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11-4 たとえ名前を忘れても

「あの、英雄様」

 聖女が、俺の前に現れる。


「私は、きっとそのうち——英雄様のことを、ちゃんとは思い出せなくなります」


「それでも、どうか信じてください。毎朝“誰かのために聖水を作るとしたら”、その“誰か”は、きっとずっと英雄様のためですから」


「……それはそれで嫌だな」

「嫌ってなんですか! その心をお清めしますっ!」

「や、やめろよ! クソあちぃんだよ、あれ!」

 でも、まあこんなのも悪くはない。


 記憶が消えても、なんか忘れらんねーって感覚が残っちまうのは、骸骨の呪いみたいで面白いしな。

「英雄様との契約は、ちゃんと書類にして残しておきますよ」

 リサが、鼻をすすらせながらペンを走らせている。


「世界補正で、きっとすぐに白紙化されるでしょうけど、その瞬間まで、“骨のわがまま”として、ちゃんと署名付きで世界に存在させますから」

「最後まで書類かよ、お前……」


「はい、書類しか残せない人間なので」

(セレスは残ったけど、俺みたいな凡人は記録にも残れねえか)

「なんかよく分からないけどさー、悪魔ぶっ壊せたから満足〜次の世界でも、なんかあったらぶっ壊しに行くねー」

「世界にとっては割と迷惑な約束だな、それ」

「はい、どーん!」

 姫の笑い声も、だんだんと遠くなっていく。

 最後に、ルシフェリアが近づいてきた。

「さてと。あなたとの物語はここまでかしら」

「そうみたいだな」

「最後に、一つだけ」

 ルシフェリアの目が、少しだけ優しくなる。


「自分の信じる正義と共に、もう一度羽ばたくことができるなら。それって、多分——この世界に残せる、いちばんバカな"わがまま"よ」


「お前にしては珍しく、ロマンチックなこと言うな」

「さっさと消えなさい、骨」

 ルシフェリアが、軽く頭蓋骨を弾く真似をした。


 でも、当たらなかった。

 もう指先が、すり抜けてしまうから。


「気をつけて行ってきなさい。世界の外側はだいぶ広いんだから」


 世界の輪郭が、柔らかくほどけていく。

 境界線だけが、細い光として残る。

読んでいただき、ありがとうございます!

定期更新してますので、よろしくお願いします!


ブクマ登録していただけると、感謝感激雨あられです!

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