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7-4 正しさと後悔

「私は、魔王様の“妹”として作られたんじゃなかった。天使の器として用意されて、そこに、“分割した魂”が収められて——」

「“魔王の理性”として、妹という役割だけが与えられていた」

 リリスが呆然としながら呟いていく。

「私の正しさはお姉様のためじゃなくて、物語の“正しさ”として使われていた」

 ルシフェリアが静かに頷いた。

「そうよ。自覚がないままにね」

「だからあなたは、ずっと“正しさ”に寄りかかるしかなかった——そうしないと、自分の存在理由を保てなかったから」

(現世でのレイナと、本当に同じだな)


「…………」

 リリスは、長い間、何も言わなかった。

 ただ、俯いたまま、姉の——魔王の手を握りしめていた。

「……英雄様。私の存在自体が、間違いという"正しさ"でした」

「そんなことはないだろ。間違いとは言わないあたりが、レイナとほんとそっくりだな」

 リリスが苦笑いしながら続ける。

「昔の話、ちょっと聞いてみたいですね」

 俺は無言で頷いた。

「皆から、『天使』って言われてたときの、空気読む顔も、二人きりになったときの、『世界よりあんた』って言うバカみたいな顔もさ——両方とも、一緒だったんだ」

「それをこの世界が、“勝手に分けちまった”ってだけだ」

「……ずるいですね」

「何が」

 リリスが俺をまっすぐと見つめ直した。

「英雄様は、私たちより先に、ちゃんと“私”を知っていた」

「世界に割られる前の私たちという——一人ぼっちだった、私のことを」

 それは、あの時のレイナの笑顔にしか見えなかった。

 ——初めて人と心が通った時に見せるような顔。

「私にはその時の記憶がありません。お姉様も細かいことは気にしてなさそうです」

(それは喜んで良いのか?)

「私たちは、“元の私”を知らないまま、与えられた役割だけを演じていた」

「正しさに生きる私と、好きなものを守ろうとしたお姉様——どちらも、本当は“一人の私”でしかなかったというのに」

 リリスはただ無邪気な笑顔で、俺にそう呟いた。

「でもよ——」

 肋骨あたりの空間が、ぎゅっと締め付けられる。言い淀みそうになるのを、無理やり続けていく。


「元は同じなんだから、一つに戻せば解決、なんて話にもならねぇだろ。レイナがどれだけ世界に割られちまっていようが、今のお前は“魔王”と“リリス”でさ……」

「——どっちが本当に正しかった、とか、そういうことじゃ無いと思うんだ」

 沈黙の後、リリスがそっと立ち上がる。

 魔王の枕元に回りこむと、頬をゆっくりと撫でた。

「今なら少しだけ分かります。お姉様の守ってきた、好きという正しさを——」

「そんな正しくない正しさの方が、時には大事なこともあるんだって」

「程よくだぞ、程よく。極端なのは良くない」

 リリスの隣に、俺も立つ。

 二人のレイナの顔を見比べながら、見た目以上によく似ているなと静かに思っていた。


「私、決めました——自分が“半分”だという前提ごと、物語にぶつけてみます」

「そして、必ずお姉様を取り戻します」

 リリスが何かを決意したように、眠る魔王に語りかけていた。


「正しさのためなんかじゃなくて、ただの“私のわがまま”として」

「やっとスタートラインって感じだな」

 俺は懐かしさと同時に、懐かしい面倒くささを愛おしく感じていた。

読んでくださり、誠にありがとうございます!

20〜23時頃に定期更新してますので、よろしくお願いします!


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