相手が庶民だからといって見下すのは貴族として間違っていると思ってね。 確かに俺達は貴族だが俺達の生活は彼らによって成り立っているんだ。 感謝しこそすれ侮り軽視するのはおかしい。それにここは学びの場。 貴族だの庶民だの言っても関係ないでしょ?」


咄嗟に思いついたことだけどなかなかいい感じの言い訳だ。それに言ってることは嘘じゃない。

だけど言い切ってからアリアを見て―――後悔した。ものっそいキラキラした目でこちらを見ている。やめて、胸が痛い。


「ジュード様ってお優しいんですね! そう言ってくださる貴族様がいらっしゃるだけで私は嬉しいです!」


……なるほどねえ。この娘に攻略対象共が惚れるのもわかる気がする。

アリアは良くも悪くも裏表が無いのだ。

貴族の世界では表では仲良くしてても裏でなにかしらドロドロしているのが当たり前。そのようなものだからより一層この娘が眩しく感じられる。惹き付けられる。……俺も前世の知識がなかったら危なかったかもしれない。


それはともかくだ。

さてさて、この娘は将来いったいどの攻略対象と結ばれるのだろうか。

俺的におすすめなのは貴族の中では最高位である公爵の更にそのトップとも言えるアドルード家の長男、エルフィン・アドルードだ。

なにせこの男ただでさえ公爵家長男、しかも兄弟いないという超勝ち組なのに公爵家を継ぐに相応しい男になるべく努力を怠らない有能野郎なのだ。これには思わずお前の粗どこだよ!と言いたくなる。というか言った。

それに付け加えれば一人の友人としてエルフィンには幸せになってもらいたいという思いもある。無意識のうちに周りにも高いレベルを要求してしまうあの男に付いてこれる女は原作主人公であるアリアぐらいなもの。なので彼には全力で彼女に攻略されてもらいたいものだ。


他にも何人もの個性豊かな攻略対象共がいるんだが正直エルフィンには劣る。現状そいつらとは特に知り合いって訳でもないしな。


え?俺はどうなんだって?

その辺は御心配なく。俺の肩書きは侯爵家次男だけど家は侯爵家のまとめ役。その影響力たるやそんじょそこらの公爵家にも引けをとらない。そのため婿入り先はいくらでもある。十分に勝ち組だ。

それに原作において問題であった兄夫婦との仲も良好。最悪誰とも結婚できなくても家を追い出されることはない。その場合はメイドの誰かと結婚して家臣として全力で兄を支えるつもりである。

そんなわけで特に俺はこの娘と結ばれなくとも問題はないのである。というか俺的にはデメリットの方が大きい。

アリアに惚れる野郎共は皆公爵家。しかも貴族社会においてなにかしら重要な家の者たちである。

そいつらに睨まれちゃ色々やりづらくなるのは確実。兄にも迷惑がかかってしまうかもしれない。今まで可もなく不可もない無難な学園生活を送ってきたのにそれじゃ台無しだ。

それになによりアリアは現国王ご夫妻の唯一の子。つまり彼女の夫が次期国王になるといっても過言ではない。というかほぼ確実にそうなるだろう。

……うん、王様とか無理!できない!責任が重すぎる!

一番良いのはうまい具合に相談役とかそういうポジションに落ち着いて将来アリアとそのお相手 (できればエルフィンが望ましい)の覚えが良い感じになることだ。

そうすればクロス家は誰からも軽視されない家になり兄の助けになるかもしれない。

……うーん、我ながら下心ありありだなぁ。


ちょっと良心の痛みを感じつつも最後に寮の近くまで案内した。ちなみにこの寮は遠方から来てる学生のための寮で大体の奴は実家から通っている。多少遠くても馬車で来る。近くても馬車で来る。見栄のためらしい。

ちなみに俺も実家通いだ。なにせこの学園からうちの屋敷までは徒歩15分ほど。なので寮に住む理由がない。馬車?混むしいらんだろそんなん。


「これで大体は案内できたな」


「はい! 今日はありがとうございました! とっても楽しかったです!」


そう元気にお礼を言うアリアの姿に癒される。なんというか小動物的な可愛さがあるなぁ。

じゃあそろそろ帰るかと思い踵を返したジュードはアリアに控えめに呼び止められた。まだどこか案内してないところがあったか?と首を傾げる。


「あの……よろしかったらなんですけど、その、迷惑にならなければ…私と、お友達になっていただけませんか? 」


その時のことをジュードはこう語る。

―――あれはなんかもう後光とか差してた、と。


うわぁぁあああ!まぶしいぃぃいい!なにこの娘天然記念物かなにか?国で保護すべきだろ。いやまあ血統考えるとガチでそうしなきゃ駄目なんだろうけど。

あまりの純粋さに思わず浄化されそうになるもそこは貴族の端くれ、そんな内面はおくびも出さずにこやかに答えた。


「ああ、もちろんだよ」


「すいません貴族様にこんなこと……って、本当ですか!!」


「本当さ。 俺も貴族以外の話し相手がほしかったからね。 ちょうどいい」


これは本当だ。なにせ奴らはちょっとした会話でもすぐ腹の探りあいを始めやがる。そういうことをしない余裕ある貴族は公爵家ぐらいなもの。そして俺は影響力あるとはいえ侯爵家の人間なので一人を除き公爵家の奴らに気軽に話しかけることはできないのだ。

だからアリアの申し出は先を考えても今の俺にとってもありがたいものだったのである。


そして俺の答えを聞いたアリアの顔がパアッと輝いた。

あーほんと癒しだわ。もう清涼剤とかそんなん目じゃないよ。やっぱりこういう子にこそ偉くなってもらって新しい風を入れてもらわないと。

なんだか重荷を押しつけるみたいであれだけど原作的に考えてアリアが王女としての地位を取り戻すのは確実。今から親切にしておけば俺個人はともかくクロス家としてはプラスになるに違いない。


(そのためにしっかり支えてあげないと。友達として、ね)


……なんか今の俺すごく腹黒っぽい。貴族っぽくてなんか良いね!


今回はキャラの数を絞ろうと思います。だってたくさん出しても扱いきれないもの!

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