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11-2 さよなら

「でも、確かに」

 リサが、ペンを止めた。


「英雄様がいない世界に戻るのは、ちょっと寂しいですね。契約書と決まりごとだけじゃ、心って埋まりませんし」

 詩人のような物言いで、岩の上に物憂げに座っていた。


「珍しくロマンチックなこと言い出したな、お前」

「でもやっぱり、無駄に興奮しちゃう。全部無駄、ああ悲しくて、興奮する!」

(ヤバい変態だな、マジで)

 そう言いつつも、リサの指先がわずかに震えていた。


「……あれ? 今、何の話を……あれ? メモが一行……空白?」

 リサが目を見開いている。

(やっぱり来たか)


 世界の修正は、俺たちの存在だけじゃなく“記憶”にも入り始めている。


 まずは細かな事実から。

 英雄とは遠い記録から、静かに。


「英雄様! 大丈夫です! 私は絶対、忘れませんから!!」

「神に誓って、英雄様を忘れない……!」

 聖女が何度も祈りを捧げている。


「その誓い、世界からしたら真っ先に上書きしたいところだろうな」


 でも、まあ悪くはねぇのかな。

 たとえ世界が変わっていくとしても、そう思ってくれる奴がいるってことだけで。


「……場所、変えようぜ」

「ここ戦場だしよ。どうせ消されるにしても、もうちょいマシな場所がいい」

「そうね。最後くらい、“魔王城の中庭”のベンチくらいは用意してあげましょうか」

 ルシフェリアが頷く。


「はい。お姉様が、一番嬉しそうに話をしていた場所ですから」

 リリスが、目を伏せながら微笑んだ。


「では転移しますね。座標指定。魔王城中庭」

 黒い尖塔。洗濯物とオークの腰布がはためく中庭。

 あいつと見た魔王城の風景が、静かな今と重なり合う。


「なんでお前、こんなところにいるんだよ」

 ベンチの上に魔王の器が横たわっていた。

 中身は空のはずだというのに、声をかければ起き上がりそうな気さえしてしまう。


「まあ、終わるなら——こんなもんがちょうどいいのかもしれねえな」

読んでいただき、ありがとうございます!

定期更新してますので、よろしくお願いします!


ブクマ登録していただけると、感謝感激雨あられです!

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