第3話 彼の不幸はこれから始まる
それから数日後、龍牙は二年になって初めての始業式を迎えていた
「ふぁぁ・・・・・眠たい」
龍牙は目をこすりながら上履きを履き替える
「おいおい、昨日の夜、何やってたんだ?お前」
龍牙の隣には数少ない友達である紅坂・海斗がいた
特に顔がイケメンの分類に入るわけでもなく、平凡中の平凡
特筆する所と言えば、髪が他の男子より少し長いと言うところだろう
海斗は龍牙の肩を組んで顔を近づけてきた
「で、何をしてたんだ?」
「僕は常にお前みたいに万年発情期じゃないんだ。一緒にしないでくれ」
手でシッシッと追いやると海斗は絶望したような顔で
「毎日おっぱいおっぱい言ってる奴には言われたくねー!」
「お前だって言ってるだろうが!!」
そうして海斗と龍牙の殴り合いが始まった
◆◇◆◇◆◇
「本当に君達は朝から何をしているんだ?」
目の前に椅子に座り足を組んだ若葉が龍牙と海斗を叱っていた
だが海斗の方はハイソックスで包まれた足を見てニヤけ顔の状態で話を聞いていた
龍牙は頬をかこうとして触ると痛みが顔全体に走り、触ることをやめた
先ほどげた箱がある前で恥ずかしい言葉を連呼しながら殴りあった結果、風紀委員長を務めている若葉さんに見つかり、魔術を使われ今にいたるのだ
殴り合って、魔術をくらわされてなんで二年になった初日からこんな災難が起こるんだ?
「そんなしょうもない喧嘩は責めて男子だけがいる場所でしてくれ」
若葉はため息交じりでそう龍牙達に言う
「しょうもないとはなんですか!!おっぱいは男の夢なんですよ!!」
やめろ海斗!おまえは女子生徒の、しかも上級生の人になんて話ししてんだ!?
僕まで同類にされるじゃないか!!
「如月君。君は関係ない、僕まで同類にしないでくれ!みたいな表情はやめたまえ。君だって大いに関係あるんだぞ?」
なんで考えてことばれてるの!?
「君は表情に出過ぎだ。まあ、傍から見ていたら面白いが・・・・」
龍牙はそこで膝と両手を床についてうなだれた
そしてそんなうなだれている龍牙の肩をたたく人物がいた
「大丈夫だ。他の未来があるさ!」
海斗が満面の笑みでそう答えた
「それってお前が言えることなのか?」
「ま、龍牙とは違ってもてるから」
と言いながら懐から出したものは二通のラブレターらしきものだった
龍牙はそれを見るなり更に落ち込んだ
この世界に、神なんていない・・・・・・
◆◇◆◇◆◇
「全く、なぜ我々が尻拭いをせねばならんのだ」
マントをはおりフードを被った二人組の片割れがそう毒づく
「まあ、保守派のリーダー格の一端は彼女だろうそれを潰せば・・・・・」
「しかし我らのリーダーもなかなか癖のある人物です。今後どうなるか―――――」
「ええ、楽しみで仕方ありません」
二人の笑い声が辺りを響かせる
そして彼らは目の前に歩く人物を見つける
それは学生服を身にまとっており、腕には生徒会に所属している者がつける腕章があった
「ちょっとよろしいですか?」
フードの人物は学生の肩を叩いた
「はい、何でしょう?」
「体育館はどちらで?」
「そこの角を曲がれば見えてくると思いますが、貴方達は――――」
そこで学生の言葉を途切れた
なにせ、学生の胸から背にかけて紅い剣の様なものが突き刺さっていたからである
しかし学生の胸には何かが突き刺さった後がない
そのまま学生は後ろへと倒れ、血だまりを作り出した
「相も変わらずあなたの魔術は暗殺向けですね」
「通常戦闘でもとても役に立ちますよ?戦争になったらもっと――――」
「後、趣味の悪い魔術です」
そう言って二人はフードを取った
一人は黒髪に赤ぶちの眼鏡をかけた人物、もう一人は灰色の黒髪を片側だけ伸ばして眼を隠している人物。そして二人の共通点はどちらも青年であり、そして
血の様な真紅の色をした眼をしていた
「そんなにも戦いたいのなら我々が相手をしてあげましょう」
灰色の黒髪の青年はこの学園のことを思い出し、そう呟く
それを聞いていた眼鏡の青年は
「あくまで僕達の第一目標は保守派のリーダー格である人物の抹殺です。それ以外は無用な殺傷は避けてください。処理が面倒です」
「抵抗してきたら?」
面白半分と言った口調で灰色の黒髪の青年は聞く
それを聞いた眼鏡の青年は口端に笑みを浮かべてとがった犬歯を見せた
それは人間ではありえない、確実に突き刺す目的で発達した鋭さだった
「いいですよ。あなたがしたいようにすれば」
そして二人は歩きだし揃ってこう言った
「その生ぬるい正義を私達が完膚なきまでに潰してあげましょう」