表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/65

8-2 英雄御一行様

 怪しい一団が、王都の大通りを歩いていく。


 聖女は公式のローブ。

 リサは商会正式制服。

 リリスは“辺境統治者としての正装”。

 ルシフェリアは白と黒の翼。

 姫は、王国のピンクのドレス。

(こいつら華やかだよな。全員女子だが、俺は骨)


 周囲の人たちも、異様な組み合わせに気づいてざわつき始める。

「あれ、姫様じゃ」

「聖女様もご一緒だぞ」

「なんで商会代表まで……?」

「棺桶の中身はなんだ?」

(もちろん英雄ですけど)


「魔王軍の連中もいるぞ……」

 ルシフェリアがうるさいわよ、と声の主を睨みつけていた。


「多分、あの棺桶が英雄様じゃないか!?」

「うわ、なんか臭い!」

「最後のは何だよ」

(失礼だろ、お前)

「心配ありませんっ! “聖遺物の緊急点検”として、勝手に書類に捺印して、教会本部に提出してあります」 

(やっちゃ駄目です。良い子は真似しないでね)


 聖女が胸を張っていた。

「商会にも、“蒐集品の再査定”の指示が出されてます」

 しばらく歩くと、教会と商会の管理棟に着いた。

 巨大な白い宗教建築と、その隣にくっついた無骨な石造りの建物。


「まずはあいさつですっ!」

(殊勝だな。良いことだ)

 守衛のところまで、聖女が棺桶を引きずっていくと、中から職員が慌てて飛び出してきた。


「聖女様!? 王女殿下!? 商会代表まで!?」

「ま、魔王軍の幹部っ!?」

 ルシフェリアとリリスを見て、職員が過呼吸寸前になった。


「ご、ご用件は……!?」

「聖遺物の緊急点検です。教会には申請済みですが」

 聖女がきっぱり言うと、職員の顔がひきつる。

「聖剣を含む、全聖遺物の状態確認を行います」

「しょ、少々お待ちください!!」

 職員が慌ただしく奥へと走り去っていった。

 さっきの職員が戻ってくる。

 責任者と思われる人物も一緒だった。


「これは皆様、お揃いで」

 男が順に俺たちに目を向ける。

 最後に、棺桶を見て、微妙な顔をした。


「英雄様だとは分かってますが、やはり……」

「鼻を抑えながら、嫌そうに言うな」

「英雄様、ここはお静かにっ……!」

 聖女が慌てて小声で制した。


「聖遺物の緊急点検。その必要性は我々も理解しております」

 責任者らしき男が、ゆっくりと頷いた。


「ただし、地下保管庫に入るには条件がございます。まず第一に——“聖女”の立ち会いは必須です。聖印に反応するのは、正式な神の代行者のみですので」

「はいっ! 頑張って立ち会います!」

(頑張るものなのか、それ)


「第二に、商会代表……リサ殿ですね。査定者として同行をお願いします」

「もちろんです。評価と帳簿は任せてください」


「第三。点検中に異常があれば、その場で必ず報告を。封印が乱れている場合は、王国の監査対象となります」

「了解しました」

 聖女とリサが同時に頷く。


「なお……魔王軍の方々と、王女殿下、そしてその……棺桶は」

 責任者の視線が、慎重な言葉と共に俺に向いた。

「棺桶じゃなくて英雄様ですっ!」

「どう考えても、聖剣の点検に立ち会う資格があります!」

(建前じゃなくて、あらゆる本音が漏れてるぞ!)


「は、はぁ……死体を保管庫に入れても良いのかな……」

 責任者が困惑しながら続けていく。


「王女殿下は監督者として。魔王軍のお二人は、"諸事情"として同席の必要があると……」

「こちら、用意しておいた“緊急点検合意書”です。王国・商会・教会の英魂再臨時の契約に対して、魔王軍の臨時協力を加えた四者合意になっております」

 リサが、すっと書類を差し出す。

(いつの間にそんなもん作ってたんだよ)


「確かに効力を持つ書式ですね」

 責任者が、書類を一瞥してから、小さく息を吐いた。

「……分かりました。緊急措置として、全員の同行を認めます。ただし、地下保管庫内での勝手な接触は禁止です。聖女様・商会代表・王女様、魔王軍の方々以外は、聖遺物に触れてはなりません」


「聞いた? 骨」

「おう。俺だけ“勝手に触るな”ってことだろ。分かってるさ」

(触りたくても、骨じゃ滑って落としそうだしな)


「あのっ! 英雄様が触れないのはおかしいですっ!」

「そう言われましても……聖遺物保護の観点から、死体に直接触れさせるわけには……」

「死体じゃありませんっ! 聖躯ですっ!」

(久しぶりに聞いたな、それ)

読んでいただき、ありがとうございます!

夜に定期更新してますので、よろしくお願いします!


ブクマ登録、評価やレビューは大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ