表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/65

10-2 骨と意地と、一振りの剣

 ——世界をぶった斬ってやったはず、だった。


 聖剣セレスティア・オリジンを振り下ろした瞬間、金色の光と悪魔の魔力の渦で、意識がぐちゃぐちゃにかき乱される。

(これ完全に死ぬ時のやつだ……)


 骨が砕ける感覚が、全身に走った。


 肋骨も、背骨も、手足も、バラバラに弾け飛んでいくみたいに軽くなる。


「無理だろ、俺には。どうにかしてくれよ」

 俺は弱音を吐く。


 それでも何故か——

 柄だけは、離せなかった。

 魔力の激流の中でも、聖剣セレスティア・オリジンは光を放ち続ける。


 感知スキルが告げる狙いは悪魔の深奥。胸の奥でこいつを動かしてる、先代魔王の魂だった。

(頼むぜ、セレス!)


 あと剣先一つで届く——その瞬間だった。


『——属性:聖。対象概念:英雄及びセレスティア・オリジン』

「概念防衛発動——不適格存在を排除」

 冷徹な声が響いた。


 聖剣の刃と核の間を、薄い膜のような光が覆う。

 それは厚みを増していき、巨大な障壁となって俺たちの一撃を弾き返した。


『不正な魂を検知』

『聖剣は“正しき英雄”のための武器である』

『異世界魂の権限は、セレス英雄譚から逸脱——拒否』


「は?」

 バチィィッ、と、聖剣セレスティア・オリジンから逆流する衝撃。


 骨の身体が、空中で粉々に砕け飛んだ。

(お、おいおいおい!?)


 頭蓋骨が回転しながら、空と地面が何度も入れ替わっていく。かろうじて握っていた右手だけが、聖剣と一緒に宙に浮いていた。


「英雄様ぁぁぁぁ!!」

 遠くで聖女の悲鳴が聞こえた。

 ルシフェリアの翼が、俺を追いかけるために広がる気配。


 だが、それよりも先に——


『物語は終わった』

『聖剣の権限は、“正しき英雄”に与えられる』

 天頂から降ってくる、いくつもの声。

 世界の“約束”そのものが、俺に向かって不適格を突きつけてきていた。

(……本当に面倒くさいな、この世界)


 バラバラになっていく身体を横目に、レイナの顔を思い出していた。


 俺の右手と聖剣セレスティア・オリジンが、落下途中でふっと止まる。


 ルシフェリアの翼が、光と闇の渦の中で俺たちを受け止めていた。


「境界、再指定。“英雄の真性”を優先——肉体に選定された魂。魔王の承認した魂」


「さあ、行きなさい骨。リミナル・セイント!」


 彼女の翼から、白と黒の術式が溢れ出す。

 天から降る閃光と正面衝突し、ぎりぎりのところで全てを食い止めている。


「物語の約束なんて知らないわ」

「今ここに居るお前は、ただの骨でも異世界魂でも、英雄の身体の持ち主なのよ」


 俺はその間に自分の身体を組み立てていく。ちょっと骨折してるみたいだが、動けば何でもいい。


 どうせ俺はカッコつけたって、カッコのつかないバカな骨でしかないからな。


『境界干渉を検知。優先度再評価——』

 天界の声が、ルシフェリアに向けて警告を放つ。


「長くは持たない。出力を上げないと」

「でも、これ以上は……!」

「私も、やります!」

 その隣で、リリスが両手を組んだ。


「宝具観測——上書き。聖剣セレスティアの権限フラグを、“英雄様の身体”に連結」


 聖剣セレスティア・オリジンの根元から、細かな魔法回路が走っていき、俺の右腕に聖剣と同じ紋様が刻まれていく。


「宝具構造を連結。承認対象:骨の英雄」

 俺の身体と、聖剣が一体化していくような感覚。


「“英雄の器+世界に召喚された魂”——今はそれが、英雄様なんです」

『定義の改竄を検知。論理矛盾——』

 リリスの声が少しだけ歪む。


「最後は、私ですね」

 聖女が、真っ直ぐに天を見上げた。


「主よ。もしこれが、あなたの御心に反するというのなら——」

 祈りの言葉が、空へと吸いこまれていく。


「愚かな私たちに、正しき運命への導きを」

 聖女が聖具をぎゅっと握りしめる。


「私たちは彼を“英雄”と崇めたいのです!」

『——敬虔な信仰心を観測。大規模改変を保留』


 天頂に走る紋様が、収斂していく。

 防壁の光が、わずかに薄くなった。


「今よ、骨!」

「"自分勝手"だなんて、知ったことか。今この現実の英雄は——あんたでしょ!」

 ルシフェリアが叫ぶ。

(言われなくてもな、俺は俺なんだよ!)


 俺は、バラバラになりかけた骨を叩きつけるように元の位置へ戻した。


 右手の指骨が、柄を握りこむ。


「待ってろよ、二撃目だ」

 首の骨を鳴らしながら、聖剣セレスティア・オリジンをもう一度振りかぶる。


「“世界のため”じゃなくて、俺たちのために、こいつを振るってやるってんだよ!」


 聖剣セレスティア・オリジンの光が、真っ二つに切り裂いた。


 天界の防壁を、真正面から。

読んでいただき、ありがとうございます!

定期更新してますので、よろしくお願いします!


ブクマ登録していただけると、感謝感激雨あられです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ