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1-4 骨、街に出る

 城下町に出た途端、騒ぎが起きた。


「おい、英雄様だ!」

「でも、なんか臭くない?」

「うわっ、死んでる! 英雄様が死んでるぞ!」

 民衆がパニックになると、セレス札が黒く変色していった。

「これは大変ですね。教会の威厳にも関わる事態です」

 聖女が青ざめている。

「死体蘇らせてる時点で、威厳もクソもないだろ」

「死体って大きな声で言わないでください! 聖躯です!だから、もうそういう態度が!」

 聖女がぷんぷんしていた。


「セレス札暴落! 1オーリス200枚まで下落中!」

 小競り合いを裂くように、慌てた様子の為替商の叫び声。


「あはは! 面白い! もっと下がれ〜!」

「姫様! 国の通貨ですよ!」

 騒ぎを面白がる姫を、執事が冷や汗をかきながら嗜めていた。

「でもなんか面白いじゃない?」

「安くなったら、いっぱい壊して作れるし、借金も安くなるでしょ?」

「安くなったのではありません! より貧しくなるだけです!」

「そうなの〜? じゃあとりあえずぶっ壊すかぁ〜」

(どんな基準だよ)

「もう嫌だ。どっか静かなところに行きたい」

 騒然としている群衆から逃げて、路地裏へ。

 すると、怪しげな看板を見つけた。


『灰商会カジノ 〜どんな種族も歓迎〜』


「お、いいね。棺桶で寝ながらギャンブルだ」

 地下に降りると、薄暗い空間。

 なぜか姫も付いてきていた。

「わー、怪しい! 楽しそう!」

「姫様は来ちゃダメだろ」

「いいの! つまらない話から逃げてきたから!」

 ディーラーが俺を見て、固まる。


「英雄様!? いや、でも棺桶……」

「なんか臭っ! 腐った臭いが!」

「どんな種族でも歓迎だろ」

「は、はい……どうぞ」

 ポーカーテーブルに棺桶を横付けして、蓋からひょっこりと手だけ出して楽しむ。

「こういうところに、ずっと安置しといてくれりゃな」

(骨だけの手でカードめくるの、地味に難しい)

「あちゃー。執着無いから、いけるかと思ったんだが」

 たった30分。無念の撤退。

「負けた負けた。どうせ死んでるわけだし、失敗なんてあって無いようなもんだよな」

(元々マイナス1000万だし、パーティの全財産なんて誤差みたいなもんだよな)


 その頃、地上では大混乱が起きていた。


「速報! 英雄がギャンブルで敗北!」

「セレス札、1オーリス500枚まで暴落!」

「もう紙幣なんて信じないわ!」

 地上に戻ると、怒った民衆に囲まれる。

(俺の行動が、貨幣の価値を決めているのか?)

「てめぇのせいで!」

「俺たちの貯金が紙切れに!」

 飛んでくる石や、棺桶が蹴飛ばされる中で聖女が必死に庇う。

「皆様っ! 英雄様は疲れているだけです!」

「私が、私が責任を持って更生させますから!」

 おい、更生って。

 まさか、あの骨に効く聖水じゃ……?

「でも、あまりお金は使えません……教会にも英魂再臨の負債があります」

(負債ばっかりだな。どいつもこいつも)

 聖女が、早くも諦めモードに入っていた。

 一方、姫の方は大笑い。

「すごーい! 英雄様が来ただけで経済崩壊!」

「ねぇ、次は何壊す?」

 壊さねぇよ。本当は勝つつもりだったんだからな。

 騒動の中、黒い封筒が飛んでくる。

「英雄様宛ですね。捨てた方が良いのでは」

「捨てねぇわ。一応、読むよ」

 聖職者とは思えない聖女の発言にツッコミつつ中身を確認していく。

(精霊郵便らしい。詳しくは分からんが)


 封筒開けると、文面には優雅な筆跡。


 内容だけ把握して、さっさと捨てようと思ったのだが、そうもいかなかった。


『親愛なる英雄様へ

 死んでも逃げられないなんて、可哀想ね。

 でも、安心なさい。

 私が必ず、永遠に休ませてあげるから。

 ——世界で最も深い愛をこめて、魔王より』

(魔王が勇者を愛してる?)

 手紙を読み終えた瞬間、俺の額に痛みが走る。


「うぐっ!」


 突如、頭蓋骨が熱を持つ。

「英雄様の頭蓋骨に謎の刻印が現れました!」

 聖女が驚きながら。

「魔王の呪いでしょうか。いえ、これはまさか……愛のしるし!?」

「どんな愛だよ。魔王が英雄にラブレターなんて」

「分かりません。いきなり宣戦布告でしょうか」

「展開早すぎだろ!」

 なんだか軽い紙が異常に重く感じられた。

 続いて、リサが分析していく。

「数値は読めません……感情値は測定不能です。ここには貨幣で測れない価値が……」

 何やらくねくねとしているリサの隣で、姫だけは呑気だった。

「へぇ〜、英雄様ってモテるんだ!」

「相手、魔王だぞ!?」

(ある意味じゃ、モテよりも運命的な存在だが)

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