10-4 終焉の祝砲と、戦場の遺骨拾い
「——本体、崩壊開始です!」
リリスの声が、現実へと俺を引き戻した。
悪魔の身体のあちこちに、亀裂が走っている。
天使の白と魔王の黒が、不格好なまま露わになっていた。
「先代魔王の魂を消滅させた結果——」
「“高位の天使”の側面だけが残った状態です」
リリスが、解析結果を重ねる。
「気に入らない。こいつも要らなくなったら、廃棄ってわけ?」
ルシフェリアが、冷たい目で天を睨んだ。
「もう、この世界を変える可能性ではないわ——ただの“天使の残骸”。私みたいにね」
「なら、ぶっ壊しちゃおーう!」
姫が、砲台の上に立ち上がった。
「今よ、姫! 思う存分、やっちゃいなさい!」
ルシフェリアが親指を立てる。
「了解ーー!! 王国特製・境界対応型・対悪魔破壊主砲〜〜!」
「ネーミングが適当すぎますっ!」
聖女のツッコミも無視しながら。
「はい、どっかーーーん!!」
物語の終焉を知らせる祝砲が、悪魔を貫いた。
消滅する天使と、崩壊する魔王の瘴気と、姫のマジで意味不明な火力が、全部混ざり合って——悪魔の身体は、無数の光の破片になって霧散していった。
(どこかで見てるか、レイナ)
世界の悪役は——英雄でも魔王でもない連中によって、派手に打ち砕かれたのだった。
◇
「……やったのか?」
俺は、地上でぼんやりと呟く。
聖剣なんてもう無い。指の骨も何本か無くなっていた。
「英雄様っ! よくぞ、ご無事でっ!」
聖女が駆け寄ってくる。
「欠損とかありませんか!? うわ、たくさんある!」
「あとで一緒に拾いましょう! 見落としてはいけません!」
「完全に戦場の遺骨拾いの図なんだよなぁ……」
捲し立てるような勢いの聖女に、俺は苦笑する。
「王都・教会・商会の記録。旧英雄譚周辺の扱いが、かなり変更されていますね」
「多分、セレス札の信用は崩壊しましたが——」
リサがあーあ、といった様子で、少しだけ嬉しそうに微笑んだ。
「ちなみに王国・教会・商会の三者保証による“復興債”を発行済みですよ。今度は、物語頼みではない、三位一体の信用モデルとして」
リサが忙しそうに帳簿をめくっていた。
「簡単に言うと、“物語は終わった”ってことね」
ルシフェリアが翼を畳みながら言う。
「旧英雄譚が改変されたことで、世界全体の修正はかなり小さく済むはず。ただ、その代わり——」
ルシフェリアの視線が、俺とリリスに向けられる。
「“不要な存在”の修正が、これから少しずつ始まるでしょうね」
リリスが柔らかく微笑んだ。
(ついに来ちまったな)
世界は助かった。
セレスの英雄譚も、この物語で閉じた。
——じゃあ、俺たちは?
骸骨英雄の主人公と、ヤンデレ元カノの魔王とリリス。
筋書きから外れて生まれてしまった、“物語に不要な存在”は——
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