第6話 吸血鬼の玩具者
「本当にあなたはいろんなところで邪魔をする。あのダークネスエルフの件と言い、さっきの件と言い・・・・・」
「お前が常にいらんことをするからだ。自重すればどうだ?」
フッ、ビートハイスは鼻で笑う
「人が恐怖や哀しみで歪む表情と言うものは見者ではありませんか。我は好きですよ」
「相変わらずそれで貴族が務まってているのだから吸血鬼の国はよほどおかしいと見える」
「ええ、おかしいですよ。今だに保守派がいるくらいですからね」
龍牙はその言葉に深い溜息を吐く
自分のことだとは分かっていないとは何と愚かしい、無知と言うのは怖いものだな
「先にあなたから排除させてもらいましょう。その後にゆっくりとお友達を連れて行ってあげましょう」
死霊が龍牙の足元に来た瞬間、八つの雷柱が上がり死霊を霧散させた
「流石にあなたには死霊が取りつきにくいようで、なら他の魔術で対抗させていただきましょう」
「そんなのんきなことができると思うか?」
龍牙は一歩でビートハイスの懐に入り込む
「その程度の予測ができないほど我も馬鹿ではありません」
ビートハイスもあざ笑うかのように背後への跳躍を開始しようと足が地面から離れかかっていた
「アウェーには不確定要素と言うものがあるんだよ」
ビートハイスはその言葉を聞いて背後を振り返った
しかし背後を振り返る前にビートハイスの首に冷たい感触の鉄がめり込んで行くのを龍牙は見た
そしてビートハイスの首はあっけなく宙を飛んで自身身体の後ろに落ちた
ビートハイスの首からはまるで噴水の様に血飛沫があがり龍牙達の身体をぬらしていく
もちろん、ビートハイスの首を断った人物にもだ
鮮やかだった銀髪は今では血に塗れ、ツインテールにくくっていた黒いリボンも血のシミが出来上がっている
だが、血と似た色をした瞳だったが血なんかよりもよっぽどしっかりとした色があった
まあ、胸は・・・・・中の下ぐらいだろうな
「すまない。助かった」
「どうやら一人で解決できそうだったので私はいりませんでしたね」
銀髪の少女はプイッと明後日の方向を見た
「いや、誰もそんなこと――――」
そこで龍牙は気付いた
彼女が持っている剣が震えていることに・・・・・・・
どうして僕の周りは素直じゃない子ばかりいるんだ?と内心そう思いながら彼女が持っている剣の手に後ろから自分の手を重ねた
「こういうときは僕を頼ってもいい。これは生きて行く上には不必要なものだ。リアネス」
そう言うとリアネスは少しだけ力を抜いて目を細め龍牙にもたれかかってきた
ビートハイスが言っていたダークネスエルフとは彼女のことだ
本来ダークネスエルフは肌の色が人間よりも少し黒く、髪の色が正反対に白い
だが彼女はダークネスエルフでありながら肌の色も白くその上、吸血鬼の様に真紅の瞳をしていたのだ
そのことに興味を持ったビートハイスは彼女を玩具にしたのだ
どのようなことを受けたのは知らないがその恐怖は今だに取り除かれていないらしい
「随分と余裕でいらっしゃいますね?」
背後から声が聞こえリアネスと共に振り返る
そこには首のない身体が落ち上がり、首から出てきた血がまるで纏うように首の上を回りビートハイスの顔を形成した
「さすが吸血鬼の貴族か、あの程度で死んでくれたら苦労はしないか」
「そうです、我は貴族です。簡単には死にません」
両腕を広げたからかにそう宣言するビートハイス
龍牙はリアネスを護りながら、目の前のビートハイスを睨みつける