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7-8 聖剣の担い手

「一応、忠告しておく」

 ルシフェリアが発言する。


「“聖剣を媒介にした先代英雄との接触”は、ほぼ確実に、天界に感知されるわ」

「そうすると、天界側から“物語”への圧力が強くなるし、悪魔も本格的に動き始めるでしょう」

 いつになく真剣なまなざしで、ルシフェリアが円卓全体を見ていた。


「つまり、儀式の開始が“ラストシーン”への導入になるわけだな」

「物語的には分かりやすいわね」

 ルシフェリアが自嘲気味に呟いた。

(“旧聖剣の鍵を取りに行くパート”がクライマックス前編で、“悪魔との最終決戦”がクライマックス後編ってわけだ)

「一つ、言っておくべきことがあります」

 リリスが、言いにくそうに続ける。


「聖剣を先代英雄の魂との媒介にすると、“今の英雄様”と“先代英雄”が、同時に物語に存在することになります」

「世界は、“どちらが正統か”を判断しようとするかもしれません」


「最悪の場合——」

 リリスが、射抜くようなまなざしで俺を見た。


「世界が、“あなたの魂”を“道具”として扱う可能性があります——先代英雄を“復活させるための贄”」

「異世界魂であるあなたのことを、全ての世界から“抹消”しようとするかもしれません」

 円卓の空気が、少し重くなる。

 リリスが、ギュッと両手を握りしめた。


「それでもやるしかないだろ。骨になっちまったし、レイナだって半分どっかにいっちまったし」

「俺はそんなん全然怖くないぜ。骨になると、執着なんてほとんど無くなっちまうんだから」

 俺は迷わずに言った。


「ここは行くしかねぇだろ。クソ面倒だけどな」

 あっさりと答えた自分に、少し驚いた。

「ここまで来て、“ビビったからやめる”なんて言ったら、多分、一生(?)後悔する」


「それに、だ——」

 俺の上顎骨と下顎骨がゴキっと鳴る。

「せっかくだから、“本物の英雄”にも挨拶しときてぇし。お前の身体、だいぶ腐ってるぞ、って」


「気持ち悪っ。これだから骨は嫌いなのよ」

 ルシフェリアが呆れたように呟く。

 聖女は、「英雄様ぁ……」と半泣きになっている。


「では、決まりですね」

 リリスだけが、真剣な顔で、でもどこか安心したように頷いた。

 ここまでで骨太な方針が固まった。


 ・旧聖剣を、王都の共同保管庫から回収する。

 ・リリスの術で、“先代英雄の魂”と接触する儀式を行う。

 ・物語の鍵として、聖剣を“再起動”させる。

 ・その鍵を使い、悪魔戦——この物語のクライマックス。


 そのどこかで、きっと世界は、このお話を消しにかかってくる。

 でも俺たちは、もう先に決めてしまった。


 ——この一方的な“物語の結末”に口を出しに行く。

(だんだん、本当にラストバトル前って感じになってきたな。現世では、話し合いから逃げて死んだってのに、異世界じゃ、最後まで話し合いに行くことになるとはな……)


 軸椎を鳴らすように、骨の英雄は笑った。

「よし、王都に進行だ。魔王城から王都の地下へ、“英雄と愉快な仲間たちによるラストツアー”だぜ!」

「超迷惑なツアーですねっ……!」

 聖女が嬉しそうにツッコミを入れる。


 でも、誰も否定はしなかった。

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