終章 最後の語り手
「これで、物語は終わり」
——この物語を、最後まで見届けていたのは、境界に立つ一人の元天使だけだった。
「世界には境界だけが残っていく」
白と黒の翼をたたみながら、ルシフェリアは静かに目を閉じる。
「物語は終わった。英雄は帰還して、魔王は消滅した」
誰に聞かせるでもなく、呟く。
「骸骨勇者も、感情的な魔王も、そんな魔王の可愛い妹も——世界は、静かに“なかったこと”にしてしまう」
ルシフェリアは、空の向こうを見た。
「けれども、もしかしたらどこかの世界では、もう一度、ちゃんと話し直せているかもしれないわね」
ルシフェリアは、三人の温もりが残るベンチへと腰掛けた。
「弱くて強いただの骨と」
「強くて弱い女の子」
「正しくありたい天使が妹で」
「——それって、もう英雄譚なんかじゃないけど」
何でもいい、と元天使は思った。
英雄と魔王が対立する物語は、もうたくさん見てきた。今が希望を約束したところで、過去の悲しみは変えられない。
「久しぶりね、この感覚」
けれど、“誰か一人のわがまま”が、神様にノーを突きつけた話は——
「……案外、悪くなかったわよ」
境界の彼方へ消えていった、見えない誰かに向かって。
元天使は、立ち上がりながら、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「じゃあ、せいぜい面倒くさく生きてきなさい、骨」
「英雄でも魔王でもない、ただのバカとして」
そう言い残して、元天使はこの世界の境界へと羽ばたいていった。
——この物語は、ここで終わる。
あとはただ、どこかで続いているかもしれない“ハッピーエンド”へと、それぞれの希望を残すだけだった。
読んでいただき、ありがとうございました!
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丁寧なレビューも本当にありがとうございました!
骨を死の舞踏のように喜劇的に描きながら、死生に対する葛藤を、骨という無力さや諦観から受容しつつも、自分が続くことにしっかり向き合っていくような構造を、こっそり狙ってみてたんですが、あまりにも的確な分析だったので、密かに歓喜しておりました。
読んでいただいた皆様に、『骨太な幸福』が訪れることを願っております!




