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ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜  作者: KeyBow


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第34話 英雄の功績と従者の誤解

 昼食摂った後、セスティーナに案内され、一行は領主の館へと向かっていた。

 午前の買い物で身なりは整えたものの、これから始まるであろう詰問を思うと、ディノッゾの気は重かった。道中、セスティーナの右側をディノッゾが、左側をリリアが歩く。リリアは、まるで姉妹のようにセスティーナと手をつないでいた。

 その道すがら必然的に、荘厳な石造りの騎士団本部の前を通った。その時だった。

 街の城門の方から一団の兵士たちが、二人の男女を連行してくるのが見えた。二人とも森での過酷な生活を物語るように、衣服はボロボロで、泥と煤にまみれている。その姿は、つい半日前までのディノッゾとリリアの姿そのものだった。

 兵士たちはまるで罪人でも扱うかのように、雑に彼らを扱い、騎士団の建物の中へ入れようとしていた。

「離せ!俺たちは間者などではない!」

 男の方が抵抗するが、兵士たちは聞く耳を持たない。

「黙れ!死の森から現れた者が、不審者でなくて何だというのだ!騎士団の地下牢で、洗いざらい吐かせてやる!」

 そのやり取りと、男の顔を見て、ディノッゾは息を呑んだ。


(……こいつは!)


 見覚えがある。間違いない。討伐隊に参加していた、Bランクパーティーの若い剣士、アレンだ。そして彼に庇われるようにして連行されているのは、魔法使いの妹、レイラ。

 同じ地獄を味わい、なんと生き延びていた仲間。

 その仲間が罪人として扱われ、汚いもののように引きずられていく。

 ほとんど会話はしていないが、それでも同じ馬車に乗っていた仲間だ。


「アレン!レイラ!」


 ディノッゾの言葉を聞き、アレンとレイラが顔を上げた。その目がディノッゾを捉えた瞬間、彼らの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


「ディノッゾさん…!生きてたのか…!リリアちゃんも…!」


 アレンは、再会の喜びと、理不尽な状況への怒りが入り混じった表情で叫んだ。

 その光景を見たリリアの瞳からも、ボロボロと涙が流れ出した。


「アレンさん…レイラさん…!」


 彼女は、自分とディノッゾを救うために命を落としたポータの顔を思い出し、胸が張り裂けそうになった。

 そのリリアの涙を見て、セスティーナはハッとした。リリアはアレンとレイラの名を呼び、彼らが「生きている」ことに、まるで奇跡のように涙を流している。


(まさか…この人たちは……)


 そこで初めて、セスティーナはディノッゾたちが語った、あのドラゴン討伐の真実を、心から理解した。彼らは、ドラゴンを討伐しただけでなく、その旅で仲間を失い、それでも生き延びてきたのだと。そして、目の前の二人は、その失われた仲間だったポータの弟と妹。


「二人を、いますぐ放すんだ!」


 ディノッゾが、静かに、しかし底知れない怒りを込めて言った。

 連行している兵士には目の前で叫ぶ男しか見えず、剣を抜いた。

 ディノッゾが少し前に出たので、兵士からはセスティーナの姿が見えない。

 もし見えていたら剣など抜かず、セスティーナに指示を仰いだことだろう。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 街が揺れた。いや、違う。揺れたのは、ディノッゾが立つ、その足元だけ。彼を中心に、まるで小規模な地震のように、地面が激しく震動したのだ。兵士たちが、バランスを崩してよろめく。そして、彼らの背後にある、荘厳な騎士団の建物の壁がミシミシ、と音を立ててヒビが入った。


「な、なんだ!?地揺れか!?」

「いや、揺れているのはここだけだぞ!」


 兵士たちが混乱に陥る。セスティーナは、その震動の発生源が、隣に立つディノッゾであると本能的に気づいていた。彼女が見たディノッゾの顔は、これまでのどんな顔とも違っていた。

 穏やかな御者の顔でも、戸惑う中年男性の顔でも、戦士の顔ですらない。

 ただ、静かな、しかし底知れない怒りに満ちた、まるで神か悪魔のような顔。


「二人をいま直ぐ放すんだ!」


 ディノッゾがもう一度、静かに言った。

 それは普通の命令ではなかった。

 ただ、世界のことわりそのものを書き換えるかのような、絶対的な響きを持っていた。

 兵士たちは、恐怖に縛られたように動きを止め、兄妹の腕を、反射的に離してしまっていた。

 セスティーナは背筋を冷たい汗が伝うのを感じていた。


(これは非常にまずいわ・・・)


 この男をこれ以上怒らせてはならない!とセスティーナは戦慄を覚えた。

 本気で怒らせれば、この街は本当に消し飛ぶ。その気になれば彼は1人でこの街を落とせるだろう…そう確信したのだ。

 彼女は、聖騎士としての全神経を、目の前の男の感情を鎮めることだけに集中させた。

 どうするか?何か、何かないか?意表を点かなければ・・・


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