7-8 聖剣の担い手
「一応、忠告しておく」
ルシフェリアが発言する。
「“聖剣を媒介にした先代英雄との接触”は、ほぼ確実に、天界に感知されるわ」
「そうすると、天界側から“物語”への圧力が強くなるし、悪魔も本格的に動き始めるでしょう」
いつになく真剣なまなざしで、ルシフェリアが円卓全体を見ていた。
「つまり、儀式の開始が“ラストシーン”への導入になるわけだな」
「物語的には分かりやすいわね」
ルシフェリアが自嘲気味に呟いた。
(“旧聖剣の鍵を取りに行くパート”がクライマックス前編で、“悪魔との最終決戦”がクライマックス後編ってわけだ)
◇
「一つ、言っておくべきことがあります」
リリスが、言いにくそうに続ける。
「聖剣を先代英雄の魂との媒介にすると、“今の英雄様”と“先代英雄”が、同時に物語に存在することになります」
「世界は、“どちらが正統か”を判断しようとするかもしれません」
「最悪の場合——」
リリスが、射抜くようなまなざしで俺を見た。
「世界が、“あなたの魂”を“道具”として扱う可能性があります——先代英雄を“復活させるための贄”」
「異世界魂であるあなたのことを、全ての世界から“抹消”しようとするかもしれません」
円卓の空気が、少し重くなる。
リリスが、ギュッと両手を握りしめた。
「それでもやるしかないだろ。骨になっちまったし、レイナだって半分どっかにいっちまったし」
「俺はそんなん全然怖くないぜ。骨になると、執着なんてほとんど無くなっちまうんだから」
俺は迷わずに言った。
「ここは行くしかねぇだろ。クソ面倒だけどな」
あっさりと答えた自分に、少し驚いた。
「ここまで来て、“ビビったからやめる”なんて言ったら、多分、一生(?)後悔する」
「それに、だ——」
俺の上顎骨と下顎骨がゴキっと鳴る。
「せっかくだから、“本物の英雄”にも挨拶しときてぇし。お前の身体、だいぶ腐ってるぞ、って」
「気持ち悪っ。これだから骨は嫌いなのよ」
ルシフェリアが呆れたように呟く。
聖女は、「英雄様ぁ……」と半泣きになっている。
「では、決まりですね」
リリスだけが、真剣な顔で、でもどこか安心したように頷いた。
◇
ここまでで骨太な方針が固まった。
・旧聖剣を、王都の共同保管庫から回収する。
・リリスの術で、“先代英雄の魂”と接触する儀式を行う。
・物語の鍵として、聖剣を“再起動”させる。
・その鍵を使い、悪魔戦——この物語のクライマックス。
そのどこかで、きっと世界は、このお話を消しにかかってくる。
でも俺たちは、もう先に決めてしまった。
——この一方的な“物語の結末”に口を出しに行く。
(だんだん、本当にラストバトル前って感じになってきたな。現世では、話し合いから逃げて死んだってのに、異世界じゃ、最後まで話し合いに行くことになるとはな……)
軸椎を鳴らすように、骨の英雄は笑った。
「よし、王都に進行だ。魔王城から王都の地下へ、“英雄と愉快な仲間たちによるラストツアー”だぜ!」
「超迷惑なツアーですねっ……!」
聖女が嬉しそうにツッコミを入れる。
でも、誰も否定はしなかった。




