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File.1-8『初めての迎撃戦(インターセプション)』

 時は数分前に遡り正午過ぎ、場所は宮本家の屋根の上。そこで寝転がっている一体の小さな人型の姿がある。

 緑色の装甲を身に纏い、傍らには自身の得物である混紡型の銃。夜の校舎でMT01と戦ったブラストルこと「イカズチ」である。

 彼が見上げる空には青空を彩るように白い雲が転々と浮かび、それを背景に小鳥たちが飛び回っている。

『・・・・・・のどかだねぇ』

 本当にのどかな光景だ、自分が寝転がるこの屋根の下には自分が請け負っている護衛対象とこの前に取り逃がしたMT01がおり、そしてそこに害意あるものの牙が何時及ぶかわからない中でだ。

 そんな彼に通信が入る。

『何のんきなこと言ってるんですか、真面目にやってください』

 通信で聴こえてくるのは若い女性の声。イカズチに「真宝っち」と呼ばれていた女性のものだ。

『どうした真宝っち、お前も退屈さに頭をヤられそうになったか?』

『ふざけるのもいい加減にしてください、ただでさえ状況はややこしくなってるのに・・・・・・!』

『そんなの百も承知だって。だから俺も極力バレないように、こうやってジーッと動くのこらえて01の動体反応レーダーに引っかからないようにしてんだろうが。つーか、こうやって通信回線開いてる時点で電波拾われる可能性だってあるんだぞ?』

『わかってますよ、それくらい。でも定時連絡くらいはちゃんと送ってください』

『へいへい』

『まったく・・・・・・って、これは・・・・・・』

『どうした?』

 通信越しの彼女の声色が変化したことにイカズチは嫌な予感を覚える。

『こちらの広域レーダーが接近してくるPGG反応を捉えました。北北西方向から数は三つ、距離は警護エリア中心より約1200m』

『おいでなすったか』

 嫌な予感は的中したらしく、イカズチは身を起こすと北北西の方向を見据える。

『ここでやり合うと01に感づかれちまうからな、こっちから打って出るか』

『こちらは囮で別働隊がいる可能性もあります。迅速な撃破の後、すぐに警護エリアへ後退してください』

『ああ、わかってる・・・・・・まぁ、そのときはあいつ(・・・)が何とかしてくれるだろ』

あいつ(・・・)というと?』

『状況をかき回してくれてるこの家の居候だよ』

『01がですか?そんな都合よく・・・・・・』

『都合よく、か・・・・・・』

 確かに都合のいい話だ。AIの出処は不明、接触したのもたった一回、そんな何処の馬の骨ともしれない者を信用するなど愚の骨頂だ。

 しかし、イカズチはこの屋根の下にいるMT01へ期待にも似た信頼感を持っていた。

 先日の校舎の件、護衛対象とMT01が同じ場所にいた時のことだ。実はイカズチもその場に潜伏しており、その一部始終を見ていたのだ。

 雫が男子生徒に襲われたとき、MT01の動体レーダーに捉われぬ為、そして相手が悪漢とはいえ人間であった為に下手に攻撃するわけにいかなかったので対応が遅れてしまった。

 しかし、それが幸いにもMT01に搭載されているAIの人格を垣間見る機会を与えることになった。MT01は純粋に悪漢達の所業への怒りで動いたのだ。雫に暴行を振るおうとしたこと、仔猫の命を弄んだことに対して激怒し熱くなったのだ。その後の行動こそ褒められたものではないが、だからこそMT01に搭載されているAIの根本部分が「善」であるとイカズチは判断した。

 その後もその場にいたと思わせぬよう偽りを口にしたあとでMT01の制止に入り、更にぶつかり合うことでその心がより真っ直ぐであると感じることも出来たのだ。

 身体こそ最新技術の塊とも言えるイカズチだが、中身であるAIに整形された人格は時代と逆行しているようにも感じる古臭い考えで動くタイプだった。その性格は一言で表せば「義理人情に熱い陽気で喧嘩三昧のチンピラ」だ。「拳と拳でぶつかり合えばわかりあえる」、「感情で他人の為に動ける奴は善人」という考えを彼は強く信じ、そうして得た直感で物事を判断してきたのである。

 そんな彼だからだろうか。本気で戦った相手こと、自分の真下にいるMT01のことを信じてしまうのは。

『案外、そう都合よく行くかもしれないぜ』

『馬鹿も休み休みにして・・・・・・って、ウソォ!?』

 通信越しの声が急に落ち着きをなくす。

『今度はどした、真宝っち?』

『最悪です、今更になって護衛エリアの地下から新たに三機の反応が・・・・・・下水道から来ることも想定してわざわざ専用レーダーも仕込んだのにぃ!!』

『多分、ジャミングでも使われたか。奴さん、表に出したのを囮にして地下の連中で獲物を捕ろうって作戦だったみたいだな。地下に使ってるレーダーの出力がもう少し弱かったら奴さんの思惑通りになってたってわけだ』

『どうします、一度に両方も相手に出来ませんよ?』

 確かに状況は悪い。だがイカズチは全く心配していなかった。ここは犯人の思惑に引っ掛かったふりでもしよう、そう考えていた。

『そうさなぁ・・・・・・とりあえず、表の連中の方を先に片付けてくるわ』

『でも地下から屋内に侵入してくる方は・・・・・・』

『ご都合主義に任せる』

『だから何を根拠にそんな・・・・・・!!』

『真宝っちは念の為に01の動きに注意しといてくれ。以上、通信終わり!』

 イカズチは一方的に通信を切ると家屋の屋根を跳躍して伝い、遠方から接近してきた目標三機を迎撃しに向かった。







 宮本家宅の厨房に突如として現れた灰色のPGG、ワッチドッグ三機を相手に僕はその場で拝借したステンレスフォークを槍の様に構える。

 その状態でにらみ合いつつ、僕は背後に居る雫さんとその母親へ目配りした。

『雫さん、襲いかかってきてるのはこの場にいるこの三機だけみたいだ。僕がこいつらの相手をしている隙をついてお母さん一緒にと別の部屋へ隠れて!』

「で、でも君一人じゃ・・・・・・!」

 そう言っている間に痺れを切らした一機が飛びかかってきた。襲いかかってくる剣の斬撃を僕は咄嗟にフォークで切り払い、押し返すためにその胴体へ蹴りを見舞った。

 蹴りの一撃でそいつは怯み後退るも、その後ろからすぐに残りの二機が飛び出てくる。僕はそいつらを通すまいと二機同時に相手して踏ん張る。

 二機の重量が僕を押しつぶさんと関節に負荷をかけてくる。本来ならかわせば済む攻撃も後ろに雫さん達が控えていてはかわせない。

『いいから早く行け!守りながらじゃ戦えない!!』

 僕は強引に受け止めた刃を薙ぎ払いつつ、その場で竦む雫さん達に僕は強く荒い口調で叫ぶ。もうそれだけ余裕などなかったのだ。

 その口調に押されてか、雫さんは大きく頷いて立ち上がる。

「お母さん、とにかく私の部屋に!」

「し、雫・・・・・・!?」

「早くっ!!」

 雫さんは母親を引っ張り上げるとそのまま厨房から出ていく。ワッチドッグ共は当然その後を追おうと迫った。

『お前達は行くなっ!』

「ニャアッ!!」

 僕のフォーク突きと仔猫のネコパンチがそいつらの横から襲いかかり、そいつらの身体を突き飛ばすと同時に道を遮った。そして再び僕はワッチドッグ達と対峙する。

『お前は雫さんを傍で守れ!!』

「ニャー!」

 僕の指示に仔猫は素直に従い、雫さん達の後を追って厨房から出ていく。その後、彼女達が避難していった廊下へと通じる扉は閉ざされ、この空間には僕とワッチドック達のみが残された。

『さぁ・・・・・・今度こそ心置きなく戦える』

 これで守りを心配する必要もない。一機づつ確実に仕留めるのみ。

 フォークを構え直すと僕はまず目の前にいる一機に狙いを絞った。僕は一気に距離を詰めてフォークによる薙ぎを繰り出す。相手はそれを受け止め振り払おうとするが、こちらもフォークに力を込めて押さえ込み、力と力が拮抗する。

《警告、背後より敵機接近》

 ナビの警告文で背後から迫る攻撃に気付く。僕は切り結んでいる相手の姿勢を足払いで崩した隙に背後へと回り込み、そいつの体をそのまま突き飛ばす。そいつの体は僕に迫ってきていた敵機と衝突し、二機とも無様に転げ回った。

 その様子を眺める暇は僕にはなかった。直ぐに三機目が別方向から剣を突き立てて突進してくる。その攻撃に対し、こちらはフォークの首で相手の刃を受け流しながら懐に潜り込む。そしてそのまま足腰を踏ん張り、自身の左肩を相手に向かって打ち付けた。

 こちらの踏ん張りの力と相手の突進の力が衝撃となり、相手の身体が突進していた方向とは真逆の方向へ弾むかのごとく吹き飛んだ。

 そして、対峙している相手と戦ってあることを感じていた。

『・・・・・・こいつら、ブラストルより全然弱いぞ?』

 そう、ブラストルに遠く及ばないほど弱いのだ。振り下ろしてくる攻撃の力は軽く、攻撃前の挙動も大ぶりで見極めやすく、動きで言えばかなり単調。強いてあいつに匹敵しているのはスピードくらいだが、手負いの僕にすら遅く見える程度だ。

『これなら、勝てる!!』

 そう確信した僕はフォークを構え直し、先ほど突き飛ばした一機に向かった。相手が自分より低スペックならば簡単に倒すことが出来る、そう考えていたのだ。

《警告、六時方向よりロックオンされています》

『!?』

 だが、それは間違いだった。機体だけの性能で強さの上下が決まるほど、戦いは甘くなかったのである。

 その一文を目にした時、背筋に悪寒が走った。僕は考えるより先に横に飛ぶ。直後、いくつもの破裂音と同時に僕の居た場所でいくつもの閃光が通りすぎ、その内のいくつかは地面をえぐるようにして落ちる。

 僕が背後を振り返ってみればワッチドッグの二機がこちらに左肩に筒状のものを担いでいるのが見えた。その空洞からは白い煙が揺らめいており、そこからそれが何であるのかがすぐにわかった。

『また・・・・・・銃か』

 ナビの解析文で“銃刀法に抵触する装備”をしていると綴られていたのを思い出した。それは連中の手に持っている剣のこととばかり思っていたが、その背部にある銃のことを指していたとは。

《警告、七時方向よりロックオンされています》

 またも綴られるナビの警告文。振り返ってみれば先ほど狙いを定めていた一機までもが左肩に銃口を構えてこちらを狙っている。

 凶悪な武器の登場で機体スペック差は瞬く間に埋まり、形勢はこちらが不利になった。

『まったく・・・・・・あいつといいこいつらといい、鉄砲なんて反則だろ』

 僕はブラストルを思い出して悪態をつきながらも、銃口の包囲網の中心で自らを奮い立たせるようにフォークを構え直した。

 そしてすぐにその場から駆け出す。直後に銃口から僕めがけて放たれた弾丸は僕の居た場所を抉り掘った。

《警告、三時方向よりロックオンされています》

『今度は右か!!』

 僕は考えるより前に飛び込むように前転する。直後に発砲音とともに僕の頭があった場所から弾丸が空気を切り裂くときの音が聞こえた。

《警告、六時方向より・・・・・・》

『いい加減にしてくれぇ!!』

 今度はナビが表示しきるより先に横に飛び退き、僕の前方にあったグラスが銃撃で粉々に砕け散った。

 敵の銃撃の前に踊るように逃げ続ける僕。幸いにもこの身体が小さいこと、銃が撃たれる前に狙われていることが予見できることもあってなんとか被弾を避けている状態だった。

 しかし状態は最悪だ、どれも必死の思いで避けているだけに一瞬の気の緩みが命取りとなってしまう。

 僕は敵の銃撃を耐えつつ木製作りの棚の影へと逃げ込む。同時に僕に向けて撃たれていた銃撃は静まった。

 なんとか銃撃に晒されることからは逃れられたが、下手に姿を晒せばまたあの銃口が火を吹いてしまう。

 影から静かに様子を覗き見てみればワッチドッグ三機が銃口を構えながらゆっくりとこちらに近づいてきている。こちらの姿を視界に収めると同時に撃ち抜く気だ。

『どうにか意表をついて接近戦に持ち込められれば・・・・・・』

 何かないかとその場を見渡す。そして僕はあるもの(・・・・)を見つけた。

 これは使える。それ(・・)の存在を視野に入れた策が瞬く間に頭の中で浮かび、僕はすぐに実行に移した。

 僕はそれ(・・)を使って配置に着くと、その場所から近づいて来るワッチドック達に目を向けた。

 連中は僕が何もせずにそこにいると思ったままらしく、ゆっくりとお互いに配置につきながら仕掛ける体制を整えている。滑稽だ、既にお前達は僕を狩る側ではなく、僕に狩られる側になっているというのに。

 そうとも知らず、先陣を切った一機が木製の棚の影へ場所に飛び込んだ。




 先陣を切ったそいつは呆然としていた。当然だ、そこにはもう僕の姿なんてない。後から残りの二機も飛び込んでくるが同じ対応を返す。何処へ行ったのかと、探し始める三機。

 そんなに僕がお望みなら姿を見せてやろうじゃないか。僕は配置の場所、連中の頭上から、一番後方にいる奴に狙いを定めて奇襲を仕掛けた。僕の存在に気づき見上げたろころで時既に遅く、僕は落下の勢いに乗せて手に持ったフォークの先端を相手の頭めがけて突き下ろす。

『チェストォオオオオオオォォォォォォォッ!!』

 叫びとともにフォークは頭部の目に当たるであろう隙間から深々と刺さった。

 刺した箇所から火花が飛び散るのを見届けるまでもなく、僕は己の体重に任せてフォークを強引に動かし内部をえぐり、直後に相手の体を蹴りつけて刺したフォークを引き抜く。頭部を貫かれた相手は糸の切れた操り人形のように力なく崩れた。

 棚の影にいたはずの僕が何故、奴らの頭上に移動できたのか。秘密は僕が身を潜めた棚にあった。

 その棚は特別な作りになっており、棚の上に置いた家電用に電源ケーブルを通す為の穴が設けられていたのである。しかも僕の逃げ込んだ場所がちょうどその電源ケーブルの繋がれているコンセントのある場所だったので、僕はそれを登り伝って棚の上へと身を運べたわけだ。

 残り二機は僕の奇襲に意表をつかれつつも、すぐに銃口をこちらに向けようとする。

 だがもう既にこちらのペースに入った、後は押し切るのみ。

『ハァッ!!』

 僕は仕留めて崩れた最初の一機の身体を引っ張り上げ、二機に向かって突き飛ばす。連中は慌てて発砲するが、突き飛ばされた仲間の亡骸が射線軸で僕と重なり、銃弾は僕に届かない。

 その一瞬の隙に僕は連中の懐に飛び込んだ。

 懐に入ってしまえば銃はその力を示さない。銃は構える、狙う、撃つの三テンポの行動が必要であるのに対し、格闘武器はその場から相手めがけて振り上げるだけ。相手にもう主導権は握らせない。

 片方に足払いを決めて姿勢を崩した後、そいつの身体をフォークの薙払いで打ち飛ばす。その間にもう一機が僕に狙いを定めているようだが無駄だ。僕は振り返るまでもなく、逆手に持ったフォークを背後へと突き立て、相手の首を串刺しにした。

 お前達は密集していたが故にまとめて倒せる状態になっていたのだ。それこそ、こんな姿勢からでも攻撃できる程に。

 フォークを引き抜けば、二機目も一機目と同じように崩れ落ちる。先ほど打ち飛ばした最後の一機はその様子を見て勝ち目がないと踏んだのか、背を向けて逃げ出そうとした。

『逃がすか!!』

 逃げに入った相手の背中めがけ、僕はフォークをやり投げの要領で放った。弧を描くように飛んでいったフォークは吸い込まれるように相手に向かって飛んで行き、その先端が相手のうなじから深々と突き刺さった。

 人間で言えば即死の一撃であり、それはロボットの身体においても変わらなかったようだった。一撃をもらった相手はそのまま地面を転げ回り、そのまま動かなくなった。




『やった・・・・・・のか・・・・・・?』

 敵対していた相手が全て動かなくなった途端、僕は精神的に一気に疲れが押し寄せてきた。その疲れに抗えず、その場に崩れ込んでしまう。

『・・・・・・怖かった』

 ロボットの身体になって初めての「本気の戦い」に今頃になって恐怖が湧き上がった。こちらを取り押さえようとしていただけだったブラストルの時とは違う、こちらを本気で葬り去ろうとしてきた相手との「殺し合い」だ。自分より凶悪な武器を装備していた相手と戦ってよく勝てたと思う。一歩間違えば、僕の身体はこいつらの銃弾で砕かれていただろう。

 その光景が頭に浮かんでしまい、身震いした。

『ハハハ・・・・・・よく、戦えたもんだよな。臆病なくせにさ』

 弱々しくそう呟き、足腰は笑い出してへたり込んでしまう。僕はしばらく、その場から動けずにいた。

 まったく彼女を守るためとはいえ、よくこんな怖い思いができたと思う。人間の身体でなくなってもまだ命は惜しいのに。

 けれど彼女の怯えてる姿を見た途端、考えるよりも先に身体が動いていたのだ。恐怖よりも彼女を守らないといけない、そういう思考で頭がいっぱいになった。

『・・・・・・けど、誓ったからには守り通さなくちゃ』

 彼女の泣いている姿を思い出し、その時誓ったことを改めて胸に刻んだ。







『・・・・・・射撃型に「鉄砲使うな」なんて酷すぎだろ』

 住宅街の屋根上でイカズチはそうこぼしながら、屋根伝いに迫ってきていたワッチドッグ三機のうちの最後を仕留めていた。得物の銃を使い、棍棒の要領で殴り倒す形で。

『その割には勝負が一方的でしたけど?』

『こいつらが弱すぎんだよ、所詮は本格的な対PGG戦闘を想定して作られてない機体の改造機だ。本当だったら射的の的も同然だぜ・・・・・・あぁ、撃ちたかった』

『サラッと物騒なことを漏らさないでください』

 作戦エリアが住宅街ということもあり、下手に流れ弾で被害を出さないよう任務中での射撃兵装の使用が制限されている為である。

 そんな制限の中で射撃型のイカズチが派遣されているのは射撃抜きでも彼の戦闘能力が高いからもあるが・・・・・・。

『もっと適材適所で力を活かしたいぜ』

『現場戦力が少ないウチでそんな我侭は通用しません』

 単に都合のつく戦力が彼らの所属する組織にないだけだったりする。

『・・・・・・まぁ、こっちから打って出て正解だった。こいつら、背中にピストル弾発射するための簡易改造銃を積んでやがる』

『こっちから距離を詰めてなかったら最悪、狙い撃ちにされてたかもしれませんね』

『ああ、使われる前に潰せたのが幸いだった』

 イカズチが接近戦に持ち込まなければ、のどかな住宅街でピストル弾が飛び交う銃撃戦が起こっていたかもしれなかった。

『・・・・・・まぁ、向こうじゃそうはいかなかったみたいだけどな』

 イカズチはそう言って宮本家宅のある方向に目を向ける。

『真宝っち、銃声があったみたいだが・・・・・・01の動きは?』

『イカズチさんの言ったとおり、ご都合主義な展開になりましたよ。01が侵入してきたPGG三機と交戦、ついさっき二機目を撃破して・・・・・・あ!丁度、最後の一機を撃破しました。護衛対象にも被害はなさそうです』

『おぉ、思いのほか大金星じゃねぇか!』

『随分と嬉しそうですね』

 彼女の言うとおり、イカズチの口調はMT01の活躍を喜んでいる感じだった。

『まぁな、俺は期待を裏切らない奴が大好きだ』

 自分の護衛対象のもとに舞い込んだイレギュラー、MT01に最初こそ警戒していたものの今は真逆の感情を向けている。

 そして同時にある期待も寄せていた。こいつはきっとこの案件、宮本一家脅迫における切札ジョーカーになると。

『部長・・・・・・俺達はとんでもない戦力(お宝)を見つけちまったみたいだぜ』

 イカズチはそう言いながら自分の得物を背中に収めつつ、護衛エリアである宮本家宅へと戻っていった。


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