表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/65

7-2 信じていた正しさ

「リリス。それ、前から知ってたのか?」

 俺が聞くと、リリスは小さく首を振った。


「英魂再臨の儀が危険で、魔王軍全体に影響するほどの力を持っていることは、リリスとして目覚めた時から、ぼんやりと知っていました。ですが——」

「“約束”という形で、ここまで具体的に、世界のあり方が“設計”されているとは思っていませんでした」

 リリスが羊皮紙を物憂げに眺めてから、小さく俯いた。

「私が信じていた“正しさ”は、世界の正しさなんかじゃなかった——むしろ私たちの自己崩壊を狙った、物語の筋書きでしかなかった」

 リリスの声が震えている。それでも言葉を止めなかった。


「英雄と魔王は必ず対立し、どちらかが終わりを迎えること。勝利の栄光は信用の基盤としてどちらかが運用すべきこと」

「対立の過程が循環の営みであり、停滞とは、死よりも重い罪であること」

「全部、“世界のために正しい”とされてきたことは、ただの——」

 リリスの言葉を遮るように。

「——あっち側の都合だった、と?」


 ルシフェリアが、いつの間にか壁際にもたれていた。

「少し前までの私なら、きっとこう思っていたはずです」

「嫌でも、誰かが正しさを守らなくてはならない。正しさを守れなくても、正しさに近づこうとしなければいけない」

「だから、英魂再臨の儀を正しく行い、英雄の魂を元に戻して、お姉様のような“魔王”さえも、きっといつかは"正しさ"に戻るべきなんだろうと」

 リリスが、首を横に振ってから、はっきりと顔を上げた。


「でも今は、そう思えない——」

「英雄様が“嫌だ”と言ったこと。お姉様が“世界より私の好きなものを守る”と言ったこと」

「それを切り捨ててしまうために、私は正しさを守ろうとしたわけじゃない……はずです」

「はず、って言うなよ」

 リリスが再び俯いてしまった。


「そこは、“じゃない”って言い切ろうぜ」

「正しいことのために、正しく間違えまくるのが人間ってもんだ」

(浮気した俺が言うかって話だけどな)


 リリスが、ぽかんと俺を見る。

 聖女の笑顔とは対照的に、ルシフェリアは小さく鼻で笑った。

「リリス。お前さ——」

 俺は、棺桶に腰をかける。

「今まで、“正しくいなきゃ”って、自分を縛ってきたんだろ——そうしないと、お前自身がここにいる意味を見失っちまうから」

「どうしてそれが分かるかって。俺はそんなレイナに惚れてたからだよ」

「全部のことに、正しく向き合おうって誠実なあいつの姿にな」

 リリスが顔を上げながら、俺の眼窩を見つめていた。


「蓋を開けてみれば、とんでもなく不安症で、正しさにすら依存しちまうクソ重い女だったけど」

 棺桶の蓋を開けながら、俺はリリスに戯けてみせた。なぜか聖女が激しく頷きながら、微笑んでいたが。

(選ばなきゃならねぇんだよな、どうせ)


 物語の正しさのために、退場させられるのか。

 魔王を取り戻すために、世界そのものに喧嘩を売りにいくのか。

 それとも——別の選択肢を探すのか。

「世界の正しさが“物語”だってなら、そんなもんは俺たちの“反骨心“で書きかえてやろうってんだよ」


「上手いことでも言ったつもり? そういうのってほんとクソ」

 壁にもたれていたルシフェリアが、視線を軽く俺に向けた後、冷たく微笑んだ。


「具体的にどうするのよ。理想論だけ語っても、現実のあなたはただの骨。悪魔には戦力では到底及ばないし」

「理想に溺れて行動すれば、それ相応の代償を支払うものだって、いい加減学んだ方がいいと思うけれど」

(確かにそうなんだが。相変わらず厳しいな、ルシフェリアは)

読んでくださり、誠にありがとうございます!

20時から23時頃に定期更新してますので、よろしくお願いします!


ブクマ登録、評価やレビューは大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ