11-3 僕が勇者で、彼女は魔王
「……ユウト、戻って来たのね」
魔王の器が、ゆっくりと身を起こした。
レイナの魂は、もう回収されてしまったはずなのに。
「えっ、お前どうして!」
「ようやく会えたと思ったら、これで物語が終わっちゃうなんてね」
「消えたんじゃ、なかったのかよ……」
「まだ回収されてなかったの。私の魂を、悪魔が保険に残してたみたい」
魔王が、少しだけ笑った。
いつものような覇気はなく、今にも消え入りそうなほど弱々しかった。
「最後に、一つだけ言っておくわ——残された時間は少ないようだし」
まっすぐ、こちらを見る。
「……ごめんね、ユウト。好きだったのに、嫌がるようなことしちゃって」
あまりにも、今さらで。
あまりにも、ずるい一言だった。
「そういうことを、ここで言うのは卑怯だろ」
終わりの間際で、そんなことを言われても、何も残せないし、応えられない。
この感情だって、きっと一緒に消えてしまう。
「俺たちが消えないって、未来じゃなかったのかよ」
「そうね。本当なら——」
レイナが、空を見上げた。
「私が全部をぶっ刺してでも、そうしたかったけど、世界の方が一枚だけ上手だったわね」
「でもね——」
少しだけ、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「こうしてまた、“最後にやり直せる場”を用意してくれたんだから、案外、世界も話が分かる奴なのかもしれないわよ?」
「知らねえよ、あーあ、ほんと面倒くせぇよな。今のところ、俺の評価としては“クソ仕様”でしかないけどな」
強がる骨を見ながら、魔王が隣で笑っていた。
「どうすりゃ良かったのかな……」
魔王の顔を見て、少し離れたところにいるリリスの顔を見ていると、どうしてか一生懸命生きていたレイナの姿を思い出してしまう。
(……たしかに、俺が好きだったのは)
(あの頃、“天使みたいだ”って言われてた、普通の女子高生だったお前だったけど)
「どうしたの、ユウト君」
ユウトは、ユウトとしての記憶を思い出していく。
あの時の感情や、レイナの表情。
——音や匂い、肉体があった頃の思い出。
「可愛い猫見つけて写真送ってきたり、未読スルーしてたら、変なスタンプ連打してきたり、俺のスマホ勝手に覗いて不機嫌になって——」
「嫌そうに言うのね。やっぱり嫌いだったの?」
魔王が笑顔で、骨の英雄を見る。
彼は頭蓋骨を横に振りながら、骨を軋ませて立ち上がった。
「そんなことはない。もっとちゃんと話せば良かったって、後悔するくらいにはさ……」
骨の英雄が傅いて、魔王の手を取る。
「やっぱり俺、お前のことが一番好きだった」
「……何よ、それ。当たり前のことを今さら言うんじゃないわ」
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