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異世界が日常化した世界のお話  作者: アンライク
第一章 泥被りの英雄と吸血鬼
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第7話 もう一方の戦い

かなり長文になりました

まだまだ戦闘シーンは続きそうです、はい


ビートハイスと龍牙達が戦闘している最中、体育館ではもう一つの戦闘があった


「しかしこれは苦しいね」


「ええ、吸血鬼の貴族と言うのはよほどやるようで・・・・」


グリアとミリアーナは背を合わせながら目で周りの状況を見る

そこには軽く十体以上はいるであろう紅い人間の様な物が取り囲んでいた


「どうですか?まさに血も涙もない血の傭兵部隊ですよ」


眼鏡の吸血鬼は手で示しながらそう告げる

吸血鬼は全くと言っていいほど身動きをしていない

いやする必要性が無いのだ。この血の傭兵部隊のせいで

吸血鬼は始業式用に用意されたパイプいすに勇雅に座っている

対してグリアとミリアーナは肩で息をしながらこの包囲網相手に戦っている

ほとんどの生徒は逃がすことに成功したが、数人はこの吸血鬼の魔術の餌食となっているのだ


「しかし風紀委員会は少し頼りなかったな」


「ですね・・・・・」


グリアが苦笑いを浮かべミリアーナがため息をつく


「そんな余裕があるようで――――――行けっ!!」


吸血鬼は血の傭兵部隊に指示を送り、それに従って血の傭兵が動き出した

グリアは両手に火球を作り出しそれを炎剣へと変化させ血の傭兵をたたき切る

ミリアーナは片手に水で円盤状の形を作り、それを投げ放つ

二人の攻撃によって血の傭兵は次々とやられていくが


「残念ながら私の創造力の方が貴方達の破壊力を上回っているようです」


フッと顔を少し下に向けて笑う

先ほど倒した血の傭兵から更に新しい血の傭兵が作り出される

これでは永遠にループするだけだ

唯一の終わりは自分達が倒れると言う選択肢だけだろう、とグリアの頭の中には嫌な思考がよぎる


「グリア・・・・・・」


ミリアーナはグリアの不穏な空気に声をかける

そろそろ腹をくくるしかないか、と再び血の傭兵部隊に目を向ける

そして両手の炎剣を消す


「おや?もう降参ですか?」


「降参はしません。ただ形勢逆転を図るだけです」


グリアは吸血鬼の方に向かって笑顔を向ける

吸血鬼はそれが気に入らなかったのか、眉をひそめて


「肉片にしてあげなさい!!」


その号令と共に血の傭兵が一斉に四方八方から襲ってきた

しかしグリアもミリアーナも焦らない

むしろ落ち着きを払っている

そして血の傭兵で吸血鬼からグリア達が見えなくなった瞬間それは起こった

辺りに暴風が吹き荒れ、次々と血の傭兵は壁に打ちつけられ血へと返って行く

時折、その暴風に伝わるように絶え間なく紫電が走り続ける

そしてそれはすぐに晴れる


「何だと言うのです!?」


怒りをあらわにしながらその暴風が起こった地点を見る

そこには鎧をまとったグリアとミリアーナがいた

ミリアーナは左手には大きめの籠手をつけて自身の身体くらいある弓と接続している

肩や足にはしっかりとした鎧だがスカートや胸元はベールの様なものも付いており、まるで森の妖精を思わせるような感じだった


対してグリアの方は軽装だった

可能な限り軽量化させ空気抵抗をなくしたそんな装備だった

そしてグリアが持っている武器は二つの槍だった

長さは刀身と持ち手が一対一の比率でどちらかと言えば剣にも近いような槍だった

そしてところどころ棘の様なものが出ていた


「さて、吸血鬼さん。今度はこちらの番です」


「思う存分味わってくださいね?」


グリアが二つの槍を構え、左足を後ろに引いた

ミリアーナはすでに数本の魔力の矢を編み出して弓を引き絞っていた


呪滅霊装(ギルティ・グレイヴ)ですか。面倒な力を持っているものです」


吸血鬼も自分の手首を少し切り、その血で自らの所有する剣を作り出した

その剣は刀のような作りをしており、刀身が血のように赤い剣だった

そして最も特徴的だったのは


「その剣。お前とつながってるのか?」


「ああ、これでも血が吸えるように吸血鬼も進化しているんだ。自分達だけだと思うなよ」


吸血鬼は椅子から立ち上がり、地面を蹴ってグリアに突進した

グリアは低姿勢で向かってくる吸血鬼の顔面向けて右手にある槍を放つ

小さな雷撃で辺りから火花を散らす

しかしそれを交わし、下から剣を出して左脇下を狙う

グリアもそれを視認すると右手から流れるように回転し、吸血鬼の左後ろに立つ

そのままグリアは左手の槍を吸血鬼の首めがけて振り下ろす

吸血鬼はその槍を左腕で受け止め転げる


「ちっ!再生能力を生かしたか!!」


「そうですよ。こういった戦い方はあなたにできないでしょう?」


左腕を切られ血を流しながらグリアの背後に回る

そしてそのまま上段からグリアの背を切りつける

だがそれは叶わない

吸血鬼は上を見て、踏み込むはずの脚の力のベクトルは後ろへと変えてグリアから離れる

そこには幾つもの矢が放たれ地面をえぐり砂煙を巻き起こす

吸血鬼は眼鏡の位置を再生した左手で直しながら砂煙の中を見る

そこにはゆらゆらとした黒い影が出来ていた

間違いなく敵はいる、と確信して吸血鬼は足を踏み込んだ

だがその瞬間、自身の周りが少し暗くなった

そのことに不審に思い吸血鬼はすぐに上を向いた

そこには一本の槍を両手で振り上げたグリアが飛んでいた


「ぐっ!!」


吸血鬼は身体を無理に回転させその槍を剣で逸らす

しかし、重量と力が入った槍を早々逸らすことはできずそのまま槍は吸血鬼を地面にたたきつけ心臓を槍の穂先でえぐりつぶした


「やったか!?」


グリアは確かな感触を手にそう確信した

しかしグリアはすでにこの時点で敗北していた

それはただ一つだけの要因

吸血鬼のことを知らないがゆえの敗北・・・・・・・

グリアは背中に冷たい何が走るのを感じ、後ろを向いた

そこには左手で眼鏡の位置を直しながら右手で剣をふるっている吸血鬼だった

そしてその視界に入るのは大きな粒となったグリア自身の血だった


「グリアぁ!!」


体育館の二階―――――本来何らかの競技があった時に観客用の席に身を隠していたミリアーナが叫び、弓を引き絞る

しかしミリアーナが見たときには既に標的を見失っていた


「成程、これは結構な美人ですね」


ミリアーナの背後からそんな声が聞こえ、ミリアーナは体を硬直させた

そして目を見開きながら背後を確認する

そこには嘲笑を顔に張り付けた吸血鬼がいた


「吸血鬼相手にはなかなかの勝負でした。私でなければおそらく負けていたでしょう」


そして体育館の砂煙がはれると吸血鬼は一瞬グリアが倒れている一階の方に視線を向ける

そこには血を背中から流し倒れているグリアの近くに槍が一本そしてもう一つは


「ほう、槍に炎の魔力を宿し自身の影のように見せた。やりますねあなたたちも」


地面に槍が突き刺さったままだった


「ですがそれもこれで終わりです」


吸血鬼が剣を振り上げた

ミリアーナは咄嗟に目をつむった

それから数秒、何の衝撃も来なかった

否、唯一来たのは


「・・・風?」


後ろに振り向くと吸血鬼の右腕が剣と共に宙を舞っていた


「あなたは!?」


「知ってくれているようで光栄だ」


その声はミリアーナの後ろから聞こえた


「くっ、あなたが来るのは予想外です」


「そうか?私もここの生徒だが?」


そう言いながらミリアーナの前に出る

そこにいたのは黒色の軍服を着た


「鷺ノ宮先輩・・・・・・」


「よく持ちこたえた」


日本刀を片手に持ち、勇雅に黒髪を風になびかせてやってきた鷺ノ宮は自らの所属を名乗る


現異(げんい)学園、生徒会風紀委員長。解決者順位(ハンターレーティング)第八位、鷺ノ宮・若葉。・・・・・・参る!!」


その瞬間、若葉が疾風へと変わった


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