1-5 今後の方針
夜、王都から少し離れた宿屋にて。
俺は棺桶でゴロゴロしながら、三人の女子に囲まれていた。
「英雄様、明日からは真剣に魔王の討伐を。決戦の通告もありましたし」
「あの文面で決戦は無理があるだろ。なんか違う意図がありそうだったけどな」
(対立しようとは思ってなさそうだったが。どうしてなんだろうか)
「今夜も、お清めしますか?」
「絶対やらん。二度とやらん」
銀髪の聖女。貞淑が売りだが、なんかエロかった。
「いえ、まず経済を立て直さないと」
リサ。堅物っぽいが、ちょっとあどけない。商会代表の娘でもあるらしい。
「どっちも面倒! 適当に旅行しよう!」
姫。破壊女王。
どこからともなく謎の大砲が出てくる。
「棺桶で引きこもってるわ。皆で適当に進めといて」
俺。面倒くさがりの死体。
ちょっとだけ、筋とお肉が残ってる。
(この棺桶、意外と休み心地がいいんだよな)
「なんで、なんで英雄らしくしてくれないの……」
聖女がちょっと涙目になっていた。
「お願いですっ! 私の人生を懸けた英魂再臨なんです! 少しでも、少しでも頑張って……」
そして、ぽつりと。
「私……孤児だったんです」
「でも英雄伝説が、私に生きる意味をくれた」
「だから……」
(すまんな。生きる意味を与えた英雄が死んでいて)
「英雄計画に賭けたんですよっ! こんなチャンスないと思って!」
(国家レベルでの詐欺だな、こりゃあ)
リサも聖女に続いた。
「このままでは商会も投資が回収できません。いえ、そうじゃなくて……なぜか貴方を見ていると、ちょっとお金で買えない価値を感じてしまって……」
リサが何かに悶々としているのか、くねくねしていた。
(危ない趣味持ってるぞ、こいつ)
しかし姫だけは相変わらずだった。
「まぁいいじゃん! 面倒なことは明日考えよう!」
「どかーんと、今日を破壊しちゃう?」
(スケールデカいな、おい)
「さっさと休もうぜ。どうせ明日は来るんだから」
俺の結論。全部面倒くさい。
「後で考えようぜ。今はいいよ」
「じゃあおやすみ。もう二度と起こすなよ」
俺は心でため息をついて、棺桶の蓋を閉じる。
「あっ、英雄様!」
聖女の不満そうな顔が見えたが、気にしない。
「死んでからもこき使われるんだな、英雄って」
悲しい哉。死んでも休めない。
「やっぱ棺桶落ち着くな。蓋の裏の素材がいい」
ふと、指を見る。
(こういうのは引き継いでないんだ)
現世でつけていたあいつとペアの指輪は、もう無い。でも、指の骨にうっすらと何かの跡が残っている。
(指輪、どこ行ったんだろ)
(そして、あの手紙の『裏切り』って……)




