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10-3 きっと俺も、英雄だった

 悪魔の胸に、聖剣セレスティア・オリジンの聖性がぶっ刺さる。


 天使の白い輪と黒い翼が、剣の軌道に沿って真っ二つに裂けていた。


「——お前が真の英雄、だと……?」

「驚いたか、魔王。俺も同じ感想だった」


 俺の中から、別の声がする。

 この身体の、本来の持ち主——先代英雄セレスの声。


「“俺の聖剣”を、“俺”が握って、お前に叩きこんでるんだ」


「おまけに、“世界のため”じゃなく“自分のため”。そんな意味不明な物語、最初から用意されてるはずがない」


『英雄、貴様ッ——!』

 悪魔の中から、別の怒気が混ざった声がした。


『お前は“世界のための死”を受け入れたはずだ! なぜ今さら、その物語を翻す!』

「翻してねぇよ。今の俺はただの亡霊さ」

 セレスは、静かに言い返した。


「“自分のためだけの人生”で終わるのが嫌だって、最初は思ってた。ただ、あの時は——“他に選択肢がない”って、思いこんでただけだよ」

 セレスが自嘲気味に笑う。


「それを、“骨の方の俺”がぶっ壊しに来やがったんだ」


「一度くらい会って、文句を言ってやろうと思ってな——カジノで全財産擦っちまうと、あり得ないって言われるような、綺麗な生き方してんじゃねぇよって」

 巻きこまれながら、俺もツッコむ。


「やかましい。俺は俺で一生“理想の英雄”やらされ続けてるんだから」

 セレスがバカなことやってんな、と笑っているような気がした。

 光は、先代魔王の魂に到達した。

 怒りと、諦めと。絶望を煮詰めたような復讐の黒と対峙する。


「英雄セレスよ。今度こそ、決着をつけよう」

 その深淵が、じっと俺たちを見ていた。


「“世界のための物語”ではなく——“俺たちの物語”として、な」

「しゃあねぇな。後輩に手を貸してやるか」

 セレスが冗談混じりに応じる。


「“旧英雄譚”は閉じる。俺たちの新しい物語の素材となって——さあ、終幕だ」


聖剣セレスティアよ、この物語を書きかえてくれ!」

「俺の復讐は終わらない。ここで終わらせて堪……」

 刹那。聖剣の光が、黒の核を包みこんでいった。

(物語って、どこまで続いていくんだろう)


 浄化の光と渦巻く闇を背景に、セレスが、最後に俺に告げる。


「お前のわがまま、ちょっと気に入ったぜ」

「お前の身体も丈夫で良かったぞ」

 俺は、柄を握ったまま笑う。


「お疲れ、先代。ゆっくり休めよ」

「……おう。お前もじきにこっちに来るんだろ」

「さあな。すぐには面倒くせぇし、もうちょっと彷徨ってから考えるとするよ」


 光と闇が共に収束する。

 観測の復活と合わせて、聖剣の刀身に、深いひびが走っていき、

 ピキッという崩壊音がした、次の瞬間——


 聖剣セレスティア・オリジンは、キラキラとした光の粒のようになって、天へと拡散していった。

(不思議な光景だな)


 まとめて、一つの“終わった物語”として、世界の外側へと送り出されていくのだった。

読んでいただき、ありがとうございます!

定期更新してますので、よろしくお願いします!


ブクマ登録していただけると、感謝感激雨あられです!

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