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10-1 聖剣の復活

 聖剣セレスティア・オリジンの復活が完了した——まさに、その瞬間だった。


 空が、轟音と共に裂けていく。


 灰色の雲の間に、漆黒の亀裂が走る。

 そこから、闇と光が同時に溢れ出した。


「来たわよ! 防御結界展開!」

 ルシフェリアが、両翼を広げる。


「す、凄い魔力です。でも全力を尽くします」

 リリスが大規模に展開した陣の上で、魔術の詠唱を始めている。

(うわ、嫌な圧だな……)


 亀裂の縁で、黒と金の光が、渦を巻いていく。境界空間そのものが、全て破壊されていくような感覚。


「“都合の良い悪役”様——満を持して登場ってわけね」

 亀裂の中から、ゆっくりと、影が降りてくる。

 巨大な両翼。半分だけ残った白い羽と、黒く変質した羽が、一定のリズムで交差していく。


 脈を守るように、装着されている歪な金輪たち——全てが歪み、捻じ曲げられたように。


 この距離からでも伝わる覇気は、神気単体でも、魔力単体でもなく、両者が混ざり合っている、悪魔特有の稀有な瘴気であった。


「ひどい様。あんな風になりたくないわ」

 ルシフェリアが小さく吐き捨てた。

 悪魔が、ゆっくりと降りてくる。

 金と紅の混ざった瞳が、俺たちを鋭く捉えた。


「聖剣の再起動を、確認した。物語は、最終局面に移行する——だが」

 悪魔の視線が、俺に突き刺さる。


「その聖剣を握るのは、“正しき英雄”であるはずだ。“異世界の魂”が承認されるなど、物語への叛逆」

「貴様らが、“世界の敵”だ」

(あー、はいはい。知ってる知ってる)


「そりゃどうも。魔王の敵の英雄です」

 俺は聖剣セレスティア・オリジンを軽く持ち上げる。


「ラスボスにそう言ってもらえると、なんか主人公っぽくなって助かるわ——俺は今からお前をぶっ刺すから、とりあえず覚悟しとけ」

 悪魔の表情が、わずかに動いた。


「英雄譚に依存したシステムの方が、よっぽど“悪”ですよ。聖剣セレスティア・オリジンの維持費、対立による被害、価値の変動——全部、現場に皺寄せですからね?」

 リサが、横から口を挟んだ。


「この物語が何だか知らねぇけどよ」

 俺は、一歩、前に出た。


 聖剣セレスティア・オリジンを握り直してから、悪魔に向けて構える。


「勝手に人の彼女連れてって、勝手に魔王とか言い始めて、勝手に“正しい物語”とか作ってんじゃねぇよ」


「英雄と魔王が敵対しようが、イチャつこうが、バカップルになろうが、どう終わるか決めるのは——」

 骨の奥から、声を絞り出す。


「世界の方じゃなくて、俺たちの方だ」

 俺は人形のようになった魔王の“器”の姿を思い出してから、聖剣の剣身へと祈りを捧げた。


「——見せてやるよ。こいつの力を」

 聖剣セレスティア・オリジンが、輝きを増すと、強烈な光を放つ。


「骨の英雄様が、お前のことをぶっ刺してやる」

 周囲では、黒と白の魔法陣が、いくつも展開されていく。ルシフェリアの境界陣も、リリスの魔法陣も、聖女の祈りも、全てが一様に起動した。

(見ててくれよ、レイナ。それと約束守れなくて、マジでごめん)


 俺はそう心の中で呟きながら、聖剣を、真正面から振りかぶった。

読んでいただき、ありがとうございます!

定期更新してますので、よろしくお願いします!


ブクマ登録していただけると、感謝感激雨あられです!

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