8-2 英雄御一行様
怪しい一団が、王都の大通りを歩いていく。
聖女は公式のローブ。
リサは商会正式制服。
リリスは“辺境統治者としての正装”。
ルシフェリアは白と黒の翼。
姫は、王国のピンクのドレス。
(こいつら華やかだよな。全員女子だが、俺は骨)
周囲の人たちも、異様な組み合わせに気づいてざわつき始める。
「あれ、姫様じゃ」
「聖女様もご一緒だぞ」
「なんで商会代表まで……?」
「棺桶の中身はなんだ?」
(もちろん英雄ですけど)
「魔王軍の連中もいるぞ……」
ルシフェリアがうるさいわよ、と声の主を睨みつけていた。
「多分、あの棺桶が英雄様じゃないか!?」
「うわ、なんか臭い!」
「最後のは何だよ」
(失礼だろ、お前)
◇
「心配ありませんっ! “聖遺物の緊急点検”として、勝手に書類に捺印して、教会本部に提出してあります」
(やっちゃ駄目です。良い子は真似しないでね)
聖女が胸を張っていた。
「商会にも、“蒐集品の再査定”の指示が出されてます」
しばらく歩くと、教会と商会の管理棟に着いた。
巨大な白い宗教建築と、その隣にくっついた無骨な石造りの建物。
「まずはあいさつですっ!」
(殊勝だな。良いことだ)
守衛のところまで、聖女が棺桶を引きずっていくと、中から職員が慌てて飛び出してきた。
「聖女様!? 王女殿下!? 商会代表まで!?」
「ま、魔王軍の幹部っ!?」
ルシフェリアとリリスを見て、職員が過呼吸寸前になった。
「ご、ご用件は……!?」
「聖遺物の緊急点検です。教会には申請済みですが」
聖女がきっぱり言うと、職員の顔がひきつる。
「聖剣を含む、全聖遺物の状態確認を行います」
「しょ、少々お待ちください!!」
職員が慌ただしく奥へと走り去っていった。
◇
さっきの職員が戻ってくる。
責任者と思われる人物も一緒だった。
「これは皆様、お揃いで」
男が順に俺たちに目を向ける。
最後に、棺桶を見て、微妙な顔をした。
「英雄様だとは分かってますが、やはり……」
「鼻を抑えながら、嫌そうに言うな」
「英雄様、ここはお静かにっ……!」
聖女が慌てて小声で制した。
「聖遺物の緊急点検。その必要性は我々も理解しております」
責任者らしき男が、ゆっくりと頷いた。
「ただし、地下保管庫に入るには条件がございます。まず第一に——“聖女”の立ち会いは必須です。聖印に反応するのは、正式な神の代行者のみですので」
「はいっ! 頑張って立ち会います!」
(頑張るものなのか、それ)
「第二に、商会代表……リサ殿ですね。査定者として同行をお願いします」
「もちろんです。評価と帳簿は任せてください」
「第三。点検中に異常があれば、その場で必ず報告を。封印が乱れている場合は、王国の監査対象となります」
「了解しました」
聖女とリサが同時に頷く。
「なお……魔王軍の方々と、王女殿下、そしてその……棺桶は」
責任者の視線が、慎重な言葉と共に俺に向いた。
「棺桶じゃなくて英雄様ですっ!」
「どう考えても、聖剣の点検に立ち会う資格があります!」
(建前じゃなくて、あらゆる本音が漏れてるぞ!)
「は、はぁ……死体を保管庫に入れても良いのかな……」
責任者が困惑しながら続けていく。
「王女殿下は監督者として。魔王軍のお二人は、"諸事情"として同席の必要があると……」
「こちら、用意しておいた“緊急点検合意書”です。王国・商会・教会の英魂再臨時の契約に対して、魔王軍の臨時協力を加えた四者合意になっております」
リサが、すっと書類を差し出す。
(いつの間にそんなもん作ってたんだよ)
「確かに効力を持つ書式ですね」
責任者が、書類を一瞥してから、小さく息を吐いた。
「……分かりました。緊急措置として、全員の同行を認めます。ただし、地下保管庫内での勝手な接触は禁止です。聖女様・商会代表・王女様、魔王軍の方々以外は、聖遺物に触れてはなりません」
「聞いた? 骨」
「おう。俺だけ“勝手に触るな”ってことだろ。分かってるさ」
(触りたくても、骨じゃ滑って落としそうだしな)
「あのっ! 英雄様が触れないのはおかしいですっ!」
「そう言われましても……聖遺物保護の観点から、死体に直接触れさせるわけには……」
「死体じゃありませんっ! 聖躯ですっ!」
(久しぶりに聞いたな、それ)
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